(……話さないと駄目か?)
 (エル、話せることで構わない。もしつらいことがあるなら、一人で抱え込まないで)
 (うん、シルフィアさんの言う通りだよ。俺にできることがあるかは分からない。でも、話を聞くだけならできる)

 そう言いログスは、目の前のエルをみる。

 (アタシも同じ気持ちだよ。昨日、エルが泣いた時に思ったの。今まで一人で、頑張って来たんだろうなって。だから、ここまで強くなれたんだよね)
 (ララファ、そんなに美化できるような人間じゃない。過去に、俺は人を殺している。と云っても、直接的にじゃないけどな。でも、結果的に俺のせいで……)
 (ねぇ、エル。もしかしてそれって、エルムスのこと?)

 そうシルフィアに聞かれエルは俯いた。

 (……ああ、そうだ。父さんは……あの時、俺が一人で洞窟に行かなければ死ななかった)
 (エル……洞窟で何があったの? あのエルムスが、そう簡単に死ぬなんてあり得ない)

 シルフィアにそう問われエルは、その時のことをつらそうな表情になりながら思い出している。

 (あの時……俺が八歳の頃、一人で洞窟に行った。いつも父さんに、愚図だとか……もっと強くなれとか言われていたんだ。だから自分一人でもできる……そう思って洞窟に、だけど……)

 そう言いエルは、更に苦痛の表情が増してきた。

 (……洞窟にみたこともない怪物と知らない男たちがいた。俺はソイツらに捕まって、あとから来た父さんが助けてくれたけど……。
 その時は逃げられたんだ。でも……その時に負った傷口に、毒が入ったらしくて……それが原因で父さんは……)
 (変ね? 毒ぐらいで、あのエルムスが死ぬとは思えないわ)
 (シルフィア、それって……どういう事だ?)

 そうエルに聞かれシルフィアは思考を巡らせる。

 (ねぇ、グリモエステルス。ログスとララファに、エルムスが所持してたオーパーツのことを話しても大丈夫?)
 ”ああ、問題ないよ”

 その会話のやり取りを聞いていたログスとララファは驚いた。

 (もしかして、エルのお父さんもオーパーツを所持してたの?)
 (ララファ、そうね。それに私は、エルと出逢うまでエルムスの眷属だった。ううん、魔剣バスターへルギアの眷属って言った方がいいわね)
 (そうなのか……それで、シルフィアも強かったんだな)

 そう言いログスは、真剣な表情でシルフィアをみる。

 (そうなるわね。それでなんだけど……エルムスは、バスターへルギアの所有者だった。だから傷口に毒が入ったぐらいじゃ死ぬはずないのよ)
 (シルフィア……オーパーツ所持者だから死なない訳じゃないよな?)
 (そうね……でも、エルムスはオーパーツの力で毒耐性を強化していたから)

 それを聞きエルは、どういう事だと思考を巡らせた。

 ”エル……他に死ぬ原因があったのではないのか?”
 (思い出せない。グリモエステルス、俺の記憶をみることができるなら……分かってるんじゃないのか?)
 ”ああ……勿論だ。だが、儂が話してもいいものか……少し考えさせてくれ”

 そう言いグリモエステルスは考え始める。
 それをエル達は待っていたのだった。