エルとシルフィアは出口と思われる扉の前にいた。

 「ここから微かにだけど、風が吹き込んでる」
 「エル。じゃあ、この扉を開ければ!?」
 「出口だとは思う。ただ、どこに出るのかは分からない。それに、この扉の向こうが安全とは限らないし」

 そう言いエルは、扉の方へと視線を向ける。

 「そうだね……まだ安心はできない。エルの言う通り、この先に何があるのか見当がつかないしね」
 「うん、だからこの扉も調べてから開ける」

 それを聞きシルフィアは頷いた。
 エルはそれを確認すると、左手を扉に翳し唱える。

 《エステルス・トラップサーチ!!》

 そう言い放つと、翳した左手の前に魔法陣が現れた。その魔法陣から光が放たれ扉にあたる。すると扉が紫色に発光した。

 「クッ……やっぱり、か」
 「紫色に光ってるってことは、もしかして罠が仕掛けられてるってこと?」
 「ああ……この罠を解除しないとならない。それか、他の出口を探すかだ」

 エルとシルフィアは、どうしたらいいかと思考を巡らせる。

 「……ねぇ、罠を解析する魔法って覚えてないの?」
 「トラップ解除呪文か。どうだったかなぁ……」

 そう言いエルは考えた。

 (どうだろう? 多分、魔導書に書いてあるかもだけど。流石に、シルフィアの前で……開けないしなぁ)

 そう思考を巡らせるも何も浮かばず、どうしたらいいのか分からなくなる。

 「エル、何か隠してない?」
 「えっ!? えーと……どうだろうなぁ。ハハハ……」

 そう言いエルは苦笑した。

 「さっきのこともだけど……何を隠してるの? そんなに言えないことなのかな。でも、もしその隠してることの中に……解決策があるなら。ううん、言えないようなことなら……みなかったことにする」
 「シルフィア……ありがとう。だけど……」

 シルフィアにそう言ってもらえてエルは嬉しい。だけど、どうしても言えないため困る。

 (どうしよう……流石に、グリモエステルスのこと……言えないよなぁ。でも……)
 “何を悩んでいる?”
 (……。なんで聞くんだ? 分かってるから話しかけたんだよな)

 そう思いエルは不機嫌になった。

 “うむ、そうだな。まあ良い……本題から話すか。本来なら、儂の存在を教えてはならない”
 (ああ、だから悩んでるんだ。それで、何かいい案があるのか?)
 “ある……だが、彼女にその気がなければ駄目だ”

 それを聞くもエルは、グリモエステルスが何を言いたいのか分からない。

 (何が言いたい?)
 “それは、な――――……”

 グリモエステルスの出した案を聞いたエルは、それが可能ならこれからも隠さずにシルフィアと行動できると思った。だが……。

 (……それをするってことは、シルフィアを巻き込み縛ることになる)
 “勿論、そうなる。だから、彼女の意思次第なのだよ”
 (そうだな。でも……)

 そう考えエルは、シルフィアをみやる。
 シルフィアはエルが悩んでいるようにみえ心配になった。

 (エル、どうしたんだろう? 急に黙っちゃったけど。そんなに、知られちゃまずいことなのかな。でも……)

 そう思うもシルフィアは、聞くのが怖くなり話しかけられなくなる。
 その後しばらくの間、沈黙が続いたのだった。