エルはなるべくシルフィアから遠ざかるように、前方からくるものの方へと駆け出した。

 (魔導書(グリモエステルス)を使った方が早い。でも、まだ向かってくるものが何か分からないし。そうだな……一応、用心のため出しておくか)

 そう考えると走りながら大剣を鞘に収める。その後、左の手のひらを上向きにした。

 《いでよ 魔導書グリモエステルス!!》

 そう言い放つと、エルの左手に魔法陣が浮かび上がる。するとその魔法陣は発光し、スッと魔導書が現れた。すかさずその魔導書を持つ。

 「これでいい。あとは、前からくるヤツを倒すだけだ」

 ギュッと魔導書を握りしめ、エルは更に加速する。

 ドドドドドッと音が更に大きくなってきた。

 するとエルの目の前に、ドンッと巨大な竜と馬が合わさったような石像が落ちてくる。
 それに気づきエルは、咄嗟に後ろに跳んだ。

 「ゴーレムか? でも、普通のヤツじゃなさそうだな」

 そう言うと目の前のゴーレムを警戒しながら、魔導書を右手に持ち替える。その後、左手をゴーレムへと翳した。

 《エステルス・モンスターサーチ!!》

 そう唱えると翳した左手に魔法陣が現れる。それと同時に魔導書が発光して、パラパラと開いた。
 左手に現れた魔法陣から光がゴーレムへと放たれる。その光は、ゴーレムに当たり覆い包んだ。
 その間にもゴーレムは、エルへと突進してくる。エルはそれを避けながら、チラチラと魔導書をみていた。

 (なるほど……そうか。コイツは、この階のボス。それも、これは……厄介すぎる。そもそも……こんなの普通のヤツじゃ、勝てる訳ない)

 そう思い攻撃を避けながらゴーレムを見据える。

 そのゴーレムは、ドラゴホースドール。ゴーレムと云うよりも、遺跡石像系の魔物だ。
 動力となる核の魔法石が、石像の体内のどこかに埋め込まれている。

 ドラゴホースは、口から炎を吐いた。
 それをエルは、難なく避ける。

 (石像系か。ゴーレムより厄介だ。ゴーレムは憑依タイプと、呪術を動力とするものが居る。だが石像系は、呪術系の中でも……核を持っている。
 それが、いくつあるか。それだけじゃない、下手をすれば……魔法を吸収する核だと更に厄介だぞ。それに俺はこのタイプと戦うの初めてだしな。そもそも、本でしか知らない)

 そうエルが考えているとドラゴホースは、静止し魔法陣を展開し始めた。

 「ゆっくり考えている暇はないな」

 そう考えると魔導書を、ひとまずバッグに仕舞う。そして、背中の大剣を両手で持ち構える。

 (魔法攻撃じゃない方が、良さそうだよな)

 そう思いエルは大剣を構え直すと、ドラゴホースを睨み警戒した。