「ハァハァハァ……生きてる……良かった。ハァハァ……」
 「……エル、ハァハァ……そうだね。死ぬかと思った、わ」

 エルとシルフィアは、息を徐々に整える。
 二人は現在、隠し部屋の中にいた。辺りは真っ暗で、ほぼ何もみえない。エルとシルフィアは、岩壁に寄りかかり地面に座りっ込んでいる。
 段々息が落ち着いてくると二人は周囲を見渡した。

 「暗くて何もみえないな」
 「そうね。ここは、隠し部屋みたいだけど……魔物や魔獣って出ないのかな?」
 「そういえば……」

 そう言いエルは、周囲の気配を探る。

 (……油断していられなかった。ここだって、安全な訳じゃない)

 そう思いエルは、キッと表情を変え気持ちを入れ替えた。そして目を閉じて、更に気配を探ってみる。

 「……!? シルフィア、何かいる!」

 そう言いながらシルフィアを庇いながら立った。

 「えっ!? どこに……」

 シルフィアはそう言い、辺りを警戒しながら立ち上がる。

 「暗くて……みえない。だけど気配は、奥の方から感じられる。だが……この気配は一体だけ、それもかなり強いな」

 そう言いエルは地面に左耳をつけた。

 「……こっちに、ゆっくりと向かって来てる」
 「それって……まずいんじゃ」
 「ああ、恐らく……この階で一番強い魔獣か魔物だろうな」

 エルは自分たちの方にくるものを警戒し凝視する。

 (みえないだけに……確認できない。明かりを点ければいいんだろうが。多分……向かってくるヤツも、まだ俺たちのことに気づいてないはずだ。どうする? 逃げるか……。でも……逃げ道があるのか?)

 そう思いながらエルは、空気の流れを探った。

 「エル、どうするの? 私たちより強いんだったら逃げた方がいいと思うけど」
 「ああ、そうだな。でも……逃げ道があるとは限らない。それを今、探っている……」
 「そうなんだね。みつかりそう?」

 そう聞かれエルは首を横に振る。

 「空気の流れを探ってるけど……。向かってくるヤツの方角からしか……って、これは……」
 「どうしたの?」
 「微かにだけど、空気の流れが違う場所をみつけた」

 そう言いエルは、こっちに向かってくるものが居る方角と違う反対側を指差した。

 「そっちに……抜け道が?」
 「それは分からない。だけど、ここに居るよりもいいと思うんだ」
 「確かにそうだね。分かったわ……エルを信じる」

 それを聞きエルは、真剣な表情で頷く。

 「じゃ、行くぞ」

 エルはそう言いシルフィアに向け手を差し出す。
 それをみたシルフィアは、エルの手を取る。

 「ありがとう、エル」

 そう言われエルは、頬を微かに赤くして照れた。だがシルフィアには、その様子がみえていない。
 その後二人は、なるべく音を立てないように歩く。そして、迫ってくるものから遠ざかって行くのだった。