「エルが、エルムスさんの……。それで、エルムスさんとマルセさんは元気?」

 そう聞かれエルは暗い顔になり下を向く。

「……父さんは、八年前に死んだ。それと母さんは……」
「そうだったんだね。エルムスさんは既に、もしかしてマルセさんも?」
「母さんは……半年前、誰かに殺された。村のみんなも……」

 エルはその時のことを思い出し、憎しみの表情へ豹変していた。

「エル……そうかぁ……。それで、犯人は?」
「よくは分からない。だけど……」

 その時のことをエルは、シルフィアに詳しく話す。

「数名の冒険者、かぁ。なんとなく覚えているのが、顔に大きな傷のある男。……それだけじゃみつけようがないよね。会えば分かるの?」
「どうだろう……自信はないけど、分かると思う」
「そうかぁ。みつかるといいね。その時は、私にも声かけて。何か手伝えることがあるかもだし」

 そう言われエルは頷く。その表情は、いつのまにか穏やかになっていた。

「そういえばシルフィアは、なんで父さんと母さんのことを知ってるんだ?」
「あー、そのことね。えっと……あとで、ここじゃない所で話すわ」
「それって他のヤツに、聞かれちゃまずいってことか?」

 そう問われシルフィアは頷く。その後、キョロキョロ周囲を見渡した。

「うん、そうなるわね。断言はできないけど……エルの村が襲われた理由、それにアイツらの仕業かもしれないから。だからそれについては、あとで詳しく話すわ」
「分かりました。気になるけど、そうする」

 それを聞きシルフィアは、ニコッと笑う。
 シルフィアの笑顔をみてエルは顔を赤らめる。

「それにしても、ログスとララファ……遅いわね」
「そういえば、どうしたんだろう?」

 そう言いエルは、辺りを見回した。

「確かに変ねぇ。家に行ってみる?」
「んーここを離れて、行き違いになってもなぁ」
「恐らく二人と、行き違いにはならないと思うわ」

 エルは不思議に思う。なぜそう思うのかと。

「なんで分かるんだ? 他にも道はあるし、家からコッチにくるとは限らない」
「そうだね。だけど、あの二人は特定の道しか通らないのよ」
「どういう事だ?」

 そう聞かれシルフィアは、その理由を話し始める。

「あの二人ね。前にいたパーティーのメンバーの一人から、酷い扱いされてて。ソイツが通りそうな道は避けるのよ」
「なるほどな。でも、なんでそんなこと知ってるんだ?」
「私もそのパーティーに居たから……」

 そう言いシルフィアは俯いた。

「そうか……そのためか。シルフィアが二人の依頼を受けるって聞いて、なんで喜んだのかと思ったけど」
「そういう事! それでどうする、迎えに行く?」
「このまま、ここで待つよりも……その方がいいか。それにさっきの話を聞いて、心配になったしな」

 そう言うとエルは二人の家がある方を向き歩き出す。
 それをみたシルフィアは、エルのあとを追う。
 そして二人は話しながら、ログスとララファの家へと向かったのだった。