エルはカウンターに寄りかかりながら、色々と考えていた。すると緑髪の男性と紅梅色の髪の女性が、エルのそばに歩み寄ってくる。

「おい、お前……一人なのか?」

 その男性はエルにそう話しかけた。

「はい、そうですけど」
「よかったぁ。ねぇ、アタシ達のパーティーに入らない?」
「勧誘ですか。それなら、お断りします」

 それを聞き女性の方は、ガッカリする。
 だが男性の方は諦めきれない。

「一人より、人数いた方が良いと思わないか?」
「別に思いません。それに、あなた達と組んで……俺になんのメリットがあるんですか?」
「メリットか、それならあるだろう。パーティー限定の依頼が受けられる」

 そう言われエルは溜息をついた。

「ハァー、そんなことですか。それならば返事は変わらず、ノーです」
「待ってくれ!? 頼む! パーティーに最低でも、あと一人いないと依頼が受けられないんだ。それに俺は、槍と簡単な魔法しか使えない」
「アタシは、回復と補助系の魔法しかできないし。あはは……」

 それを聞きエルは不思議に思い二人を順にみる。

「二人がやろうとしてる依頼って、そんなに難しいのか?」
「ああ、三人以上のパーティー。それに、一人でもブルーストーンランクの者がいないと受けられない」
「なるほど……だけど、なんでその依頼を受けたいんだ?」

 そうエルが聞くと二人は悲しい表情になった。

「ログスとララファが受けたい依頼は、ダグル迷宮の地下第二階層の探索です」

 カウンターの後ろで声がしエルは振り返る。

 そう受付嬢は戻って来ていた。そして、エル達の話が終わるのを待っていたのである。

「ただの探索ですか?」
「いいえ普通の探索とは異なり、まだ未知とされている場所の調査になります」
「なるほど……そこは、かなり危険なんですか?」

 そう問いかけると受付嬢は難しい表情をした。

「危険と言えばそうなのですが。未知すぎて、当たりハズレがあるのです」
「そういう事か。ハズレを引けば、危険を伴う。それだと、並の冒険者では依頼を熟せない」
「ええ、以前になりますが……行方不明者が多数でました」

 そう言い受付嬢は、今にも泣き出しそうだ。

「それで……まだ地図にない場所は、上位クラスのパーティーで探索するって訳ですね」
「そうなります。それに、どんな仕掛けや魔物が居るのか分かりません。そういう訳で、パーティーにブルーストーン以上の者が一人も居ないとこの類の依頼は無理なのです」
「だろうな。だけど……どうしてこの二人は、そんな危険を冒してまでこの依頼を受けたいんだ?」

 そうエルが問うと、ログスとララファの二人は俯いた。

「それは……」

 そう言いログスは、重い口を開き理由を話し始める……。