柚花が出したお題・・・当然柚花はすぐに書いてしまう。

その字は『益荒男(ますらお)

意味は堂々とした漢。柚花は荒々しくも堂々とした漢の中の漢をイメージして文字の書き方を敢えて荒っぽく書いた。

「どうだっー!格好良く書けてるでしょっ?漢の荒々しさと力強さを意識してみたよ!」

柚花が1人で盛り上がっているところで千歌は更に困った。

何書こうか・・・いきなりお題を出されても格好いい言葉なんて全く思いつかない。

「さてと!この文字も部室内に貼っておこー!」

この学校の書道部では会心の作品が出来たら部室の壁に貼っていくのだが柚花は書くたびに壁にペタペタ貼っていく。

毎回書く字が会心の出来なのである。

ひとり楽しくキャッキャとしている柚花の隣で千歌はただ1人で悩んでいた。

千歌は自分でお題を考えるのも苦手だが、お題を出されてもテーマに沿った文字を考えるのも苦手だ。

指定された文字を書くのなら出来るのだが・・・。

友誼(ゆうぎ)

悩みに悩んでいる千歌を見て柚花はいい言葉だと思って声にした。

「えっ?」

思わず千歌は柚花の方を振り向く。そこでは柚花が壁にもたれかかって腕を組んでいた。

「友誼っていう言葉はね、友に対する情愛とか友情って意味らしいよ。あたしは千歌ちゃんにこの言葉を書いてもらいたいな♪」

この言葉に千歌は柚花の心を察した。

柚花は千歌に対して友情を感じているのだと。友として愛しているのだと。

(ゆず)ちゃん・・・。」

千歌は少し嬉しかった。親友だと思っていた柚花も千歌のことを親友と思っていてくれたことに。

「さぁ早く書こっか?早くしないとホームルーム始まっちゃうよ?」

柚花はスマホの時間を見るといつの間にか8時過ぎていた。