柚花とお兄さんは夜の闇に身を隠して指示役からの連絡を待つ。

恐らく連絡しなかったら向こうから連絡が来るはずだ。事が重要な事だから神経質になっているはずと柚花は推測する。

それにしても琵琶湖の周りは森が多くて身を隠す所が多くて助かる。

するとお兄さんのスマホにLINEから連絡が来る。

「ひぃっ!!」

その連絡を見るとお兄さんは凄く怯えた様な顔をする。

「ん?どうしたの?」

「指示役の岡留さんから連絡来た・・・怖い怖い。」

柚花がお兄さんのスマホを覗き見ると・・・


『どうでしょうか?仕事は終わりましたか?終わりましたら指定された公衆便所まで来てください。』


「なんだ、闇バイトでよくある感じの文章じゃん。特に怖い事書いてないのになんでビビってんの?」

お兄さんはブルブルと震えている。

「普通の文章に見えるじゃん?こんな文章書く人って真面目そうに感じるじゃん?営業の人みたいな。でも岡留さんめっちゃガタイ良いし雰囲気怖いんだよ・・・本職の人って感じで。なんか俺みたいな不良(ヤンキー)とは別の次元にいるガチもんのヤバイ人って感じなんだよ・・・。」

「分かった分かった。怖くないからね?落ち着いて。あと連絡は既読無視しといてね。」

柚花はお兄さんの頭を優しく撫でて落ち着かせる。

誰しもが本物のヤクザを見ると震え上がるだろうし、お兄さんもきっとそうなのであろう。

普通に生きていたら接するはずの無い者に闇バイトに手を出したせいで関わることになってしまった。

恐らくお兄さん以外の闇バイトに手を出した者も怖くて震えているのだろう。

すると再びお兄さんのスマホに連絡が届く。

『どうしました?連絡お願いします!』

そして無視すると更に連絡が届く。

『至急連絡をお願いします!』

『どうかされましたか?既読無視は社会人として礼儀がありませんよ!』

そして更に無視を続けると・・・

『今からそちらへ向かいます。』

この連絡を見た柚花は「よしっ!」と呟く。

「本当はこちらに来るかどうかなんて賭けだったんだよね。警戒心の強い人なら来ないパターンもあったんだけどね。」

「う、うん。」

この連絡を見たお兄さんは怖くて元気の無い顔をする。

「いや〜それにしても指示役の人、終始普通の文章だったね。気の短い人なら乱暴な文章書いたり直接連絡したりするんだけどね?」

「うん・・・」

柚花は目に見えて元気の無いお兄さんの緊張を解そうと思って話すのだが、お兄さんは全然話さなくなった。

無理も無い・・・本職のヤクザが来るのだから。