「一瞬で着いちゃったね♪」

「早すぎだろ!そんなに急ぐ必要なかっただろ。」

柚花達忍者はみんな驚異的な身体能力を持っているため、足が速く筋力も人並み以上にある。

その足の速さでものの5分で琵琶湖に到着した柚花はスマホで時間を見る。

「まだ12時30分だ!早く着すぎちゃった♪アハハ♪」

ヘラヘラ笑っている柚花だが事の重大さは分かっている。

いつもの常連のお兄さんがここで闇バイトとしてやって来ること。

その為、気付かれないように木に登って身を潜める。

琵琶湖と言っても琵琶湖は大きな湖だから、どこに現れるのか分からない。だから身を潜めながら怪しい者がいないか探しまわる。

「ところでメッセは闇バイトって知ってる?」

柚花はメッセンジャーがどれだけ闇バイトの知識があるのか気になって聞いてみた。

「馬鹿にすんな!俺はテレビも見たりスマホも弄ったり出来るんだぞ!」

「そりゃそうか。じゃあ、この琵琶湖が闇バイトの事件の場所になっているのも知っている?」

「いや、それは知らん。だけどこの湖は人を沈めるのにうってつけだからな。闇バイトで何も知らない馬鹿を雇って人を沈めるのはあってもおかしくないな!」

鳩のメッセンジャーは人と話すことが出来るだけあってテレビやスマホも観ることができる。それ故に現代の知識については豊富である。

「柚花、もしかしてここで誰か沈められるのか?それを阻止するために来たんだろ?」

「うん。お店の常連のお兄さんがね。毎日のように来てくれるんだけど仕事してなさそうだし、いつもパチンコ打ってるみたいでさ。無職なのか聞いてみたけど、どうも闇バイトをしているみたいでさ。」

柚花のその時の表情はとても悲しそうであった。

「柚花はそいつを殺すのか?」

「いや、お兄さんからは今のところ殺人をしたことある人の匂いはないから殺さないよ。でも、殺しをしたら殺さなきゃいけない。」

柚花は普段から笑顔でニコニコしていてどこでも人気者ではあるが、忍者という仕事で数え切れないほどの人と出会い斬り殺してきた。

それだけの出会いと殺しをしてきた人生で備わった能力が『人殺しの匂い』が分かる能力である。

柚花には人殺しをしたことある人は独特の匂い、血生臭さを感じるらしい。


そして人殺しをしてきた者は斬り捨てる。これが柚花の『己の掟』である。





しばらく湖の周りをグルっと一周すると怪しい人影を柚花が見つける。

「メッセ、怪しい人影発見。しばらくあの人達の後をつけるよ。」

「了解だ!」