本日も快晴。半径二千キロ以内に敵影なし。ただしレーダーの生産に必要なガリウム砒素の在庫が乏しい。大半は耐用年数を超えている。危険を冒してまで奪うか朽ちるまで生存者を待ち続けるか。都市は逡巡しながら今日も原罪を保存する。咎のない有機体Aを処刑し、Bは負わせた罪を懺悔する。そしてAが生まれBを処刑する。過ちを繰り返すことで都市は人であり続けようとした。
殺し合う日常に感情が鈍磨したころ。街を取り巻く安全地帯に人影を見た。
ちょうどその時、私は照準器に夫を捉えていた。赤いフォントが割り込んだ。
「こんな時に!」
私は発煙筒を夫に投げ「命拾いしたわね!」と捨て台詞。
生存者はボロ布を被った母娘だった。
二人は私を見ると駆け寄ってきた。母は娘の肩を抱き震えていた。その手は小指がなかった。彼女は私にしがみつくと泣きながら訴えた。
「この子は殺さないで下さい!私にできることなら何でもしますから!!」
「私は殺人鬼じゃない。落ち着け」私はそう言うと彼女に手を添え銃を下げた。
すると彼女は私の胸に頭を預けた。その顔は涙でグチャグチャだった。そして私達は互いを見合った。そこでようやく私と彼女は目が会ったのだ。私は思わず言葉を失った。そこにいたのは、かつて同じ時間を過ごした幼馴染みだった。私は彼女を知っていた。彼女は、あの時、目の前にいる少女と同じように泣いたのだ。私は、私は………………。
「お腹空いてる? よかったら家に上がっていって」
気が付くと私の口から自然とそんなセリフが出てしまっていた。しかし母娘の脇を機銃掃射が走った。振り向くと私の夫が小銃を構えていた。
「やめてあげて!」
「いいや、この親子は殺す! 俺はお前と殺し合っては再生する関係を続けてきた。罪なき伴侶を殺し、その過ちを懺悔し、新たな伴侶を迎える。この美しい円環に部外者が入ることは許されない。ループが汚れる。だから殺すのだ」夫はそう言うと私に銃弾を放った。それは正確に心臓を貫き私の体は地に伏していた。
薄れゆく意識の中で、ふと疑問が過った。「だからと言って私を殺すなんて…」
夫は答えた「過ちを許し合う日々にどうして罪悪感が生じるのか、私は悩み、回答を見出したのだ」と。
娘を抱きかかえ、これ見よがしに披露する。「この子のためなら何でもするんですね」、と母親が言う。
殺し合う日常に感情が鈍磨したころ。街を取り巻く安全地帯に人影を見た。
ちょうどその時、私は照準器に夫を捉えていた。赤いフォントが割り込んだ。
「こんな時に!」
私は発煙筒を夫に投げ「命拾いしたわね!」と捨て台詞。
生存者はボロ布を被った母娘だった。
二人は私を見ると駆け寄ってきた。母は娘の肩を抱き震えていた。その手は小指がなかった。彼女は私にしがみつくと泣きながら訴えた。
「この子は殺さないで下さい!私にできることなら何でもしますから!!」
「私は殺人鬼じゃない。落ち着け」私はそう言うと彼女に手を添え銃を下げた。
すると彼女は私の胸に頭を預けた。その顔は涙でグチャグチャだった。そして私達は互いを見合った。そこでようやく私と彼女は目が会ったのだ。私は思わず言葉を失った。そこにいたのは、かつて同じ時間を過ごした幼馴染みだった。私は彼女を知っていた。彼女は、あの時、目の前にいる少女と同じように泣いたのだ。私は、私は………………。
「お腹空いてる? よかったら家に上がっていって」
気が付くと私の口から自然とそんなセリフが出てしまっていた。しかし母娘の脇を機銃掃射が走った。振り向くと私の夫が小銃を構えていた。
「やめてあげて!」
「いいや、この親子は殺す! 俺はお前と殺し合っては再生する関係を続けてきた。罪なき伴侶を殺し、その過ちを懺悔し、新たな伴侶を迎える。この美しい円環に部外者が入ることは許されない。ループが汚れる。だから殺すのだ」夫はそう言うと私に銃弾を放った。それは正確に心臓を貫き私の体は地に伏していた。
薄れゆく意識の中で、ふと疑問が過った。「だからと言って私を殺すなんて…」
夫は答えた「過ちを許し合う日々にどうして罪悪感が生じるのか、私は悩み、回答を見出したのだ」と。
娘を抱きかかえ、これ見よがしに披露する。「この子のためなら何でもするんですね」、と母親が言う。