(おい、どうしたんだよ司郎君。めっちゃ背伸びてんじゃん。ちょっと待て、なんか声も高くないか?)
司会は司郎に質問する。
「ところで今日は何で来たん?」
大城は慌てて司会を止めようとする。
「いやいやまあまあまあまあ!実は…」
彼の背広からポロっと細長い紙切れが転がり落ちた。誰がどう見ても宝くじである。「それって年末ドリームジャンボ?」
智恵理が拾い上げると急に彼の態度が変わった。「返してくださいよ!もう!」ひったくるように奪い取る。しかし、一部始終がスマホで撮影されていた。観客が動画をアップ拡散される。たちまち特定班と称する暇人が画像を解析して当選番号と照合した。
「大当たりじゃん。しかも前後賞6億円!」
すげえという賞賛と大城の癖に!という妬みが大城のアカウントを炎上させた。大城は智恵理と付き合っている。大城は嫉妬から、大城山の神社の前で撮影した自分の顔と智恵理の肩を抱き寄せている写真を公開した。そして大城はSNS上で謝罪する。
大城は会社に出勤できなくなった。当然だろう 大城の自宅前にはマスコミが殺到していた。
「当選したら智恵理と結婚するつもりだった」という記者の言葉を「はい」という返答だと聞き違えた司会者がインタビューをする。智恵理の回答に会場は爆笑に包まれる。その後、司会者は「大城さんは、まだ立ち直れないようなので今日はここいらでお開きにいたしたいと思います。ありがとうございました」と言い放った。
「何だよ、あの司会野郎」
怒り狂う大城。
翌日、智恵理に謝りたいとメールをすると「しばらく会いたくない」と返事が来た。智恵理の実家のほうにも電話をかけたがつながらない 大城は再び「モーニングブギ」を聞き始めるようになった。
すると再び不思議なことが起きた「はい」という言葉だけなのに「ふぇる」や「ふぁれ」が混じっているのだ
司会:えっと、はいは「ぶんちゃ」ですねえ
大城:ふぇるもはいは、「ぶんちゃ」で、「ぶんちゅ」で、「はいはいはふぁれは、「ぶひゅひょひょん」ってことで、「ブンチャ」っていうふうに、「モーニングブギー」が訛って、はいっはははふぁはふぁって感じで「ブンチャー」に聞こえるのかもしれないんですけど、これ、多分、「ぶんちゅうしゃ」、「ぶんちゆうじゃ」みたいな意味だと思うんです
大城:はー、そう言われてみるとそんな気がしないでもないですよね。はあはあははいは、ははいはいいはいいいいひぃはあああいいいえいえいえいいいええええいええいいええいええいえ
また「ぶんちゃっちゃ♪」が鳴り響いている
司会:えええええええと「ブンチャーシャ」ですねええ
「ブッチョウシャ」??大城は頭を抱えてしまった。何だこれは?本当にそう言ったんだろうかという疑問すら湧き上がってくるほど訳が分からないのだ。

またある朝の情報番組にて「クイーンエリザベス号船内でもモーニングブギ」が流れた。
乗客たちは不思議そうにしていた。船長は「こんなのは、ただの音です」と笑い飛ばす。しかし、船に同乗している精神科医が「もしかしたらこれが、例のあの有名なモーニングブギの正体かも知れませんね」と言う。
医師によればモーニングブギは世界各地の空港でよく聞こえてくる「耳に残るメロディー」「目覚まし時計のように鳴り続ける音楽」であり、その音を聴くと仕事の効率が良くなると言われているそうだ。
そこで、医師が乗船している船の楽団員たちにも演奏してもらって、その音を確認することになった。
大城も一緒にその映像を見守る中、演奏が始まる 大城がその曲を聴いてみると……。それは大城もよく知っている曲のフレーズだった。「この曲はまさか!?」と大城が言うと、医師が説明してくれた「大城山には古くから伝わる「早寝音頭」というものがあって、この曲と同じものが原曲になってるんですよ。まあ一種の子守唄ですね。他にも「富士山の子守歌」、「伊豆の国の御坂山御岳さまの子守歌」などがあるんですよ。おそらくこれらの曲は「耳の奥底に残っている記憶が蘇っているんじゃないかと思うんですよね」
その後の調査で「モーニングブギ現象の原因が解明され、解決した」というニュースが流れるのはそれから数か月後のことである
「お待たせ致しました。只今より『ミュージック&ダンススクール発表会202X』を開催したいと思います!」司会者が高らかに宣言する
「それでは最初の発表者は、ボーカル部門の最優秀賞受賞者による「The Greater Starlight」の披露になります!」
その瞬間会場は拍手と歓声に包まれた その曲は誰もが知るスター誕生の曲である。どうぞ~という前振りとともにイントロが始まった。
「星の王太子」