「弥生! まったく君って人は!」


 私は、しょんぼりとして正座している妻を前に、やりづらく思いながら、それでも怒っていた。

「君はもう、自分一人の体じゃないんだよ。なのに、わざわざ柾さんとこの神社まで、妊娠のご報告だって?!
まったく、君の信仰心には感心するけれど、神様だって、そんな体で、しかも車で、高速道路で三時間もかかって来られたときちゃ、ひやひやして報告なんてまともに聞けたものじゃないよ!」

「……すみませんでした」

 仕事から帰ってみれば、いつもならすでに帰っているはずの妻がおらず、一時間ほど遅れて帰ってきた妻を問い詰めれば、地元の神社にお参りに行っていたとの返事。私は驚き呆れるとともに、自身の体の事を考えない行動をした妻に怒りを覚えた。そして、お説教をしている今に至る。

「柾さんと桜さんだって呆れていたでしょう?」
「おっしゃる通りにございます……」

 いつもにも増し、素直に反省している妻。屁理屈が大好きな妻が、一切反論してこないことに、さすがに妊娠中にうかつにする行動ではなかったと、心から反省しているようであった。
 だから、私も、ふうとため息を一つつくと、怒りを収めることにした。

「まあ、とにかく何事もなくてよかった。夕飯はもう私が作るから。君はお風呂にお湯を入れてきて」
「うん。あっ、でもちょっとその前に」

 妻は、脇に置いてあったビニール袋の中から、何かを取り出した。それは、植木鉢と園芸土の小袋、スコップに可愛らしいゾウさんのじょうろであった。そして、カバンの中から、何やら小枝を取り出した。


「これ、一緒に植えないか?」