雅美は雅麗姫に言われるまま目を閉じた。そして、神経を集中させてみた。
すると、確かにかすかな音が聞こえてきた。
それは雅麗姫にしか聞こえないようだったが、どうやら一定のリズムを刻んでいるようだ。
雅美は目を開けて雅麗姫の顔を見ると、うなずいてみせた。「何の音かしら?」「わからないわ」
やがてエレベーターが一階に止まった。二人が降りると、ちょうど正面にあるエレベーターホールに人影が現れた。
雅麗姫はハッとして身構えたが、すぐに力を抜いた。
「あの子たちだ」雅麗姫がつぶやくと、雅美もうなずいた。
二人は駆け寄って声をかけた。「どうしたの?」「大変よ」
二人は雅麗姫たちの姿を見て驚いていたが、雅美が事情を説明すると、二人そろって頭を下げた。「ごめんなさい」「迷惑をかけて悪かったと思ってるわ」「本当に申し訳ない」
「いいのよ。気にしないで」雅麗姫は笑顔で言った。
「それで、これからどうする?」「この人たちは?」
「私たちは行くわ」「どこへ?」
「分からないけど」「なら私たちと一緒に行きませんか?」
「一緒に?」「えぇ、お詫びに安全なところまで送ります」
「そうだな。俺たちもそっちに行くつもりだったんだ。だから、一緒のほうが都合がいい」
「そうですね」雅美が同意した。「決まりね」
三人は歩き始めた。その背後では、エレベーターホールに待機していた男たちが集まってきていたのだが、そのことには全く気が付いていなかった―――
(完)