ドキドキしながら部屋に戻ると、先輩は湯呑みを持って一息ついてるところだった。ちょうど一口飲み終わった、といった姿に見えた。
そしてわたしに向かって、はしゃいだように言ったの。
「マミ、このお茶すっごく美味しいんだけど。何か特別な茶葉使ってるの?」
別にその辺で売ってるようなフツーのヤツだよ。でも先輩は、絶賛してくるの。
「ホントに良い味だよ。ひょっとしてマミ、めちゃくちゃ才能あるんじゃない?」
お茶入れの才能なんて欲しくないけどね。まあ、そこまで言われたら飲んでみたくなるじゃん?
だから勧められるまま、口に入れたの。
それから一分もしないうちに、瞼が重くなって、視界がぐらぐらしてきた。
そんで目が覚めた時に、樹里亜先輩は家にいないじゃん。
睡眠薬盛られたんだ、って気付いた。先輩は、飲んでるふうに見せてただけだった。
制服がなくなってたのと、交わした覚えのない幸とのメッセージのやり取りで、学校に行ったんだ、とわかった。
先輩の想定では、わたしはもっと眠ってるはずだったんだろうね。わたしの意識がないうちに、学校まで行って帰ってくるつもりだったんだと思う。
何でそんなに早く目覚めたのか、って?
それはわたしが、睡眠薬を日常的に飲んでたから、耐性がついてたんだ。
樹里亜先輩にも話してなかったけど、半年くらい前からわたしは、不眠にちょっと悩まされてたの。
かかりつけの病院で出されてる、結構強めの薬を飲んでた。だから市販の睡眠薬だと、効果が薄かったんだと思う。
そうとは知らずに、先輩は計画を実行した――。
わたしのふりをして、幸を4階に呼び出して、そこから突き落とすという信じられない計画を。
あり得ない、って思いたかった。でもここまで証拠がある以上、もう誤魔化せない。
恐れていた通りに、幸が落下した瞬間、わたしは確信した。
ストーカー騒動は、先輩が仕組んだことだったんだ、って。
何でそんなことしたの!? というか人を殺そうとしたなんて――しかも実の妹を。
悠と幸が救急車で運ばれたあと、わたしはそうぐるぐる考えながら、半ば無意識で帰宅してった。
部屋に入ると、制服は戻されてた。ベッドに置いてあった携帯の中身を確認すると、幸に送られてたメッセージが、送信取り消しになってた。
それを見て、鍵をかけないで飛び出したことに気付いた。
先輩がさっきまでここにいたんだ。
先輩に会わなくちゃ。どうしても訊きたい。
そう強く思った。
何でこんなことしたのか。何で幸を殺そうとしたのか。
その理由を樹里亜先輩の口から聞いて、そして――自首を促そう。
どうして幸を殺したかったのかわからないけど、樹里亜先輩とちゃんと話さなきゃ、と思った。
わたしを助けてくれた優しい樹里亜先輩が、何に追い詰められていたのか。
どんなことを言われても受け入れる覚悟で、会いに行こう、と決意した。
そしてわたしに向かって、はしゃいだように言ったの。
「マミ、このお茶すっごく美味しいんだけど。何か特別な茶葉使ってるの?」
別にその辺で売ってるようなフツーのヤツだよ。でも先輩は、絶賛してくるの。
「ホントに良い味だよ。ひょっとしてマミ、めちゃくちゃ才能あるんじゃない?」
お茶入れの才能なんて欲しくないけどね。まあ、そこまで言われたら飲んでみたくなるじゃん?
だから勧められるまま、口に入れたの。
それから一分もしないうちに、瞼が重くなって、視界がぐらぐらしてきた。
そんで目が覚めた時に、樹里亜先輩は家にいないじゃん。
睡眠薬盛られたんだ、って気付いた。先輩は、飲んでるふうに見せてただけだった。
制服がなくなってたのと、交わした覚えのない幸とのメッセージのやり取りで、学校に行ったんだ、とわかった。
先輩の想定では、わたしはもっと眠ってるはずだったんだろうね。わたしの意識がないうちに、学校まで行って帰ってくるつもりだったんだと思う。
何でそんなに早く目覚めたのか、って?
それはわたしが、睡眠薬を日常的に飲んでたから、耐性がついてたんだ。
樹里亜先輩にも話してなかったけど、半年くらい前からわたしは、不眠にちょっと悩まされてたの。
かかりつけの病院で出されてる、結構強めの薬を飲んでた。だから市販の睡眠薬だと、効果が薄かったんだと思う。
そうとは知らずに、先輩は計画を実行した――。
わたしのふりをして、幸を4階に呼び出して、そこから突き落とすという信じられない計画を。
あり得ない、って思いたかった。でもここまで証拠がある以上、もう誤魔化せない。
恐れていた通りに、幸が落下した瞬間、わたしは確信した。
ストーカー騒動は、先輩が仕組んだことだったんだ、って。
何でそんなことしたの!? というか人を殺そうとしたなんて――しかも実の妹を。
悠と幸が救急車で運ばれたあと、わたしはそうぐるぐる考えながら、半ば無意識で帰宅してった。
部屋に入ると、制服は戻されてた。ベッドに置いてあった携帯の中身を確認すると、幸に送られてたメッセージが、送信取り消しになってた。
それを見て、鍵をかけないで飛び出したことに気付いた。
先輩がさっきまでここにいたんだ。
先輩に会わなくちゃ。どうしても訊きたい。
そう強く思った。
何でこんなことしたのか。何で幸を殺そうとしたのか。
その理由を樹里亜先輩の口から聞いて、そして――自首を促そう。
どうして幸を殺したかったのかわからないけど、樹里亜先輩とちゃんと話さなきゃ、と思った。
わたしを助けてくれた優しい樹里亜先輩が、何に追い詰められていたのか。
どんなことを言われても受け入れる覚悟で、会いに行こう、と決意した。