「で、どういうことなんだ。今までどうやって生きていたんだ?」
八代が昂る心を抑えるような抑揚で、椅子に座らせた理人君に問いかける。
あの後、大人しくなった少年改め理人君を、私の病室へと連れていき、話を聞くことになった。
もう逃げる気はないらしく、理人君は観念したように深く息を吐き出した。
視線はかち合わない。彼はずっと自身の足元を見るように俯いていて、どんな表情をしているのかはわからなかった。
「適当に――のらりくらりと過ごしてたよ」
どうやって生きていたのか、という質問に、彼は気まずそうにポツポツと答えた。
そんなことはどうでも良いじゃないか、と抗議するかのようだった。
私が、理人君の声をちゃんと聞いたのは、これが初めてだ。
短い言葉だったが、八代と声が似ている、と思った。
「――そうか」
八代は何か言いたげな雰囲気を漂わせていたが、我慢して、一旦全て飲み込むことにしたらしい。
「お前と幸は、どこで知り合った? 何で幸を付け回したり、家に侵入したりなんてことしたんだ?」
「幸は……僕を救ってくれたんだ」
「え?」
「何度も何度も……。折れそうな心を、補強してくれたんだ」
「何それ……幸とは何回も会ってたの?」
見えてこない話に耐えかねて、私は口を挟む。
幸はまったく少年に心当たりはない、という素振りだったのだが、どういうことだろう。
理人君は、私をちらりと一瞥だけすると、どうでもよさそうに視線を戻した。
「僕と幸が最初に対面したのは、6月1日だ。でもそれよりも前に僕たちは、SNSで繋がっていた」
「えっ……」
それはおかしい。幸はSNSを一切やっていないはずだ。本人がいつかの帰り道で、確かにそう言っていた。
私の戸惑いを意に介さず、理人君はエンジンがかかったように、饒舌に語り始めた。
八代が昂る心を抑えるような抑揚で、椅子に座らせた理人君に問いかける。
あの後、大人しくなった少年改め理人君を、私の病室へと連れていき、話を聞くことになった。
もう逃げる気はないらしく、理人君は観念したように深く息を吐き出した。
視線はかち合わない。彼はずっと自身の足元を見るように俯いていて、どんな表情をしているのかはわからなかった。
「適当に――のらりくらりと過ごしてたよ」
どうやって生きていたのか、という質問に、彼は気まずそうにポツポツと答えた。
そんなことはどうでも良いじゃないか、と抗議するかのようだった。
私が、理人君の声をちゃんと聞いたのは、これが初めてだ。
短い言葉だったが、八代と声が似ている、と思った。
「――そうか」
八代は何か言いたげな雰囲気を漂わせていたが、我慢して、一旦全て飲み込むことにしたらしい。
「お前と幸は、どこで知り合った? 何で幸を付け回したり、家に侵入したりなんてことしたんだ?」
「幸は……僕を救ってくれたんだ」
「え?」
「何度も何度も……。折れそうな心を、補強してくれたんだ」
「何それ……幸とは何回も会ってたの?」
見えてこない話に耐えかねて、私は口を挟む。
幸はまったく少年に心当たりはない、という素振りだったのだが、どういうことだろう。
理人君は、私をちらりと一瞥だけすると、どうでもよさそうに視線を戻した。
「僕と幸が最初に対面したのは、6月1日だ。でもそれよりも前に僕たちは、SNSで繋がっていた」
「えっ……」
それはおかしい。幸はSNSを一切やっていないはずだ。本人がいつかの帰り道で、確かにそう言っていた。
私の戸惑いを意に介さず、理人君はエンジンがかかったように、饒舌に語り始めた。