数日後。またもやマミの自宅で、私たち三人は会議を開いていた。
「その男子は何て言うんだ?」
「山田ケンです」
「山田の進路はどうなったの?」
すぐにたどり着けると良いな、と思いながら尋ねる。
しかし私の期待と裏腹に、マミは残念そうに首を振った。
「山田が今どうしてるのかわからないの。志望校とかも聞いてない」
「ならどうしようもないんじゃ――」
「いや。山田の女友達に聞いてみる」
「連絡先を知ってるのか?」
「いいえ。けどその子がどこの高校に行ったのかは知ってます」
「じゃあまた校門の前で待つことになるのか」
「そうなりますね。すいません、また付き合ってくれますか」
「俺がいると向こうに変に思われないか? 折野だけの方が良いんじゃないか」
「いいえ。山田はわたしが嫌になったから別れたんだって周りに言いふらしていたので――わたしだけで行くと、山田の場所を素直に教えてくれない可能性があります」
「なるほど。じゃあ一緒に行くしかないな」
「はい。よろしくお願いします!」
また二人で行動するのか――。私の胸が疼き出す。
マミが良い奴になっていき、再びアタックされたら、八代はマミを好きになるんだろうか。
いや、そうなったとしても私には関係ないことだ。八代とは、生涯友達として関わると決めたんだから。
墨汁を垂らしたように濁っていく気持ちを、慌てて振り払って、二人に笑いかける。
「じゃあ私はまたお留守番だね。よろしく頼んだよ」
「ああ」
「任せといて!」
並んで頷き合う二人を見て、ざらつく心を落ち着かせようと、庭に綺麗に咲いたコスモスにこっそり視線を移した。
「また早退したんだね、マミちゃん」
幸は、今月2回目の早退をしたマミが心配らしい。
「そんなこともあるよ。季節の変わり目だし」
また同じ言い訳を呟く。マミもこれ以上授業を休むことにならないといいな。小中学校と違って、休みすぎると卒業できないし。
「そうだ悠ちゃん! 私ね、良いことがあったんだ」
今にもスキップしそうなウキウキ加減で、幸が告げる。
これは樹里亜絡みだろうか、と直感する。
私の勘は当たっていたらしく、幸は夢心地みたいなうっとりとした表情で、浮かれ気味に呟いた。
「次の日曜日に、お姉とピクニックに行くことになったんだ! あっ、お姉の彼氏も一緒なんだけど。改めてちゃんと紹介したい、ってことで、交流も兼ねてみたいな感じ」
「へぇ、よかったじゃん! やったね幸」
「うん。ピクニックなんて子どもの時以来。あ、今も未成年だから子どもだけどね」
幸がへへっと舌を出して笑う。
「あの丘の頂上近くで待ち合わせなんだ」
幸があの、と指で示した先は、地元民には花火の名所として知られている、そこそこの高さの丘がある方角だった。
「待ち合わせ? わざわざ?」
「彼氏さんの家から行くみたい。ご馳走持ってくるからねって言ってた」
「ふぅん。あそこなら花火大会以外じゃあまり人来ないし、まったりできそうだね。楽しんできなよ」
ついこの前怖い目にあったので、塞ぎ込んでいないか心配だったが、楽しそうに話す姿を見て安心した。
「うん! 楽しみだなぁ~」
幸せそうな幸の横顔を見て、私も自然と穏やかな笑みがこぼれた。
「その男子は何て言うんだ?」
「山田ケンです」
「山田の進路はどうなったの?」
すぐにたどり着けると良いな、と思いながら尋ねる。
しかし私の期待と裏腹に、マミは残念そうに首を振った。
「山田が今どうしてるのかわからないの。志望校とかも聞いてない」
「ならどうしようもないんじゃ――」
「いや。山田の女友達に聞いてみる」
「連絡先を知ってるのか?」
「いいえ。けどその子がどこの高校に行ったのかは知ってます」
「じゃあまた校門の前で待つことになるのか」
「そうなりますね。すいません、また付き合ってくれますか」
「俺がいると向こうに変に思われないか? 折野だけの方が良いんじゃないか」
「いいえ。山田はわたしが嫌になったから別れたんだって周りに言いふらしていたので――わたしだけで行くと、山田の場所を素直に教えてくれない可能性があります」
「なるほど。じゃあ一緒に行くしかないな」
「はい。よろしくお願いします!」
また二人で行動するのか――。私の胸が疼き出す。
マミが良い奴になっていき、再びアタックされたら、八代はマミを好きになるんだろうか。
いや、そうなったとしても私には関係ないことだ。八代とは、生涯友達として関わると決めたんだから。
墨汁を垂らしたように濁っていく気持ちを、慌てて振り払って、二人に笑いかける。
「じゃあ私はまたお留守番だね。よろしく頼んだよ」
「ああ」
「任せといて!」
並んで頷き合う二人を見て、ざらつく心を落ち着かせようと、庭に綺麗に咲いたコスモスにこっそり視線を移した。
「また早退したんだね、マミちゃん」
幸は、今月2回目の早退をしたマミが心配らしい。
「そんなこともあるよ。季節の変わり目だし」
また同じ言い訳を呟く。マミもこれ以上授業を休むことにならないといいな。小中学校と違って、休みすぎると卒業できないし。
「そうだ悠ちゃん! 私ね、良いことがあったんだ」
今にもスキップしそうなウキウキ加減で、幸が告げる。
これは樹里亜絡みだろうか、と直感する。
私の勘は当たっていたらしく、幸は夢心地みたいなうっとりとした表情で、浮かれ気味に呟いた。
「次の日曜日に、お姉とピクニックに行くことになったんだ! あっ、お姉の彼氏も一緒なんだけど。改めてちゃんと紹介したい、ってことで、交流も兼ねてみたいな感じ」
「へぇ、よかったじゃん! やったね幸」
「うん。ピクニックなんて子どもの時以来。あ、今も未成年だから子どもだけどね」
幸がへへっと舌を出して笑う。
「あの丘の頂上近くで待ち合わせなんだ」
幸があの、と指で示した先は、地元民には花火の名所として知られている、そこそこの高さの丘がある方角だった。
「待ち合わせ? わざわざ?」
「彼氏さんの家から行くみたい。ご馳走持ってくるからねって言ってた」
「ふぅん。あそこなら花火大会以外じゃあまり人来ないし、まったりできそうだね。楽しんできなよ」
ついこの前怖い目にあったので、塞ぎ込んでいないか心配だったが、楽しそうに話す姿を見て安心した。
「うん! 楽しみだなぁ~」
幸せそうな幸の横顔を見て、私も自然と穏やかな笑みがこぼれた。