会えなかった期間で、俺は気持ちが落ち着いていった。
若葉への思いが冷めたわけじゃない。
時間が経ってから、あの時の俺を思い出して、反省したんだ。
感情の高ぶりに任せて、とんでもないことを言おうとするところだった、と。
出会ってまだそれほどの間もない奴に、告白されたと思ったら、重い話を立て続けにされるなんて、すごく反応に困るはずだ。
冷静になった頭で、そのことに思い至り、それは駄目だ、となった。
まずは若葉に好いてもらうことが大事だ。ありのままを受け入れてもらいたい、と願うのはそれからだ。
夏の終わりにそう決めた。
その後、両思いを目標にして、動き出す――までもなく、若葉と会ったり、メッセージでやり取りする機会は、自然と増えていった。
折野と交流することになった時、正直気が進まなかったけど、若葉が間に入る形になってくれたから、そんなに憂鬱にならないで済んだ。
若葉に会うことが楽しみだった。帰り道を一緒に歩く時間も、何にも替えがたい喜びだった。
それから少しして、折野との交流は断つことにしよう、と二人で話し合ったんだけど――。
その矢先に、理人が幸の庭に侵入しているのが発見されて、消滅したと思っていたストーカー問題が、再び持ち上がった。
ストーカーの正体について、調査することになった時、俺はひとつ決心した。
この件が片付いたら、若葉に好意を伝えよう。
若葉も俺のことを憎からず思っている気がしていた。告白すれば、オーケーがもらえるのではないか、という予感があった。
そういう期待もあって、本当はすぐにでも告白したい気分だったけど、色々大変な今では、タイミングが悪いから、積極的なアプローチなんかも控えよう、と思っていた。
ストーカー問題が解決した暁には、必ず思いを告げる。
そう思っていたんだが――若葉の育ってきた環境を知って、考えが変わったんだ。
若葉が目に涙を溜めながら言った言葉で、俺の淡い期待は、完全に勘違いだったんだとわかった。
恋愛が無理になった。誰かを好きになるのが怖くなった。
それを聞いて、俺は告白することを諦めて、思いを封印することにした。
でもせめて。大切な友人として、辛い時に抱きしめるくらいは、許してほしい。
あくまでも友人として、と自分に言い聞かせながら、目の前の心細そうな若葉を抱きしめた。
若葉は拒まないでいてくれた。それにどれほど救われたかしれない。これからも良い関係でいられるだろう、と安心した。
若葉ならいつか、相応しい人間を引き寄せられる。
だって若葉は、凄く魅力的だから。俺なんかには、もったいないくらいに。
最初から、好きになるべきじゃなかったんだ。俺はそう結論づけて、若葉がもし誰かと付き合うことになったら、全力で応援しよう、と思った。
誤解のないように言っておくと、俺は若葉が好きだ。
お前が誰と一緒になろうと、この思いは変わらないと思う。
だからこそ、ちゃんと幸せになってほしいんだ。
家族を――大切な人を守れなかった俺は、好きな奴を幸せにできる自信がない。若葉には他にいくらでも相応しい奴がいるはずだ。
若葉への思いが冷めたわけじゃない。
時間が経ってから、あの時の俺を思い出して、反省したんだ。
感情の高ぶりに任せて、とんでもないことを言おうとするところだった、と。
出会ってまだそれほどの間もない奴に、告白されたと思ったら、重い話を立て続けにされるなんて、すごく反応に困るはずだ。
冷静になった頭で、そのことに思い至り、それは駄目だ、となった。
まずは若葉に好いてもらうことが大事だ。ありのままを受け入れてもらいたい、と願うのはそれからだ。
夏の終わりにそう決めた。
その後、両思いを目標にして、動き出す――までもなく、若葉と会ったり、メッセージでやり取りする機会は、自然と増えていった。
折野と交流することになった時、正直気が進まなかったけど、若葉が間に入る形になってくれたから、そんなに憂鬱にならないで済んだ。
若葉に会うことが楽しみだった。帰り道を一緒に歩く時間も、何にも替えがたい喜びだった。
それから少しして、折野との交流は断つことにしよう、と二人で話し合ったんだけど――。
その矢先に、理人が幸の庭に侵入しているのが発見されて、消滅したと思っていたストーカー問題が、再び持ち上がった。
ストーカーの正体について、調査することになった時、俺はひとつ決心した。
この件が片付いたら、若葉に好意を伝えよう。
若葉も俺のことを憎からず思っている気がしていた。告白すれば、オーケーがもらえるのではないか、という予感があった。
そういう期待もあって、本当はすぐにでも告白したい気分だったけど、色々大変な今では、タイミングが悪いから、積極的なアプローチなんかも控えよう、と思っていた。
ストーカー問題が解決した暁には、必ず思いを告げる。
そう思っていたんだが――若葉の育ってきた環境を知って、考えが変わったんだ。
若葉が目に涙を溜めながら言った言葉で、俺の淡い期待は、完全に勘違いだったんだとわかった。
恋愛が無理になった。誰かを好きになるのが怖くなった。
それを聞いて、俺は告白することを諦めて、思いを封印することにした。
でもせめて。大切な友人として、辛い時に抱きしめるくらいは、許してほしい。
あくまでも友人として、と自分に言い聞かせながら、目の前の心細そうな若葉を抱きしめた。
若葉は拒まないでいてくれた。それにどれほど救われたかしれない。これからも良い関係でいられるだろう、と安心した。
若葉ならいつか、相応しい人間を引き寄せられる。
だって若葉は、凄く魅力的だから。俺なんかには、もったいないくらいに。
最初から、好きになるべきじゃなかったんだ。俺はそう結論づけて、若葉がもし誰かと付き合うことになったら、全力で応援しよう、と思った。
誤解のないように言っておくと、俺は若葉が好きだ。
お前が誰と一緒になろうと、この思いは変わらないと思う。
だからこそ、ちゃんと幸せになってほしいんだ。
家族を――大切な人を守れなかった俺は、好きな奴を幸せにできる自信がない。若葉には他にいくらでも相応しい奴がいるはずだ。
