話し終えた幸に、さっそく質問する。

 「その男子に見覚えとかある? 話を聞いたところ、向こうは幸のこと知ってるふうだったけど」
 「それが全然身に覚えなくて……顔もよく見えなかったしなぁ」
 「うちの学校の生徒かもしれないね」
 「私、学校くらいにしか同年代の知り合いいないし、その可能性が高いと思う」
 「ストーカーかもな。最近誰かに見られてる感じとかなかったか?」

 八代が幸に尋ねる。

 「何もおかしなこととかなかったよ。男子と話すこともあんまりないし。本当に心当たりがない」

 幸はたいそうモテたが、噂されるばかりで、積極的にアプローチされることは少なかった。たまに絡んでくるのもいたが、幸はきっと好意を向けられていることに気づいていなかったと思う。
 幸は鈍いのもあるが、そういった人たちの対応に慣れていない感じだった。

 だから厄介なタイプの人に好かれても、上手くかわせないのではないかと思っていた。
 いつかストーカーみたいなのがつくかもしれないと。

 「先生に今日学校休んだ人を聞けば、うちの生徒かどうか、分かるんじゃないかな」
 「あっ。そっか、そうだね」
 私の提案に幸は膝を打つ。

 「じゃあ私は学校に行ってみようと思うけど……その前に幸。病院に行って診てもらおう」

 できるだけ早く診てもらった方が良いだろう。八代と二人きりにしたくないのもあった。

 「けど――」
 「俺今日はなんも予定ないし、よかったら午後も留守番しとくぞ。だから行きたかったら学校にも行ってこい」
 八代が、幸に行くように促す。

 「こう言ってくれてるし行こうよ」
 「わかった。玄関の片付けもお願いできる? エリちゃん」
 「ああ。やっとく」

 八代はぐっと親指を立てて快諾した。

 「じゃあいってくるね」
 「いってきます」

 私も一応挨拶をして出ていった。