マンションに帰りまさしにゲージを見せた。しかしまさしは不満そうにそっぽを向いた。
「あれ? お前ゲージ駄目なタイプか」
 確かいくつかのサイトには書いてあった。「人面犬の中には自分を犬扱いされるのを嫌う子もいます」
 肩を落として冷蔵庫に向かう。スポドリを二本取り出す。まさしにも「飲むか?」と差しだした。まさしは器用にペットボトルを掴み、美味しそうにごくごくと飲んだ。
「人面犬の中には自分を人間扱いされるのを嫌う子もいます」
 と書いてあるサイトもあったが、まさしはこっちは大丈夫なようだった。
「お前を買ってきてからゲージ買えばよかったよな。……俺、これだから抜けてるって言われんだよな」
 すると、まさしが耳を動かし、ぴょこりと立ち上がった。
「ん? どした、まさし」
 俺の言うことは無視して、ずんずんとまさしはゲージに向かっていく。そして、ゲージを横倒しにした。
「倒すほど気にくわないの!?」
 俺が目を丸くしていると、まさしはぷるぷると首を横に振った。そして、ゲージの中のブランケットを頭の下にひき、コの字型になったゲージの中で寝転んだ。そして、満足そうに「わう!」と鳴いた。
「え? もしかして言葉通じてる……?」
 そうかもしれない。人間の言葉はわかるのだ。ただしゃべれないだけで。
 都市伝説もあながち嘘ではなかったということだ。
 ふと思いついた。オウムのように言葉を教え込ませればしゃべるのではないか、と。
「こんにちは」
 俺はまさしに言ってみた。
 が、まさしはブランケットが気に入ったようで、そのままぐうすかと眠りに落ちてしまった。