『運命の子』『宿命の子』は――」

アスがそう言おうとした時だった。
寮の外でものすごい豪音が響く。

「な、なに!?」

「爆発!?」

4姉妹も状況が分からず慌てる。

「アモル!」

「今の何!?」

部屋の外で待っていた、ラヴ、シオン、エレテも驚き戻ってくる。

「みんな、落ち着いて! 何かあったら学園から連絡魔法が来るはずだから」

皆を落ち着かせるようにアモルが声をあげる。
そしてすぐ後に予想通り魔法による拡声が届く。

『学園にモンスターの襲撃です! 生徒の皆さんは寮から出ないように!』

「モンスター!?」

「襲撃って……」

放送が逆に皆を不安にさせ、寮の他の部屋もざわめきだす。

「スイ、フウ、アス。オレたちの出番だな」

「うん!」

「……うん」

「寮から出ないようにと言われたが」

ヒノの言葉に、スイとフウは頷き、アスも言葉とは裏腹に外に出る準備をする。

「先輩たち、何を!?」

アモル驚きを気にせず、まずヒノが窓から飛び降りる。

「これはね、わたしたちの役目なの。アモルくんたちはここにいて!」

続いてスイが飛び立つ。

「……説明は、後でする」

そしてフウが。最後にアスが飛び降りた。
一気に4姉妹の部屋が静かになる。

「先輩たち……」

アモルの額に冷や汗が流れる。
このままでいいのか、という予感と共に。

「アモル」

ラヴがいつもの明るさではなく、真剣な表情でアモルを見つめた。

「アモルの思ったようにして」

「! ……うん!」

アモルはラヴの言葉に頷くと、自身も窓の縁に足をかけた。

「アモル」

「アモル!」

「アモルくん」

ラヴ、シオン、エレテが揃ってアモルの名を呼んだ。
アモルは窓の縁に乗りながら振り向く。

「「「気を付けて」」」

3人の言葉に頷き、窓から飛び立った。



「おらおらーっ!」

ヒノが自慢の炎魔法を放ちながらモンスターに突撃していく。

「ヒノ! 突っ込みすぎ!」

「援護するボクたちの身にもなってほしいね」

「……うん」

ヒノの後ろから、スイ、アス、フウが、
それぞれ自身の得意な魔法を放ちながらモンスターに攻撃する。

「しょうがねえだろ! 数が多いんだ。一気にやらねえと!」

「それはそうだけど……」

「しかしあまりにも多すぎる。先生たちは何をしているんだ……」

「……! 後ろ」

フウが珍しく声をあげるも遅い。4姉妹はモンスターに囲まれていた。

「っ! おらあっ!」

ヒノが炎魔法で正面のモンスターを吹き飛ばすも、群れは消えず囲みは解けない。
モンスターたちはじりじりと、4姉妹への囲みを狭めていく。

「くっ……。スイ、フウ、アス! もっと魔法を放て!」

「やってるよ! でも……」

「なんだ、この数は。……まさかこれが」

「……『大災厄』?」

4姉妹に恐怖の感情が押し寄せる。
勢いよく飛び出したものの、ここまでの数とは予想外だった。

「っ……」

モンスターの手が4姉妹に伸びようとした、その時だった。
群れの一角が吹き飛び、道を開く。

「先輩たち、大丈夫ですか!」

その開いた一角から、アモルが勢いよく、4姉妹の傍に勢いよく近づいた。

「アモルくん!?

「何故ここに……!?」

4姉妹がそれぞれ驚く中、アモルはそれを遮ると

「すみません! 飛びます!」

「飛ぶ……って、きゃああっ!?」

スイが問う前に、アモルは4姉妹をまとめて抱くように手を回すと、
凄まじい跳躍力でモンスターの群れから飛んでいく。

それをモンスターの陰から見つめる謎の人物が……。

「あの身体能力……間違いない。あの少年があの方の仰った――」

謎の人物の呟きは、周りのモンスターの雄たけびに消える。

「うるさいわね。もういいわ、帰るわよ」

謎の人物がそう言うとモンスターたちは一気に学園の外に消えていった……。



4姉妹を抱えたアモルは、学園の建物を登り屋上に着地する。

「大丈夫でしたか?」

アモルが4姉妹をそっと降ろす。
それぞれアモルから離れるが、フウだけはアモルの袖を握って離れない。

「……フウ先輩?」

「……怖かった」

フウのその言葉に釣られるように、スイがアモルに抱き着いた。

「ス、スイ先輩!?」

「怖かった…怖かったよ!」

スイはアモルの胸に顔を埋め泣き続ける。

「バ、バカ……泣くんじゃねえよ。オレたちの……使命だろ」

ヒノがアモルに背を向けながら言うが、その声は震えていた。

「アモル……すまない。少しこうさせてくれ……」

アスもヒノを引っ張ってアモルの傍による。
冷静なアスも震えながらアモルの手を握った。

「先輩たち……」

自分の傍で泣き続ける4姉妹を見てアモルは気づく。

(そうだ……先輩たちだってどんな事情があっても、
ボクと一つしか変わらない女の子たちなんだ。
あれだけモンスターに近づかれたら怖かったに決まってる……)

アモルは飛ぶときは別の力で、そっと優しく4姉妹を抱きしめる。
静かな屋上に4姉妹の泣き声だけが聞こえていた――。

「「アモル!」」

と思っていたら、屋上の扉が勢いよく開き、ラヴとシオンが、その後ろから遅れてエレテが現れる。

「あ」

アモルが何かしたわけではないが、アモルの周りには泣き続ける4姉妹。

「アモル……」

「なにしてるの……」

「い、いやこれは……モンスターの群れから逃げてきたわけだし、ね?」

「……アモルくん」

3人の視線にアモルは目を逸らす。
4姉妹の泣き声、それとは別のラヴたちの視線。
アモルは苦笑いしつつ皆を見るしかなかった。