「あらー。脱出してきたのね」
アモルたちの上空から、妖しい声が響きわたる。
「この声は……」
「アーマ!」
上空からアーマが見下ろしていた。
「久しぶりね。そうでもないかしら?」
アーマは見下ろしながら、アスに気が付いた。
「あら~。アスちゃんもいる」
「……悪いかな」
アスも眼鏡を光らせアーマを睨み返した。
「そうねえ。私にとっては悪いわねえ。
ヒノちゃんまで戻ってくるとエレメント家の四姉妹が戻るし……
それは面倒ねえ」
それでも余裕そうに見えるアーマに、アモルは言った。
「エレメント家の四属性がかつてのお前を滅ぼしたから」
「!?」
アモルの言葉にアーマは珍しく大きく反応した。
「な、何故それを……」
「何故って……それが知られるのを恐れて、こうして世界図書館を攻撃したんだろ?」
アーマはそれを聞き、すぐに自分が優位と言いたげな表情に戻る。
「フフ、そうよ。エレメント家からこっちに来ないと思ったら世界図書館に向かってるんですもの。
でも昔から結界の越え方がわからなかった」
そして高笑いする。
「そしたら丁寧にアモルくんたちが攻略してくれるんですもの。こんなに笑える事はないわ!」
だがアモルの表情は崩れない。
「確かにそこは僕たちのミスだ。結果、図書館にモンスターが入り込んでしまった。けど……」
アモルが後方の、図書館があった方を指す。
「図書館がこうなること。そして僕が情報を知ってしまったことは痛手じゃないかな?」
「くっ……」
アーマの顔が怒りの表情になっていく。
「なら……ここで貴方をやればいいだけの事よ。アモルくん!」
アーマが怒りのまま大鎌を取り出し突撃してくる。
アモルも戦闘態勢を取ろうとして、アスが前に出た。
「アス先輩……?」
「アモル。ここはボクに任せてくれないか?」
以前だったら断るところだったが、アモルはアスの自信ありげな表情を信じることにし大きく頷いた。
「よし」
アスが杖を構える。だが既にアーマは接近している。
「遅い!」
アーマの大鎌がアスに振り下ろされ……なかった。
「こ、これは!?」
地面から生えた巨大な岩の手がアーマの大鎌を掴み、アスへの攻撃を防いでいた。
「いでよ、大地に宿る岩の意思……『ゴーレム』!」
アスの目の前、アーマの真下の地面が大きく膨らんでいく。
地面が割れ岩の化身『ゴーレム』が出現する!
「精霊召喚だと!?」
アーマは驚きながら、ゴーレムの巨腕に掴まれ投げ飛ばされた。
「今の内だ、アモル!」
「はい!」
アモルはすぐに魔法の絨毯を広げると皆を乗せ飛び立つ。
アーマが追おうとするが巨大なゴーレムが行く手を塞ぎ通さない。
「くっ……おのれ……!」
アーマは目の前のゴーレムを壊すまで戦うしかなかった。
絨毯の速度は一定なので変わらずゆっくりと進んでいく。
「でもアス。いつの間に精霊召喚なんて覚えたの?」
「……そう。ずっと図書館にいたって言ってた」
スイとフウがアスを睨む。
属性が違えどずっと同じくらいの実力と思っていた姉妹がいきなり大技を使えるようになっていたらこうもなろう。
「いつって……図書館の本の中にあったから習得しただけだが」
サラッと言うアスに、スイとフウが掴みかかった。
「ずーるーいー! 教えてよー!」
「……教えろー」
掴まれ揺らされ続けるアスはついに折れて
「わかったわかった。ヒノが見つかってからね」
と首を揺らし続けた。
それからしばらくかかったが、リート火山には無事何事もなくついた。
「ついた……けど……」
「あっつい!」
まだ火山の麓にも拘わらず、尋常じゃない暑さであった。
「スイ先輩、水魔法は……?」
アモルが水を求め冗談半分でスイに聞く。
しかしスイもきつそうにしながら。
「すぐぬるま湯になっちゃうよ?」
とだけ返した。
「本当にヒノはここにいるのか?」
アスが一見冷静そうな表情で呟く。しかし顔は汗だくであった。
「エリスさんが言ったので間違いはないと思いますけど……」
そう言いながら先に進んでいくアモルの前に看板が見えた。
「看板だけど……」
「左って書いてあるけど……」
「あまり綺麗じゃないね……」
アモル、シオン、エレテがそれぞれ突っ込む。
しかしそれを見て姉妹たちが「あーっ」と叫んだ。
「その汚い字!」
「……間違いない」
「ヒノの字だ」
「そ、そうなんですか……」
それから少し歩くごとに、雑な看板が置いてあり、アモルたちを案内する。
そしてついに洞窟のような穴を見つけた。
「ここみたいだ」
「そうだけど……」
火山内ということもあり、熱気がさらに増していた。
ここに入るのは骨が折れる。
「けど……行くしかない」
アモルは覚悟を決め一歩一歩洞窟へと入っていく。
「……」
暑さもありアモルたちは無言のまま洞窟内を進んでいく。
所々に溶岩が見え、とても人が入って持つ場所ではない。
「……っ。あ、あれ」
道を抜け、他より広い一角に出たアモルたち。そこには……。
「ヒ、ヒノ先輩!」
奥に見える滝でヒノが滝に打たれていた。
「ん?」
声に気づいたようにヒノが目を開ける。
「おお! アモルじゃねえか! それにみんなも!」
ヒノが水から上がってくる。
「っていうかみんな揃ってるってことは、オレが最後かよ!」
「いや普通、火山にいるなんて思いません……」
アモルは暑さで乾いた声で突っ込む。
「ああ、アモル、みんなも。水が欲しいならそっちのを飲むといいぜ」
ヒノが指した先に確かに水が湧き出ている場所がある。
「でもこれ熱いんじゃ……」
「いいから!」
ヒノが背中を勢いよく叩いたので、アモルは水に突っ込んだ。
「って冷たい!?」
「何故かわかんねえけど、ここで唯一冷たい水だ。たっぷり飲めよ」
言われるまでもなく、皆一気に水を飲む。
「ぷはぁ。生き返るー!」
「ふむ。火山のこんな位置でこれほど冷たい水が出るとは……?」
スイが水を楽しみ、アスは何故?と疑問に思う。
「ところでヒノ先輩はもしかして……」
「おう! ここで修業してたんだ!」
ヒノがグッと指を上げる。
「成果はバッチリみたいですね」
「まあな! 外に出たら見せてやるよ!」
「帰りがまた大変ですけどね……」
また溶岩だらけの洞窟内を戻ると考えると、アモルはやる気を失いそうになる。
「心配すんな! 帰りは楽だぜ!」
こっちだ、とヒノが案内する。
そこは先程ヒノが打たれていた滝であった。
「みんな! 早く入れよ!」
「えっ、このまま?」
ヒノは先程打たれていた時もそうだが、服のまま滝へ入っていく。
仕方なく、アモルや皆もそのまま滝の流れる水に入った。
「よし、みんな入ったな。息を吸っておけよ」
そう言うとヒノは滝の中にある何かを押した。
「え?」
突然、床が開き、アモルたちは流されるように落ちていく。
「なにー!?」
「ははっ、おもしれーだろ!」
その流れていく様は、現実世界のウォータースライダーがこんな感じなんだろうなとアモルは思いながら流れていく。
しばらく流れるとひとつの水溜りに流れ落ちる。
その水はちょうどいいくらいの暖かさだ。すぐにアモルは気づいた。
「温泉だ!」
アモルの言葉に皆それぞれ反応する。
「温泉? これが……?」
「聞いたことがあるよ。地中から湧く暑いお湯。それの気持ちよいくらいの温度があるって」
「へー、これ温泉って言うのか」
「気持ちいいね」
それからしばらく、皆、服のまま温泉を満喫するのであった。
アモルたちの上空から、妖しい声が響きわたる。
「この声は……」
「アーマ!」
上空からアーマが見下ろしていた。
「久しぶりね。そうでもないかしら?」
アーマは見下ろしながら、アスに気が付いた。
「あら~。アスちゃんもいる」
「……悪いかな」
アスも眼鏡を光らせアーマを睨み返した。
「そうねえ。私にとっては悪いわねえ。
ヒノちゃんまで戻ってくるとエレメント家の四姉妹が戻るし……
それは面倒ねえ」
それでも余裕そうに見えるアーマに、アモルは言った。
「エレメント家の四属性がかつてのお前を滅ぼしたから」
「!?」
アモルの言葉にアーマは珍しく大きく反応した。
「な、何故それを……」
「何故って……それが知られるのを恐れて、こうして世界図書館を攻撃したんだろ?」
アーマはそれを聞き、すぐに自分が優位と言いたげな表情に戻る。
「フフ、そうよ。エレメント家からこっちに来ないと思ったら世界図書館に向かってるんですもの。
でも昔から結界の越え方がわからなかった」
そして高笑いする。
「そしたら丁寧にアモルくんたちが攻略してくれるんですもの。こんなに笑える事はないわ!」
だがアモルの表情は崩れない。
「確かにそこは僕たちのミスだ。結果、図書館にモンスターが入り込んでしまった。けど……」
アモルが後方の、図書館があった方を指す。
「図書館がこうなること。そして僕が情報を知ってしまったことは痛手じゃないかな?」
「くっ……」
アーマの顔が怒りの表情になっていく。
「なら……ここで貴方をやればいいだけの事よ。アモルくん!」
アーマが怒りのまま大鎌を取り出し突撃してくる。
アモルも戦闘態勢を取ろうとして、アスが前に出た。
「アス先輩……?」
「アモル。ここはボクに任せてくれないか?」
以前だったら断るところだったが、アモルはアスの自信ありげな表情を信じることにし大きく頷いた。
「よし」
アスが杖を構える。だが既にアーマは接近している。
「遅い!」
アーマの大鎌がアスに振り下ろされ……なかった。
「こ、これは!?」
地面から生えた巨大な岩の手がアーマの大鎌を掴み、アスへの攻撃を防いでいた。
「いでよ、大地に宿る岩の意思……『ゴーレム』!」
アスの目の前、アーマの真下の地面が大きく膨らんでいく。
地面が割れ岩の化身『ゴーレム』が出現する!
「精霊召喚だと!?」
アーマは驚きながら、ゴーレムの巨腕に掴まれ投げ飛ばされた。
「今の内だ、アモル!」
「はい!」
アモルはすぐに魔法の絨毯を広げると皆を乗せ飛び立つ。
アーマが追おうとするが巨大なゴーレムが行く手を塞ぎ通さない。
「くっ……おのれ……!」
アーマは目の前のゴーレムを壊すまで戦うしかなかった。
絨毯の速度は一定なので変わらずゆっくりと進んでいく。
「でもアス。いつの間に精霊召喚なんて覚えたの?」
「……そう。ずっと図書館にいたって言ってた」
スイとフウがアスを睨む。
属性が違えどずっと同じくらいの実力と思っていた姉妹がいきなり大技を使えるようになっていたらこうもなろう。
「いつって……図書館の本の中にあったから習得しただけだが」
サラッと言うアスに、スイとフウが掴みかかった。
「ずーるーいー! 教えてよー!」
「……教えろー」
掴まれ揺らされ続けるアスはついに折れて
「わかったわかった。ヒノが見つかってからね」
と首を揺らし続けた。
それからしばらくかかったが、リート火山には無事何事もなくついた。
「ついた……けど……」
「あっつい!」
まだ火山の麓にも拘わらず、尋常じゃない暑さであった。
「スイ先輩、水魔法は……?」
アモルが水を求め冗談半分でスイに聞く。
しかしスイもきつそうにしながら。
「すぐぬるま湯になっちゃうよ?」
とだけ返した。
「本当にヒノはここにいるのか?」
アスが一見冷静そうな表情で呟く。しかし顔は汗だくであった。
「エリスさんが言ったので間違いはないと思いますけど……」
そう言いながら先に進んでいくアモルの前に看板が見えた。
「看板だけど……」
「左って書いてあるけど……」
「あまり綺麗じゃないね……」
アモル、シオン、エレテがそれぞれ突っ込む。
しかしそれを見て姉妹たちが「あーっ」と叫んだ。
「その汚い字!」
「……間違いない」
「ヒノの字だ」
「そ、そうなんですか……」
それから少し歩くごとに、雑な看板が置いてあり、アモルたちを案内する。
そしてついに洞窟のような穴を見つけた。
「ここみたいだ」
「そうだけど……」
火山内ということもあり、熱気がさらに増していた。
ここに入るのは骨が折れる。
「けど……行くしかない」
アモルは覚悟を決め一歩一歩洞窟へと入っていく。
「……」
暑さもありアモルたちは無言のまま洞窟内を進んでいく。
所々に溶岩が見え、とても人が入って持つ場所ではない。
「……っ。あ、あれ」
道を抜け、他より広い一角に出たアモルたち。そこには……。
「ヒ、ヒノ先輩!」
奥に見える滝でヒノが滝に打たれていた。
「ん?」
声に気づいたようにヒノが目を開ける。
「おお! アモルじゃねえか! それにみんなも!」
ヒノが水から上がってくる。
「っていうかみんな揃ってるってことは、オレが最後かよ!」
「いや普通、火山にいるなんて思いません……」
アモルは暑さで乾いた声で突っ込む。
「ああ、アモル、みんなも。水が欲しいならそっちのを飲むといいぜ」
ヒノが指した先に確かに水が湧き出ている場所がある。
「でもこれ熱いんじゃ……」
「いいから!」
ヒノが背中を勢いよく叩いたので、アモルは水に突っ込んだ。
「って冷たい!?」
「何故かわかんねえけど、ここで唯一冷たい水だ。たっぷり飲めよ」
言われるまでもなく、皆一気に水を飲む。
「ぷはぁ。生き返るー!」
「ふむ。火山のこんな位置でこれほど冷たい水が出るとは……?」
スイが水を楽しみ、アスは何故?と疑問に思う。
「ところでヒノ先輩はもしかして……」
「おう! ここで修業してたんだ!」
ヒノがグッと指を上げる。
「成果はバッチリみたいですね」
「まあな! 外に出たら見せてやるよ!」
「帰りがまた大変ですけどね……」
また溶岩だらけの洞窟内を戻ると考えると、アモルはやる気を失いそうになる。
「心配すんな! 帰りは楽だぜ!」
こっちだ、とヒノが案内する。
そこは先程ヒノが打たれていた滝であった。
「みんな! 早く入れよ!」
「えっ、このまま?」
ヒノは先程打たれていた時もそうだが、服のまま滝へ入っていく。
仕方なく、アモルや皆もそのまま滝の流れる水に入った。
「よし、みんな入ったな。息を吸っておけよ」
そう言うとヒノは滝の中にある何かを押した。
「え?」
突然、床が開き、アモルたちは流されるように落ちていく。
「なにー!?」
「ははっ、おもしれーだろ!」
その流れていく様は、現実世界のウォータースライダーがこんな感じなんだろうなとアモルは思いながら流れていく。
しばらく流れるとひとつの水溜りに流れ落ちる。
その水はちょうどいいくらいの暖かさだ。すぐにアモルは気づいた。
「温泉だ!」
アモルの言葉に皆それぞれ反応する。
「温泉? これが……?」
「聞いたことがあるよ。地中から湧く暑いお湯。それの気持ちよいくらいの温度があるって」
「へー、これ温泉って言うのか」
「気持ちいいね」
それからしばらく、皆、服のまま温泉を満喫するのであった。