学園、そして大陸を巻き込んだ大災厄から三年……。
空は闇に覆われ、地上はモンスターが跋扈し、人々は脅かされていた。
「ううっ……ラヴ……」
とある海辺の村の家の一室。ベッドの上でアモルはうなされていた。
それを見守る一組の老婆と青年。
「なあ、婆さん。まだこいつを見てやるのか? もう三年も目を覚まさずうなされ続けてるんだぜ?」
「しかしねえ。見捨てるわけにもいかないでしょう?」
老婆は、アモルの額に置いている濡れた布を取り換える。
「それに……私の勘だとそろそろ目覚めてくれる気がするんだよ」
「それも言い続けて二年くらいだけどな……」
青年はやれやれと首を振った。
そこに、駆け込んでくる別の男性。
「二人とも、またモンスターの群れが来たぞ。早く避難穴へ!」
「ちっ、またかよ。婆さん!」
「はいはい。わかってますよ」
青年たちがアモルを担ぎ、老婆はゆっくりと避難穴へ向かもうとする。しかし――
「グアアアッ!」
「げっ、もうこんな所までモンスターが!」
青年たちと老婆は別の道に向かおうとするが……。
「ガアアアッ!」
「うわっ、こっちにも!?」
「おいおい、囲まれてるぜ……」
モンスターの群れはいつの間にか村中に入り込んでいた。
「おいおい、こんなに入り込んでるなんて聞いてないぞ……」
「……婆さん。あんたは嫌がるだろうが手段がないこのガキを……」
「まさか……囮にする気かい!?」
「それしか……ねえだろ!」
青年二人は勢いをつけると、モンスターの群れの一角にアモルを投げ捨てる。
「ガアッ?」
モンスターの群れがアモルに気を取られている隙に、青年たちは老婆を担ぎ走り出した。
「グルル!」
モンスター数匹がアモルを喰らおうと近づいていく。
その手がアモルに伸びようとしたところで、光が走った。
「な、なんだ!?」
その光に、逃げていた青年たちも振り向いて驚く。
光が収まると、そこにはモンスター数匹を蹴散らすアモルの姿があった。
「……ここは? 『僕』はいったい……」
アモルの姿は三年で成長。背は大きくなり、声は少し低くなっていた。
「お、お前さん。目が覚めたのかい?」
背負われている老婆が声を掛ける。
しかしアモルには何のことかわからない。
「この婆さん、ずっと眠っていたお前の面倒を見てたんだぜ? 三年もな」
「三年……」
「そ、それより!」
青年が周りを指す。
そう、モンスターの群れはまだ残っている。
「わかっています。貴方たちはそこに」
青年たちの前から、アモルの姿が消える。
消えた、と思った数秒後には、モンスターの群れは崩れ去っていた。
「な、なんだ……? お前、何者だ?」
戻ってきたアモルに、青年たちは驚きながら質問する。
「僕は……アモル。学園の生徒です」
モンスター騒動が収まり、老婆の家でアモルは自身の事情を話すとともに、
この三年で起きたことを聞いていく。
「三年前、お前の言う学園で事件が起きた。それはわかるな?」
「モンスターの襲来。嵐の猛威。ですか?」
「それだけじゃない。ものすごい魔力の大爆発が起きたんだ」
「魔力の……大爆発……?」
アモルはすぐに思い出し気づく。
アーマの攻撃から自分を守ろうとしたラヴ。
そのラヴの防御とアーマの攻撃がすさまじい爆発を引き起こしたのだと。
「そ、その後は? どうなったんですか?」
「学園は崩壊した。……したんだが」
「だが?」
「これは見た方が早いだろ。ちょっと来い」
青年の片方がアモルを呼び、家の屋根に登る。
そこから大陸中央に見える景色にアモルは驚いた。
「あれは……!?」
遠くのはず。
なのに『それ』ははっきりと見えていた。
「あれは……いったい……?」
「わからん。だがあそこが、お前の言う学園だった場所だ」
「な……?」
地図はないのであそこが本当に学園かはわからない。
だがこんな状況で青年や老婆が嘘を言う理由はない。
「戻るぜ」
青年が先に家に戻っていく。
「……あそこが学園……」
アモルに三年前の思い出が浮かんでいく。
ラヴが、シオンが、エレテが、ヒノが、スイが、フウが、アスが、頭に浮かんでは消えていく。
「でだ。学園が崩壊して『あれ』が出現して以来、この大陸はモンスターが大量発生」
「ここだけじゃなく、いろんな町、村が襲われてるってわけだ」
「そんなことが……」
これもアーマの仕業なのだろうか、と考えつつ、アモルは別の話に移る。
「あの、お婆さん。あなたが僕を助けてくれたって聞きましたが」
「ああ、そうだよ。川に洗濯に行ったらね、ボロボロのお前さんが流れてきたんだよ」
「助けてくれてありがとうございます。それで、あの、他にはいませんでしたか? 女の子が」
「ううん、残念だけどお前さんだけだねえ」
「そうですか……」
「もう行くのかい?」
「はい。お礼もできずに申し訳ないですが、僕はみんなを探しに行かなきゃならないんです」
そうかい、と老婆は頷くとひとつの袋を差し出した。
「これは?」
「食料と薬だよ。お前さんが強いのは昨日でわかってるけど、食料がないとね」
「お婆さん……。ありがとうございます! みんなを見つけたらお礼をしにきます」
「ほっほっ、待ってるよ」
老婆に手を振り、アモルは村を旅立つ。
いきなり学園跡に乗り込むのはさすがのアモルもしなかった。
老婆に教えてもらった道を頼りに、村と町を巡りみんなを探すのを最初の目的とした。
「いやあ、すまないね。助けてもらって」
「いえ。こちらも乗せてもらってありがとうございます」
途中、モンスターに襲われていた行商人を助け、
お礼に馬車に乗せてもらい、アモルは一番近い村にたどり着いた。
その村の人たちに聞いて回るも、村には誰も来ていない。
だが一人の村人がアモルに声を掛ける。
「あんた、アモルって言うんだって? 何日か前にいたよ。『アモルを探してる』って子」
「本当ですか!?」
「ああ。町に向かったはずだからもしかしたら追いつけるかもね」
「ありがとうございます!」
アモルは村を駆け出ていく。
「あの小僧……生きていたのか……」
それを見ている謎の人物に気が付かずに。
空は闇に覆われ、地上はモンスターが跋扈し、人々は脅かされていた。
「ううっ……ラヴ……」
とある海辺の村の家の一室。ベッドの上でアモルはうなされていた。
それを見守る一組の老婆と青年。
「なあ、婆さん。まだこいつを見てやるのか? もう三年も目を覚まさずうなされ続けてるんだぜ?」
「しかしねえ。見捨てるわけにもいかないでしょう?」
老婆は、アモルの額に置いている濡れた布を取り換える。
「それに……私の勘だとそろそろ目覚めてくれる気がするんだよ」
「それも言い続けて二年くらいだけどな……」
青年はやれやれと首を振った。
そこに、駆け込んでくる別の男性。
「二人とも、またモンスターの群れが来たぞ。早く避難穴へ!」
「ちっ、またかよ。婆さん!」
「はいはい。わかってますよ」
青年たちがアモルを担ぎ、老婆はゆっくりと避難穴へ向かもうとする。しかし――
「グアアアッ!」
「げっ、もうこんな所までモンスターが!」
青年たちと老婆は別の道に向かおうとするが……。
「ガアアアッ!」
「うわっ、こっちにも!?」
「おいおい、囲まれてるぜ……」
モンスターの群れはいつの間にか村中に入り込んでいた。
「おいおい、こんなに入り込んでるなんて聞いてないぞ……」
「……婆さん。あんたは嫌がるだろうが手段がないこのガキを……」
「まさか……囮にする気かい!?」
「それしか……ねえだろ!」
青年二人は勢いをつけると、モンスターの群れの一角にアモルを投げ捨てる。
「ガアッ?」
モンスターの群れがアモルに気を取られている隙に、青年たちは老婆を担ぎ走り出した。
「グルル!」
モンスター数匹がアモルを喰らおうと近づいていく。
その手がアモルに伸びようとしたところで、光が走った。
「な、なんだ!?」
その光に、逃げていた青年たちも振り向いて驚く。
光が収まると、そこにはモンスター数匹を蹴散らすアモルの姿があった。
「……ここは? 『僕』はいったい……」
アモルの姿は三年で成長。背は大きくなり、声は少し低くなっていた。
「お、お前さん。目が覚めたのかい?」
背負われている老婆が声を掛ける。
しかしアモルには何のことかわからない。
「この婆さん、ずっと眠っていたお前の面倒を見てたんだぜ? 三年もな」
「三年……」
「そ、それより!」
青年が周りを指す。
そう、モンスターの群れはまだ残っている。
「わかっています。貴方たちはそこに」
青年たちの前から、アモルの姿が消える。
消えた、と思った数秒後には、モンスターの群れは崩れ去っていた。
「な、なんだ……? お前、何者だ?」
戻ってきたアモルに、青年たちは驚きながら質問する。
「僕は……アモル。学園の生徒です」
モンスター騒動が収まり、老婆の家でアモルは自身の事情を話すとともに、
この三年で起きたことを聞いていく。
「三年前、お前の言う学園で事件が起きた。それはわかるな?」
「モンスターの襲来。嵐の猛威。ですか?」
「それだけじゃない。ものすごい魔力の大爆発が起きたんだ」
「魔力の……大爆発……?」
アモルはすぐに思い出し気づく。
アーマの攻撃から自分を守ろうとしたラヴ。
そのラヴの防御とアーマの攻撃がすさまじい爆発を引き起こしたのだと。
「そ、その後は? どうなったんですか?」
「学園は崩壊した。……したんだが」
「だが?」
「これは見た方が早いだろ。ちょっと来い」
青年の片方がアモルを呼び、家の屋根に登る。
そこから大陸中央に見える景色にアモルは驚いた。
「あれは……!?」
遠くのはず。
なのに『それ』ははっきりと見えていた。
「あれは……いったい……?」
「わからん。だがあそこが、お前の言う学園だった場所だ」
「な……?」
地図はないのであそこが本当に学園かはわからない。
だがこんな状況で青年や老婆が嘘を言う理由はない。
「戻るぜ」
青年が先に家に戻っていく。
「……あそこが学園……」
アモルに三年前の思い出が浮かんでいく。
ラヴが、シオンが、エレテが、ヒノが、スイが、フウが、アスが、頭に浮かんでは消えていく。
「でだ。学園が崩壊して『あれ』が出現して以来、この大陸はモンスターが大量発生」
「ここだけじゃなく、いろんな町、村が襲われてるってわけだ」
「そんなことが……」
これもアーマの仕業なのだろうか、と考えつつ、アモルは別の話に移る。
「あの、お婆さん。あなたが僕を助けてくれたって聞きましたが」
「ああ、そうだよ。川に洗濯に行ったらね、ボロボロのお前さんが流れてきたんだよ」
「助けてくれてありがとうございます。それで、あの、他にはいませんでしたか? 女の子が」
「ううん、残念だけどお前さんだけだねえ」
「そうですか……」
「もう行くのかい?」
「はい。お礼もできずに申し訳ないですが、僕はみんなを探しに行かなきゃならないんです」
そうかい、と老婆は頷くとひとつの袋を差し出した。
「これは?」
「食料と薬だよ。お前さんが強いのは昨日でわかってるけど、食料がないとね」
「お婆さん……。ありがとうございます! みんなを見つけたらお礼をしにきます」
「ほっほっ、待ってるよ」
老婆に手を振り、アモルは村を旅立つ。
いきなり学園跡に乗り込むのはさすがのアモルもしなかった。
老婆に教えてもらった道を頼りに、村と町を巡りみんなを探すのを最初の目的とした。
「いやあ、すまないね。助けてもらって」
「いえ。こちらも乗せてもらってありがとうございます」
途中、モンスターに襲われていた行商人を助け、
お礼に馬車に乗せてもらい、アモルは一番近い村にたどり着いた。
その村の人たちに聞いて回るも、村には誰も来ていない。
だが一人の村人がアモルに声を掛ける。
「あんた、アモルって言うんだって? 何日か前にいたよ。『アモルを探してる』って子」
「本当ですか!?」
「ああ。町に向かったはずだからもしかしたら追いつけるかもね」
「ありがとうございます!」
アモルは村を駆け出ていく。
「あの小僧……生きていたのか……」
それを見ている謎の人物に気が付かずに。