ジュージューと香ばしく肉野菜の焼ける音。串焼きもそうだが、ファナがリクエストしたジンギスカンも美味しそうだ。

専用の鍋と言うのはなかったから、ホットプレートのやうな大きなフライパンで野菜と一緒に蒸し焼きにすることにしたのだけど。

「ん~~っ、お肉おいひぃれす~~!」
「うん……おいしい……こう言う味だったんだ……」
「え……っ!?」
ファナが驚いたようにこちらをみる。

「いや、あんまり食べさせてもらえなかったから……」
「ソラが日本にいたのって……いつですか!?昭和!?まさか明治!?」

「いやんなわけは……っ!」
何故そこに……!?

「普通に令和だけど」
「私もですね」

【因みにそこら辺のタイムラグは異世界だからってことで流してね。君らだいたい同じ時代の生まれ育ちー】
あ、創世神!

「てめぇ、また勝手に干渉してんじゃねぇよ。喧嘩売ってんのかコラ」
いや、レヴィラス恐いって。目がマジだもの。しかし……まぁ嫉妬深いと言えば……そうなんだよね。

【ワンポイントアドバイスしただけなのに……およよ……】
何かかわいそうになってきた~~。

【やっぱりソラくん天使?ねぇマイエンジェル?】

「誰がお前のエンジェルだ……あ゛ん……?」
【何このずっと反抗期嫌゛――――――っ!】
全く……相変わらずなんだから……。

「あ、そうだ、あの話……!」
創世神から先ほどお願いされたのだ。

野菜やお肉を焼いて食べつつも、先ほどの創世神からの話をみんなに話したところ……。

「また何勝手にやってんだオイ……っ」
【ひぃーっ!?食いちぎられた腕の痛みがまた蘇ってくるぅ~~っ!!!】

レヴィラスが再びお怒りモードであった。まぁ予想はついていたのだけど。てか、創世神の腕はもうちゃんと生え代わったじゃん。

【そゆ問題と違う――――――!】
「創世神さまの腕?何の話ですか?」

「あー、レヴィったら昔もっとやんちゃしてて、創世神の腕食いちぎったんだよ。まぁ創世神だからね、腕はもう一度生えてきたけど」
と、レイン。まぁそこら辺の話はレヴィラスの伝説では有名かもなぁ。

「カッコいいですぅ!さすがは我が推し神レヴィラスさま!!竜族の元にいた頃には知らなかった伝説が、まだまだあるなんて……!やーっぱり眷属になって得しましたねぇ~~」
「ふんっ、そのくらい朝飯前だ」
ファナのファンコールにレヴィラスはさらりと答えるが……。

【やめてーっ!朝飯前に腕食いちぎられたらさすがに創世神も疲れるのぉっ!結構体力使うんだから!HP……と言うかGPつかうのぉっ!!】
GP……?神さまポイント……?初めて聞いたけど。
(ひら)(がみ)限定ポイントなのかな。少なくとも現し神はHPである。まぁ人間に簡単には削れるものではないんだが。

「あ、そうだそれがいい……」
レヴィラス……?

「やれってーんなら……お前の腕な」
【はい――――――――っ!!?】

「こらレヴィラス。穏便にスローライフするだけなんだから」
「でもソラ……」

【そうだよ破壊の力ましましになっちゃうじゃん!!】
「元々はてめぇが言ってきたことじゃねぇか」
まぁ、お願いしてきたのは創世神なんだけど……。

「しかし、そうであるな……。やらねばソラを不快にしたあのような勇者パーティーがまた来るやもしれぬぞ」
と、ヴィオル。
「扉を封じたとは言え……また現し神に下克上されたら開くかもしれないわねぇ~~」
スノウまで!?
しや、でもなくはない……?

【まぁ世界って……時に意図しないものが生まれたりするもんだからねぇ】
魔神しかり、レヴィラスたちしかりだ。

「相当やらかしてくれたようだし……ソラを不快にさせるやつらを阻むってことなら、確認に行ってもいいんじゃない?まだ廃棄してなければ壊しちゃえ」
……と、レインも。不快……まぁそうかな。ファナに向けてた感情は嫌なものだった。俺を知っていると言う勇者は正直覚えていないのでなんともいえないが。

「まぁ……それなら」
レヴィラスも最終的には納得してくれたみたいだ。

【わーいわーい】
創世神ったら子どもみたいに……。いや、レヴィラスに睨まれて沈黙したけど。
ほんとどっちが親なんだか。

「そう言えば……レヴィラスってあの勇者たちの教育依頼されてなかった?」
結局レインが牽制してくれてなくなったのだけど。

「あぁ、それ違う違う。ヴィオルに見せてもらった勇者パーティーじゃないよ」
と、レイン。

「そうなの?」
【そうそう、彼らは我が正規に召喚した勇者パーティー。まぁその教育レヴィラスやレインガルシュにやらせようとしたことはさすがに我もカチンと来たからさぁ。レインガルシュが忠告した後、我も神殿にお怒り通信送っといたよ】
あぁ、創世神からも送ってくれたのか。

「ならもう少し早く言えや。ソラに会えるのが遅れただろうが……っ!」

そしてレヴィラスもお怒りモードっ!?

【やーんっ、やめてよ~~んっ!創世神そんなホイホイ地上に干渉できない~~!まぁ、レヴィラスをソラくんから引き剥がそうとしたのはこの世界の維持的に完全アウトだから干渉したけどさ】
「そうだよ、レヴィラス。だから……現し神も地上にいるんだし」
「……まぁな」

「結局は創世神も言ってくれたんだし」
「ん……まぁおせーけど」

【ぐ……っ。でも世界の平和が守られたのでよしとしない!?していいと思うんだ……!】

「だねぇ~~」
あの緊迫とした現場を治めた張本人なんだが。レインはいつものようににへら~っとしながら告げる。

「また問題起こされる前に、見に行くのもありだよね」
「うん、まぁね」

「今日のところは腹ごしらえ。特に毎日やることもないし、早速明日行っとく?」
と、レイン。
まぁ……さしてやることも……スローライフしか決まってないし。スローライフのためにも、早めに手をつけた方がいいのかもしれない。

「うん。俺はそれでいいよ。レヴィラスは?」
「ソラが行くなら、俺も行く」
「じゃぁ決まりだね。スノウとヴィオルはこっちにいる?」

「そうねぇ。みんなで行ったらさすがに人間たちもびっくりよね」
「人間の街はあまり得意ではないからな……レインがいるのであれば、任せましょう」
うん、レインがついてるなら道案内とか、保護者的な面でもいいかも。
今のこちらの街のこととかは俺もよく知らないし。

「じゃぁファナはこっちでスノウたちと……」
ブランやグレイもいるんだし寂しくはないかと……。

「私も行きます!」
「え、いいの?」

「レヴィラスさまの破壊活動をこの目に焼き付けることこそ務め!」
何の務めなのそれ!?てか破壊活動しに行く訳じゃないし、それだとしゃれにならないことになる!

「あと美味しいもの食べたい!」
「それが本音なのでは……。あれ、でも俺お金ないよ?ファナは……」
いくらか持ち合わせているのだろうか?

「ふぅ……竜巫女は小遣いすらもらえないのですよ。レヴィラスさま推しグッズも配給物をリサイクルして何とか作る毎日……金が、ねぇんだよ……」
何か虚しい!?切実ぅっ!それでも推しグッズ作ってたのはすごいけど……!

「竜族って……お金使わないとかないよね?」
「金品は大好きな種族であるぞ」
ヴィオルから衝撃の言葉。

「竜族の地でも通貨は使えるはずだよ?そこら辺は世界中に広まった冒険者や商業ギルドが広めてるからね。その土地ならではの通貨があっても両替できるはず。竜族は特に……特徴的な通貨のある土地ではなかったはずだけど」
レイン詳しい……!さ、さすが人間の文化に近しい現し神なだけある!

「おんどれ竜族どもめぇっ!!」
ファナの竜族への怒り甚だしいな。

「まぁお金はあるから大丈夫。2人のステータスにもいくらかいれとくから、何かあったら使ってね」

「ステータス、そんなことまでできるの?」
「うんうん、電子通貨ってやつー。ギルドで換金もできるし、買い物もできるから」
すごい……!この世界ついにそんなものまで……!

【ふふふ……だてに召喚者招いている訳じゃないのだよ……!】
「調子に乗るな」
【ひぅんっ】
レヴィラスったらまた威嚇を……。

「でも……ソラが楽しそうにしてるから……いい」
れ、レヴィラスったら~~っ!

「推し神が、尊い……!」
「明日楽しみだねぇ~~」
うん……そうかも。人混みは少し恐いけど、みんなが一緒なら。