【ならば授けようではないか……!】
「え……なんですか!?この天の声みたいなイベントは……!」
いや、イベントと違う――――――。
「いや、本当の天の声……かな?」
天界で暮らしているはずだし。
「お知り合いなのですか……!?」
「え?あぁ――――……、うん?」
知り合いと言っていいのだろうか。前世と前前世の知り合い……なのだが。
【君は謙虚だな。二代目などいきなり顎でこき使っていたと言うのに……!】
えぇ――――――――っ!?何してんの、前の俺ぇ――――――――。記憶が全て戻ったわけじゃないから……。
【まぁこの世界に来てまだ間もない。少しずつ思い出していけばよい】
「は……はい……!」
【だけど少しは我にも優しくして欲しい……!これでも創世神頑張ってるのおぉぉ――――……っ!】
何か切実なんだけどぉ――――――っ!?
「そ……そうせー……?」
「この世界の一番偉い啓き神だよ」
俺の言葉に、ヴィオルとスノウも頷く。
「啓き神って……?」
(何でしょう……?)
こてんと首を傾げるファナ。
いやいや、ちょっと待って……!?
「竜族何教えてんのヴィオル!ファナの待遇も疑問に思うし……!」
ここは竜族の神さまを問い詰めるしかない……!
「ははははは、神話を語り継いできた竜族も堕ちたものであるな……!」
笑い事かい――――――っ!
「ファナ、この世界は天界、地上、冥界に分かれていて、それぞれの世界に3種類の神がいるんだよ。天界に住まう神を啓き神、冥界に住まう神を隠り神、地上に住まう神の種族を現し神。啓き神は一番高位の存在だけど地上に干渉できることに限りがある。隠り神もまた、地上の魂を管理するけれど、干渉は限られている。ただし地上に住まう現し神は、地上に暮らすひとびとに一番近い位置にいて、その願いを叶える見返りに対価を要求する……。まぁ厳密に神と言うよりも……神である種族に近い存在だけど……今はとにかく啓き神。その中でも創世神は一番偉いんだ」
【えっへん!】
「調子に乗ってるとレヴィラスにまた舌打ちされるであるな」
「そうよ。この世界の危機よ」
と、ヴィオルとスノウ。容赦ないなぁ……。
啓き神は現し神よりも立場が上だけど、ふたりも含め、ここに集まる現し神は特殊。特にレヴィラスは別格だから。
【……うぐっ。やめてっ!昔の傷抉るのやめてぇっ!!】
「何だかお茶目さんですね~」
「ははは……」
人間の神殿なんかではもう少し威厳があると思うんだけど……。
「でも、異世界との魂のやりとりをしているのは創世神だから、ファナの魂をこちらに導いたのも創世神だよ」
正確には戻ってきた……のだが。それは俺もである。
「あと召喚何かも創世神が管理してる」
「じゃぁあのクソ勇者ども召喚したのも……!?許せませんむっきーっ!」
あ……、そう言えば。てか何で創世神があんな勇者たちをこの世界に招いたんだ……?
勇者パーティーの召喚は世界の摂理だから、創世神が望まなくても招かなきゃいけない。でも誰を招くかは……俺やファナのように選べるはずである。
【いや、勘弁して。レヴィラスの眷属に言われたらしゃれにならないじゃん――――。創世神なんだからちゃんと崇めよとか言ったら……】
「舌打ちされるであるな」
「あのこ未だに反抗期極めてるんだから、また喧嘩になるわよ」
【ヤーメーテー!それ世界の危機……!しれっと言わないの君たちはぁっ!あと、その勇者パーティーを招いたのは我ではないよ】
「え……?創世神以外に誰ができるんですか?」
そんなこと……聞いたことがない。
【召喚は我がするけれど、迎えるのは人間側でしょ?だから招いちゃったんだよ、彼らが神の業を真似し……成功しちゃった……】
「しちゃった……って……っ、現し神じゃあるまいし……」
いや、現し神だからって天界の啓き神の真似事ができる訳じゃない……。
――――――破壊とかはできても。
【恐い思想持たないでぇーっ。また古傷が……っ、がはっ】
「いや、そう言うのは望まないし」
だからこそのスローライフだし。
【それなら安心だけどー】
「でも勇者パーティーの召喚は……」
【それねぇ。我の止める間もなく来ちゃったから、一応地球との魂の行き来は完全に封じてある。時が来たらまた召喚のために開いちゃうけど、念には念を、ね】
勇者パーティーが招かれることは、魔王が地上に定期的に発生するのと同じような、止められない世界の摂理。四季のように巡り続けるもの。
しかし異常気象のように、例外はある。
それが魔神や特殊な現し神の出現で、今は魔神の魂を世界の輪廻の中で循環させることで平穏を保っている。
【まぁ、一応何勝手なことをしたって怒りはしたよ。その業は破棄せよって。だけどどうかなぁ……できれば信頼できる君たちに、王都に見てきて欲しいのだけど】
「それは……」
「レインと一緒ならば安心であろう?」
と、ヴィオル。
「まぁ……いろいろ知ってそうだし」
【レヴィラスも連れていってくれ。あれは歩く危険物だが、物理でも精神でも壊せぬものも壊すし、君の頼みなら自分の意思で破壊もできる】
つまり対価を必要とせず……。俺の眷属神だから。いや、完全に必要ないわけじゃなくて……今までは代わりを与えていた。そしてその代わりを与えることで、かつて世界は崩壊を免れた。
「……おい、誰が歩く危険物だ」
【びっくーんっ!?】
ひどく不機嫌な声と共に、隣に並んだのは。
「レヴィラス!」
「ソラ。このクソ神に何か言われたのか?」
く……クソ神って……。そう言う面ではファナとよくも悪くも合ってるな。
【あぁ――――んっ!魂は高潔オブ高潔なはずなのにぃ――――――――っ】
まぁ……推し神を推す魂は高潔だと思うよ。
「あの……お肉は……」
「狩ってきたよ~~!今闇の狭間から出すから」
と、答えたのはこちらに歩いてきたレイン。
や、闇の狭間……。異世界ファンタジーでよくあるマジックボックスみたいなものなのだが……レインの場合は闇の狭間なんだよね……。容量無限大なうえに、普通は生きたものを入れられないのだが……レインの闇の狭間になら……閉じ込められると言うヤバい代物。
そして場合によっては闇に呑み込み供物としてしまう……が。
「よいせっと」
今は完全に便利なマジックボックス化してる。
レインは一瞬で大量の獲物を地面にどーんと積み上げる。
「すごいね、こんなに……!しかも早いし」
「これくらい一瞬で呑み込むから~~」
あ……うん。レインなら獲物を見つけたら闇で呑み込めば一瞬である。
「レヴィラスも手伝ってくれたからね~~」
「ん、うまそうなの狩ってきた」
「ありがとう……!」
見た目は……普通の獣じゃなくて結構なキメラ感あるけどね……!
「……で、創世神は何で勝手にソラに干渉してんだ?」
レヴィラス、目!目がめっちゃ闇宿してる!!
【いやん、そんな睨まないでよ~~、創世神、君とレディに便利なあぷり入れてあげたんだから!】
「あ……そう言えば……!」
もともとはそうだった……!
「あ、あぷりって、あれですよね。スマートフォンとかの」
【そうそう、創世神もよく分かってないけどね】
ドテッ。
「どんなアプリなんですか?魔法端末に入れるとか……?でも私は持っていませんよ?」
と、ファナ。分かる……何となく……!ファナは確実にこの手のことに詳しい……!
【君たちのステータスに、地球のネットを繋げました!!】
「え……できるの……!?」
「じゃぁゲームもできますか……!?」
【いや、ゲームはできないかな……。こちらの世界からは干渉できないからさ。できるのはネット検索のみ】
「クソ神がぁ――――――――っ!」
ファナが崩れ落ちる。
「ほんとな」
と、レヴィラス。あの……厳しすぎない?
【ソラくんの優しさが胸にしみる】
「そ……創世神」
「勝手にソラの名を呼ぶな」
「いや、それくらいはいいよ、レヴィラス。創世神なんだから……!それにネット!ネットって一度やってみたくて……」
「ソラ……」
「え、ソラ、ネットやったこと……ない?」
ファナが驚愕していた。
「あー……授業とかで触ったり、やってるのを見たりしたことなら……。でも基本俺は触らせてもらえなかってし……スマートフォンとかも持たせてもらえなかったから……」
「そ……そんなぁっ」
ファナが再び崩れ落ちる。
「ひど……すぎるっ!私なら耐えられないですぅ~~っ!ネット!ゲーム!ハンドルネーム!!」
いや……ハンドルネームはどうなんだろう……?
「そんな世界に……ソラを……?」
レヴィラスの顔こっわ……!創世神呪いそうな勢いなんだけど……!
「でも帰って来られたし……みんなにも会えたから……レヴィラス」
「……」
俺の言葉にレヴィラスは渋々睨むのをやめたが……。
【ソラくんって天使か何か?】
何言ってんの、創世神。
「ハーパンニーソの天使」
「ショーパンタイツよ!」
レインとスノウの言い争いはどうでもいいので……参加しなくてもいいだろうか。
「それより……使い方は?ステータスって……叫ぶんだったっけ」
何かそんなシステムがあったような……。代々はあんまり使わなかったけど。
「私それは好きです……!ステータス!!」
ファナがいつの間にか復活していた……!
そしてファナが叫べば、ファナの前に半透明なウィンドウが開いた。
「……ステータス?」
俺も叫んでみる。
【《?》つけないでちょっと!】
「あ……うん。ステータス」
そして開かれたその半透明な画面には……俺の名前の側に地球マークがついていた。
【その地球マークを押すとネットが開くから!好きに使ってね~~】
そう言うと創世神からの通信が切れる。
「わぁほんと……!ネットですね!ゲームの最新作も出てます出てます!あ……でもできないんだったぁ――――――――」
がくんと崩れ落ちるファナ。まぁこちらでもゲームのようなことはできるだろうが……命かかってるからな。ゲームオーバーしたらやり直し……にはならないのだ。
「あの……ファナ、とりあえず、タレを作らない?」
「……っ!そうだ……バーベキュー!!」
「うん。レイン、調味料を使ってもいいかな?」
「もちろん。その間俺とレヴィラスで肉捌くよ」
「うん、よろしく」
俺とファナは調味料を、レインとレヴィラスは肉、スノウたちは野菜を担当してくれることになったのだけど。
――――――そう言えば……創世神からお願いされたこともあった。
食事の際にレインたちにも話してみようか。