♢♦♢
~ジニ王国~
グリム達との激しい戦いを終えた七聖天のカル・ストデウス。
カルはその行動に自身でも少々驚いていたが、グリム達を追い続けてからというもの、カルはずっと自身が気にかかっていた事を無意識の内にグリムに尋ねていた。
「おい。お前達は何故世界を滅ぼそうとしている。この行動にも意味があるのか?」
カルの思いがけない問いに、グリムも一瞬驚きの表情を浮かべていた。
「う~ん。どう説明すればいいのか分からないし、アンタが俺の言う事を素直に受け入れてくれるとは到底思えないけどさ、取り敢えず俺達は邪神でもなければ世界を滅ぼそうとなんてしていない。
寧ろこっちはその逆の無理難題を押し付けられて大変な思いしてるんだよ。今からだってまだラグナレク倒さないといけないしさ」
「……成程」
目の前の青年グリムの言葉をしかと聞いたカルは、ずっと心の何処かで引っ掛かっていたモヤモヤがスッと消えた。腑に落ちた様な表情を浮かべた彼は、それ以上言葉を発することなくグリム達の前から去った。
場を後にしたカルが先ず向かった先は、吹っ飛ばされたローゼン神父の元。大の字で倒れ完全に気を失っているローゼン神父を確認すると、カルはそんなローゼン神父を見ながら静かにこう告げた。
「俺は直に奴らとやり合ってハッキリした。ラドット渓谷で初めて奴らの痕跡を見た時からずっと感じていた違和感の正体もな」
カルはそう言いながら再びユリマやグリムの言葉を思い返していた。
**
<――“終焉を退けるのは私達七聖天ではありません……。この終焉の手から世界を救うのは……他でもない、彼らなのです――”>
<――“取り敢えず俺達は邪神でもなければ世界を滅ぼそうとなんてしていない。寧ろこっちはその逆の無理難題を押し付けられて大変な思いしてるんだよ”――>
**
数秒の沈黙の後、カルは僅かに口元を緩めた様に見えた。
そして、気を失うローゼン神父を横目に、カルは静かにその場からも去って行くのだった。
(まさかとは思っていたが、どうやら“見当違いをしていたのはこっち”のようだ。まだ奴らの言い分を完全に受け入れる事は出来ない。だが少なからず奴らの発言と行動は筋が通っていた。
奴らがノーバディやラグナレクを出現させている邪神ならば、確かにこの先から感じるラグナレクを倒すなんてまるで理解不能だ。だがさっきあのグリムとかいう青年が言った通りなら奴らは本当に逆。方法は知らんが奴らもこの終焉に抗っているという事になる。
奴らが終焉を招いている邪神ならば平気で俺達ぐらい殺す筈だが、一切そんな気も感じられなかった。それどころか俺が見た範囲では奴らは1人も殺していない。ラドット渓谷から今の俺達に至るまでの間誰1人としてな。実際に対峙していた時でさえ僅かな殺意も感じられなかった……。
直に接触するまで到底信じられなかったというのに、今では俺の考えも完全に“逆になりつつある”。
とは言っても、まだ裏で俺の知らない何かが動いている。それを明らかにしない事には確証は得られないな。奴らが邪神じゃないと分かった以上“本物の邪神”を見つけ出す他に道はないだろう。
そもそも、邪神と言う存在さえ定かじゃないが……やはり1度王都に戻って本当の真実を見極める必要があるか――)
カルの中で生じていた葛藤。
それが徐々にクリアになってきたようだ。
今までは疑うことなく当たり前の如く国王の命に従ってグリム達を追っていたが、実際にカルが彼らを目の当たりにして直に雰囲気を感じ取り、正面からぶつかった事によって今まで見えていなかった真実が見えてきた。それは不確定な憶測などではなく確かな事実。
どれだけ己が信じて疑わなかった事でさえ、不純物を取り除いて残った物こそが本当の真実である。
それが到底信じ難い事であったとしても、それが答えとなるのだ。
カルもまた、彼が今辿り着こうとしている真実がどれ程彼に衝撃や困惑を与えているかは分からない。しかし、カルは自身の覚悟と決意の元でその道を選んだ。恐らく彼がこれから辿り着く真実は、彼が当初に思っていた事とは想像も出来ないぐらい真逆になるだろう。
だが、カルはそれすらも覚悟の上で決意を固めていた。
全ては今起きている事の真実を知る為。
グリム達が邪神ではないと確信したカルが次に向かう先は王都。真実を確かめる為にはもう全てを知るであろう国王を問うしか術はない。しかしそんな事を国王相手に単刀直入に聞く訳にもいかないと判断したカルは、隠密に国王の情報を探りつつ、全てを知っているであろうもう1人の人間の元へと向かう事を決めたのだった。
「俺のこの考えが正しければ、事態は想像だに出来ない規模で企てられている。先ずは城に戻って情報を集め、他にも真実を知っている者がいないか少し探る必要があるな。
そして……国王と奴ら以外に真実を知っているであろう“ユリマ“に、全てを洗い浚い語ってもらう他ないようだな――」
カルは独り言の様にそう言い、ジニ王国を後にしたのだった――。
~ジニ王国~
グリム達との激しい戦いを終えた七聖天のカル・ストデウス。
カルはその行動に自身でも少々驚いていたが、グリム達を追い続けてからというもの、カルはずっと自身が気にかかっていた事を無意識の内にグリムに尋ねていた。
「おい。お前達は何故世界を滅ぼそうとしている。この行動にも意味があるのか?」
カルの思いがけない問いに、グリムも一瞬驚きの表情を浮かべていた。
「う~ん。どう説明すればいいのか分からないし、アンタが俺の言う事を素直に受け入れてくれるとは到底思えないけどさ、取り敢えず俺達は邪神でもなければ世界を滅ぼそうとなんてしていない。
寧ろこっちはその逆の無理難題を押し付けられて大変な思いしてるんだよ。今からだってまだラグナレク倒さないといけないしさ」
「……成程」
目の前の青年グリムの言葉をしかと聞いたカルは、ずっと心の何処かで引っ掛かっていたモヤモヤがスッと消えた。腑に落ちた様な表情を浮かべた彼は、それ以上言葉を発することなくグリム達の前から去った。
場を後にしたカルが先ず向かった先は、吹っ飛ばされたローゼン神父の元。大の字で倒れ完全に気を失っているローゼン神父を確認すると、カルはそんなローゼン神父を見ながら静かにこう告げた。
「俺は直に奴らとやり合ってハッキリした。ラドット渓谷で初めて奴らの痕跡を見た時からずっと感じていた違和感の正体もな」
カルはそう言いながら再びユリマやグリムの言葉を思い返していた。
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<――“終焉を退けるのは私達七聖天ではありません……。この終焉の手から世界を救うのは……他でもない、彼らなのです――”>
<――“取り敢えず俺達は邪神でもなければ世界を滅ぼそうとなんてしていない。寧ろこっちはその逆の無理難題を押し付けられて大変な思いしてるんだよ”――>
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数秒の沈黙の後、カルは僅かに口元を緩めた様に見えた。
そして、気を失うローゼン神父を横目に、カルは静かにその場からも去って行くのだった。
(まさかとは思っていたが、どうやら“見当違いをしていたのはこっち”のようだ。まだ奴らの言い分を完全に受け入れる事は出来ない。だが少なからず奴らの発言と行動は筋が通っていた。
奴らがノーバディやラグナレクを出現させている邪神ならば、確かにこの先から感じるラグナレクを倒すなんてまるで理解不能だ。だがさっきあのグリムとかいう青年が言った通りなら奴らは本当に逆。方法は知らんが奴らもこの終焉に抗っているという事になる。
奴らが終焉を招いている邪神ならば平気で俺達ぐらい殺す筈だが、一切そんな気も感じられなかった。それどころか俺が見た範囲では奴らは1人も殺していない。ラドット渓谷から今の俺達に至るまでの間誰1人としてな。実際に対峙していた時でさえ僅かな殺意も感じられなかった……。
直に接触するまで到底信じられなかったというのに、今では俺の考えも完全に“逆になりつつある”。
とは言っても、まだ裏で俺の知らない何かが動いている。それを明らかにしない事には確証は得られないな。奴らが邪神じゃないと分かった以上“本物の邪神”を見つけ出す他に道はないだろう。
そもそも、邪神と言う存在さえ定かじゃないが……やはり1度王都に戻って本当の真実を見極める必要があるか――)
カルの中で生じていた葛藤。
それが徐々にクリアになってきたようだ。
今までは疑うことなく当たり前の如く国王の命に従ってグリム達を追っていたが、実際にカルが彼らを目の当たりにして直に雰囲気を感じ取り、正面からぶつかった事によって今まで見えていなかった真実が見えてきた。それは不確定な憶測などではなく確かな事実。
どれだけ己が信じて疑わなかった事でさえ、不純物を取り除いて残った物こそが本当の真実である。
それが到底信じ難い事であったとしても、それが答えとなるのだ。
カルもまた、彼が今辿り着こうとしている真実がどれ程彼に衝撃や困惑を与えているかは分からない。しかし、カルは自身の覚悟と決意の元でその道を選んだ。恐らく彼がこれから辿り着く真実は、彼が当初に思っていた事とは想像も出来ないぐらい真逆になるだろう。
だが、カルはそれすらも覚悟の上で決意を固めていた。
全ては今起きている事の真実を知る為。
グリム達が邪神ではないと確信したカルが次に向かう先は王都。真実を確かめる為にはもう全てを知るであろう国王を問うしか術はない。しかしそんな事を国王相手に単刀直入に聞く訳にもいかないと判断したカルは、隠密に国王の情報を探りつつ、全てを知っているであろうもう1人の人間の元へと向かう事を決めたのだった。
「俺のこの考えが正しければ、事態は想像だに出来ない規模で企てられている。先ずは城に戻って情報を集め、他にも真実を知っている者がいないか少し探る必要があるな。
そして……国王と奴ら以外に真実を知っているであろう“ユリマ“に、全てを洗い浚い語ってもらう他ないようだな――」
カルは独り言の様にそう言い、ジニ王国を後にしたのだった――。