「グダグダ喋ってんじゃねぇぞコラ! 全員まとめて殺してやるからな!」
「落ち着きなさいよアックス。もう他の“団員達”が追い付いてくるから」
「知るかそんな事! トロい奴らなんか待ってられねぇ。団員共が来る前に俺が片付けてやるよ」
抑える事なく闘志を全面に出すアックス。彼はデイアナの説得も聞かず、一気に波動を練り上げ出した。アックスの体に纏う青白い光がどんどん大きく濃くなっていき、その波動はフーリンと同じ超波動の領域まで達した。
神器を持つ七聖天ならばこれぐらいは当たり前だろう。
「なんか凄い事になっちゃってるね。しかもまだ騎士魔法団が来るみたいだし……それにイヴ様はまだいないのかな?」
「霊玉は割ったからもう外にはいる筈なんだけどね。何処に行ったのよイヴ」
辺りを見渡すがやはりイヴらしき姿は確認出来ない。俺達がそうこうしているうちに、超波動を纏まったアックスが勢いよく地面を蹴って宙に跳んだ。
「全員死ねぇぇ!」
「避けろ皆ッ!」
逆光に照らされ、アックスは俺達の頭上から振り上げた大斧を物凄い強さで振り下ろしてきた。
――ドゴォォォンッ!
「「わッ!?」」
超波動によって更なる強化が施されたアックスの一撃。地面に直撃した大斧はそのまま大きく大地を砕き割り、その衝撃でバキバキと周りの断崖にまで地割れの如くヒビが入っていった。
「とんでもねぇ威力だな」
「どうしよう、やっぱり戦うしかないのかな……」
「ならば俺が行こう。奴らは中々の強者だ」
フーリンはそう言って自らも波動を高め出す。しかし、俺はそんなフーリンを止めた。
「ちょっと待てフーリン。お前はこの間ラウアーと戦ったばかりだろ。まだ休めって。今回は俺がやる」
「いや、強者ならば俺が手合わせしたい」
「フーリン、グリムの言う通りよ。貴方はラウアーとの戦いでまだ傷がいえていないでしょ? 私の治癒は限界があるから、まだ完全には治しきれていないの。その状態で七聖天相手に戦うのは無茶よ」
フーリンはまだ何処か納得出来ない表情を浮かべていたが、俺とハクの説得で渋々理解してくれた様だ。良かった。取り返しのつかないダメージを負ったら終わりだからな。
今回は俺がやる。
なんかヴィルの野郎はまだ俺に用があるみたいだし、俺はそのヴィルに斬られたあの日から体に妙な“違和感”を感じているんだよずっと。
それは傷が治っていないとかダメージが残っているとかではなく、なんだろう……。俺が思うに“コレ”はずっと体の中に存在していた筈なのに、俺はずっとその力に気付いていなかった。というのが正しいだろうか?
スキルを与えられてから俺はずっと覚醒を目指して頑張っていた。そして辺境の森でスキルが覚醒した俺は、それからずっと死に物狂いで剣を振りまくったんだ。
その甲斐あって俺はかなり強くなった。身体能力も並みの人間を遥かに上回る程に。それは勘違いでも自惚れでもなく、実際森の外でも俺の力は通用した。自分が確実に強くなっていると確かに実感出来たんだ。
再び弟のヴィルに出会うまでは――。
「来いよ、七聖天のアックス。俺と勝負しろ」
「アッハッハッハッ! 勿論やってやるぜ。俺とお前でまともな勝負になるならな!」
ラドット渓谷に響く高笑い。アックスは強力な超波動を纏って得意の大斧を振り下ろしてきた。
――ガキィン!
「なッ!? テメェ……!」
「え、どうなってるのグリム」
「あれは……」
「やっと“気付いた”みたいねグリム。遅いよ」
アックスは勿論、他の全員が驚いている。
まぁ無理もないだろ。
だって“コレ”が使えた事に俺が1番驚いているからな。
「ど、どうなってやがる……!」
超波動を纏った奴の渾身の攻撃。俺はさっきアックスの攻撃を全身の力で食い止めるのが精一杯だったが、今は奴が超波動で更に威力を高めた一撃を片腕で、剣1本で受け止めている――。
「やっぱりコレが“波動”か。この間ヴィルに斬られた時、朦朧とする意識の中で体が妙な感覚にが襲われたけど、その答えがハッキリした」
そう。
思い返せば1番最初にフーリンの波動を見た時。この時から俺は何となく気になっていたんだ。どうして今まで気付かなかったんだろう?
いや、これまでの俺にはそんな余裕がなかったんだ。
初めてスキルを与えらた時、俺はその日からただひたすらスキルが覚醒する事だけを思って訓練していた。そして結局覚醒せずに家族からも王国からも追放。スカルウルフに殺されそうになったあの日、スキルが初めて覚醒したあの日から、俺は一心不乱に剣を振り続けていた。
己の不運に陥れられた不遇の環境。俺はそんな絶望にいたせいで微塵の余裕もなかった。だからこそ、この波動という力の存在を俺は完全に“忘れていた”のだ――。
「ぐッ、貴様も使えるのか波動を……! それも限られた者しか使えない“超波動”を!」
「へぇ。しかもコレ波動より上とか言う超波動なのか。それはラッキーだったな。
ハハハハ。こりゃ確かに凄い力だ。もうお前に負ける気がしねぇ」
超波動を纏った俺はアックスの大斧を軽い力で弾き返した。
「テ、テメェ! たかが超波動使っただけで何をいい気になってやがる! こっちだって条件は同じ。寧ろ俺には神器『大戦斧ニルドール』がある! 負けるのはテメェで確定だ雑魚がッ!」
いきり立ったアックスは更に超波動を高めて攻撃を繰り出してきた。
「“ブレイク・ベイル”!」
見た目のデカさからは想像も出来ない程の速さで巧みに大斧を操るアックス。まるで普通の剣を振っているかの如く、アックスはいとも容易く大斧を縦横無尽振り放ってきた。
――ブォン、ブォン、ブォン!
「きゃあッ!」
「まるで暴風だな」
アックスが振るう大斧はその一撃一撃が凄まじかった。俺は奴の攻撃を全て躱しているが、アックスの大斧は風圧だけでも体を吹き飛ばされそうな程威力が強い。掠っただけでも簡単に体が抉られそうだ。
「うらうらうらうらうらぁぁッ!」
幾度となく、俺の直ぐ近くを大きな斧刃が通り過ぎていく。七聖天の1であり、神器に選ばれたアックスの実力は確かなもの。その証拠に超波動の強さも戦闘力も群を抜いている。何時かフィンスターで見たラグナレクの討伐映像でも強さは分かっていたけど、直にやり合うとそれ以上なのが分かった。
だが。
――ガキィィン!
「ッ!?」
縦横無尽に振られていたアックスの大斧を弾き返した俺は、一瞬で奴との間合いを詰め懐まで入り込んだ。
「正直、俺が超波動を使えなかったら危なかった」
俺のスピードに反応出来ていないであろうアックスは目を見開いて驚いている。俺はそんなアックスを横目に、そのままガラ空きの胴体目掛けて剣を振り抜いた。
――シュバァァン! ……パキン。
「がはッ……!」
横一閃。
今の一太刀で折れてしまった俺の剣と舞う鮮血の血飛沫と共に、斬られたアックスはその場に崩れ落ちた。
「落ち着きなさいよアックス。もう他の“団員達”が追い付いてくるから」
「知るかそんな事! トロい奴らなんか待ってられねぇ。団員共が来る前に俺が片付けてやるよ」
抑える事なく闘志を全面に出すアックス。彼はデイアナの説得も聞かず、一気に波動を練り上げ出した。アックスの体に纏う青白い光がどんどん大きく濃くなっていき、その波動はフーリンと同じ超波動の領域まで達した。
神器を持つ七聖天ならばこれぐらいは当たり前だろう。
「なんか凄い事になっちゃってるね。しかもまだ騎士魔法団が来るみたいだし……それにイヴ様はまだいないのかな?」
「霊玉は割ったからもう外にはいる筈なんだけどね。何処に行ったのよイヴ」
辺りを見渡すがやはりイヴらしき姿は確認出来ない。俺達がそうこうしているうちに、超波動を纏まったアックスが勢いよく地面を蹴って宙に跳んだ。
「全員死ねぇぇ!」
「避けろ皆ッ!」
逆光に照らされ、アックスは俺達の頭上から振り上げた大斧を物凄い強さで振り下ろしてきた。
――ドゴォォォンッ!
「「わッ!?」」
超波動によって更なる強化が施されたアックスの一撃。地面に直撃した大斧はそのまま大きく大地を砕き割り、その衝撃でバキバキと周りの断崖にまで地割れの如くヒビが入っていった。
「とんでもねぇ威力だな」
「どうしよう、やっぱり戦うしかないのかな……」
「ならば俺が行こう。奴らは中々の強者だ」
フーリンはそう言って自らも波動を高め出す。しかし、俺はそんなフーリンを止めた。
「ちょっと待てフーリン。お前はこの間ラウアーと戦ったばかりだろ。まだ休めって。今回は俺がやる」
「いや、強者ならば俺が手合わせしたい」
「フーリン、グリムの言う通りよ。貴方はラウアーとの戦いでまだ傷がいえていないでしょ? 私の治癒は限界があるから、まだ完全には治しきれていないの。その状態で七聖天相手に戦うのは無茶よ」
フーリンはまだ何処か納得出来ない表情を浮かべていたが、俺とハクの説得で渋々理解してくれた様だ。良かった。取り返しのつかないダメージを負ったら終わりだからな。
今回は俺がやる。
なんかヴィルの野郎はまだ俺に用があるみたいだし、俺はそのヴィルに斬られたあの日から体に妙な“違和感”を感じているんだよずっと。
それは傷が治っていないとかダメージが残っているとかではなく、なんだろう……。俺が思うに“コレ”はずっと体の中に存在していた筈なのに、俺はずっとその力に気付いていなかった。というのが正しいだろうか?
スキルを与えられてから俺はずっと覚醒を目指して頑張っていた。そして辺境の森でスキルが覚醒した俺は、それからずっと死に物狂いで剣を振りまくったんだ。
その甲斐あって俺はかなり強くなった。身体能力も並みの人間を遥かに上回る程に。それは勘違いでも自惚れでもなく、実際森の外でも俺の力は通用した。自分が確実に強くなっていると確かに実感出来たんだ。
再び弟のヴィルに出会うまでは――。
「来いよ、七聖天のアックス。俺と勝負しろ」
「アッハッハッハッ! 勿論やってやるぜ。俺とお前でまともな勝負になるならな!」
ラドット渓谷に響く高笑い。アックスは強力な超波動を纏って得意の大斧を振り下ろしてきた。
――ガキィン!
「なッ!? テメェ……!」
「え、どうなってるのグリム」
「あれは……」
「やっと“気付いた”みたいねグリム。遅いよ」
アックスは勿論、他の全員が驚いている。
まぁ無理もないだろ。
だって“コレ”が使えた事に俺が1番驚いているからな。
「ど、どうなってやがる……!」
超波動を纏った奴の渾身の攻撃。俺はさっきアックスの攻撃を全身の力で食い止めるのが精一杯だったが、今は奴が超波動で更に威力を高めた一撃を片腕で、剣1本で受け止めている――。
「やっぱりコレが“波動”か。この間ヴィルに斬られた時、朦朧とする意識の中で体が妙な感覚にが襲われたけど、その答えがハッキリした」
そう。
思い返せば1番最初にフーリンの波動を見た時。この時から俺は何となく気になっていたんだ。どうして今まで気付かなかったんだろう?
いや、これまでの俺にはそんな余裕がなかったんだ。
初めてスキルを与えらた時、俺はその日からただひたすらスキルが覚醒する事だけを思って訓練していた。そして結局覚醒せずに家族からも王国からも追放。スカルウルフに殺されそうになったあの日、スキルが初めて覚醒したあの日から、俺は一心不乱に剣を振り続けていた。
己の不運に陥れられた不遇の環境。俺はそんな絶望にいたせいで微塵の余裕もなかった。だからこそ、この波動という力の存在を俺は完全に“忘れていた”のだ――。
「ぐッ、貴様も使えるのか波動を……! それも限られた者しか使えない“超波動”を!」
「へぇ。しかもコレ波動より上とか言う超波動なのか。それはラッキーだったな。
ハハハハ。こりゃ確かに凄い力だ。もうお前に負ける気がしねぇ」
超波動を纏った俺はアックスの大斧を軽い力で弾き返した。
「テ、テメェ! たかが超波動使っただけで何をいい気になってやがる! こっちだって条件は同じ。寧ろ俺には神器『大戦斧ニルドール』がある! 負けるのはテメェで確定だ雑魚がッ!」
いきり立ったアックスは更に超波動を高めて攻撃を繰り出してきた。
「“ブレイク・ベイル”!」
見た目のデカさからは想像も出来ない程の速さで巧みに大斧を操るアックス。まるで普通の剣を振っているかの如く、アックスはいとも容易く大斧を縦横無尽振り放ってきた。
――ブォン、ブォン、ブォン!
「きゃあッ!」
「まるで暴風だな」
アックスが振るう大斧はその一撃一撃が凄まじかった。俺は奴の攻撃を全て躱しているが、アックスの大斧は風圧だけでも体を吹き飛ばされそうな程威力が強い。掠っただけでも簡単に体が抉られそうだ。
「うらうらうらうらうらぁぁッ!」
幾度となく、俺の直ぐ近くを大きな斧刃が通り過ぎていく。七聖天の1であり、神器に選ばれたアックスの実力は確かなもの。その証拠に超波動の強さも戦闘力も群を抜いている。何時かフィンスターで見たラグナレクの討伐映像でも強さは分かっていたけど、直にやり合うとそれ以上なのが分かった。
だが。
――ガキィィン!
「ッ!?」
縦横無尽に振られていたアックスの大斧を弾き返した俺は、一瞬で奴との間合いを詰め懐まで入り込んだ。
「正直、俺が超波動を使えなかったら危なかった」
俺のスピードに反応出来ていないであろうアックスは目を見開いて驚いている。俺はそんなアックスを横目に、そのままガラ空きの胴体目掛けて剣を振り抜いた。
――シュバァァン! ……パキン。
「がはッ……!」
横一閃。
今の一太刀で折れてしまった俺の剣と舞う鮮血の血飛沫と共に、斬られたアックスはその場に崩れ落ちた。