♢♦♢
~ドラシエル王国・ルカの家~
俺とレベッカの結婚式から早半年――。
オロチを倒したのはもう1年前にもなる。本当に時間が経つのは早い。
あれから世界中は平和に包まれ、モンスターの数も激減状態が続いていた。出てくる数も少ないし、Cランク以上のモンスターなど滅多に出てこないのが現状だ。だがそれでもモンスターが全ていなくなった訳ではないから、必ずしも安心は出来ないと思う。
まぁそれでも冒険者の数もかなり減ったし、何処の王国もギルドは必要最低限となっているらしい。何だか寂しい感じもするが、それだけ平和だという証拠でもあるからいい事だよな。
「――ルカ~!」
「お、来た来た」
遠くから俺の名前を呼ぶ心地よい声。結婚して半年になるが、未だに自分の“奥さん”という立場が慣れない。
「皆への挨拶は済んだか?」
「うん!皆って言っても、ほぼルカと一緒だからね。お父さんとお母さんも家に帰ったし。ルカももういいの?」
「ああ。俺も大丈夫。何時でも行けるよ」
「あれ、ニクスはまだ来てない?」
俺とレベッカがそう話していると、今度は上から俺とレベッカの名前を呼ぶ声が響いてきた。
「おーい! ルカさん、レベッカさん!お待たせしましたー!」
「あ、ニクスー!」
「これで揃ったな」
<さて、本当に最後の“一仕事”といくか。もう雑魚ばかりだが……>
そう――。
俺達がこうして集まっているのは他でもない、モンスター討伐の為だ。
全ての元凶であったオロチは倒した俺達は、モンスターの激減に伴い特殊隊を抜けた。もうそこまで人手もいらなければSランクモンスターの討伐に行く必要もないからだ。
勿論特殊隊を抜ける言った時は国王も特殊隊の皆も残念そうにしていたが、俺とジークの目的は最初からモンスターの“全滅”。オロチがいなくなった今かなり平和な世界になったとはいえ、まだモンスターは残っている。だから俺達は世界中を旅しながらモンスターを倒しに行きたいんだと国王や皆に伝えると、皆俺達の気持ちを汲んで笑顔で送り出してくれた。
始まりは確かに俺とジークだけど、今ではレベッカもいる。当然モンスターを倒したいという事はレベッカに真っ先に相談した。そうしたらレベッカは快く理解してくれた。俺の我が儘を受け入れてくれるレベッカには本当に頭が上がらない。
しかもレベッカは「どうせなら新婚旅行も兼ねて世界中を旅したい!」とポジティブな方向に舵を切ってくれたので2人で話してニクスも誘う事にした。するとニクスは「当然付いて行きます!」と一切の迷いなく即決してくれた。
嬉しくて有り難いが、本当にいいのかなと少し心配してしまった。だが直ぐに旅の支度をしてやる気も満ち溢れているからいいのだろう……。結婚式依頼イディアナ王国にいるマスターにも会っていないし、バーレーン様とニクスも会わせてあげたい。あれからも互いに少しづつ向き合っているからな。
「――何ボーっとしてるのよルカ」
「私はもう何時でも出発出来ますよ!」
<もう張り合いのある敵はいないが、モンスターを全て駆逐してやろう。いずれ強い奴と出会うかもしれないしな>
俺はふと思う時がある……。
人生っていうものは本当に分からない――。
次の瞬間には絶望の淵に立たされている時もあれば、またその次の瞬間には世界が180度変わっている時もある。
突然1人になってしまったと思っても、周りを見れば自分に手を差し伸べてくれる人がいる。
母さんが死んでジークと出会ってグレイ達に見捨てられレベッカと出会って……。
奇妙で不思議な何とも言えない出会いや経験は、何時も偶然のように思えるけど、もしかたらそれは自分が生きていく上で決まっていた必然であり運命なのかもしれないな――。
「皆……ありがとう」
気が付くと、俺はそう口に出していた。
「ねぇ、本当に大丈夫? ボーっとしてると思ったら急にお礼言い出して……」
「どっか悪いんですかルカさん? 回復魔法掛けますよ」
<オロチを倒して平和ボケしているな。いや、結婚とやらをしてから浮かれている>
「そんな事ないってジーク。それに俺は大丈夫だし普通だ。ふと今までの出来事に浸っただけだよ」
<浸るのは早い。まだ終わっておらぬからな>
「そうよ。私達のモンスター討伐新婚旅行は今から始まるんだからねルカ!」
「楽しみですね!」
ジークもレベッカもニクスも相変わらずだ。今までも色々あったし、きっと今からも色々起こるだろう。でも、俺達ならもう大丈夫。辛く困難な事も乗り越えてきたし、今は1人じゃない。困った時には頼れる仲間達がいる。
「――よし。ジークもレベッカもニクスも準備はいいよな? 出発するぞ?」
「私達はとっくに大丈夫よ。ルカがずっと変なだけ」
「ハハハ、悪い悪い。それじゃあ切り替えて……いざ出発だ!」
「「おおー!」」
こうして、俺達は再び新たな冒険へと旅立った。
いや、正確にはモンスター討伐新婚旅行……?
まぁ別に何でもいいか。
俺には大切な仲間達がいる。
ただそれだけで、この先も大丈夫だから――。
【完結】
~ドラシエル王国・ルカの家~
俺とレベッカの結婚式から早半年――。
オロチを倒したのはもう1年前にもなる。本当に時間が経つのは早い。
あれから世界中は平和に包まれ、モンスターの数も激減状態が続いていた。出てくる数も少ないし、Cランク以上のモンスターなど滅多に出てこないのが現状だ。だがそれでもモンスターが全ていなくなった訳ではないから、必ずしも安心は出来ないと思う。
まぁそれでも冒険者の数もかなり減ったし、何処の王国もギルドは必要最低限となっているらしい。何だか寂しい感じもするが、それだけ平和だという証拠でもあるからいい事だよな。
「――ルカ~!」
「お、来た来た」
遠くから俺の名前を呼ぶ心地よい声。結婚して半年になるが、未だに自分の“奥さん”という立場が慣れない。
「皆への挨拶は済んだか?」
「うん!皆って言っても、ほぼルカと一緒だからね。お父さんとお母さんも家に帰ったし。ルカももういいの?」
「ああ。俺も大丈夫。何時でも行けるよ」
「あれ、ニクスはまだ来てない?」
俺とレベッカがそう話していると、今度は上から俺とレベッカの名前を呼ぶ声が響いてきた。
「おーい! ルカさん、レベッカさん!お待たせしましたー!」
「あ、ニクスー!」
「これで揃ったな」
<さて、本当に最後の“一仕事”といくか。もう雑魚ばかりだが……>
そう――。
俺達がこうして集まっているのは他でもない、モンスター討伐の為だ。
全ての元凶であったオロチは倒した俺達は、モンスターの激減に伴い特殊隊を抜けた。もうそこまで人手もいらなければSランクモンスターの討伐に行く必要もないからだ。
勿論特殊隊を抜ける言った時は国王も特殊隊の皆も残念そうにしていたが、俺とジークの目的は最初からモンスターの“全滅”。オロチがいなくなった今かなり平和な世界になったとはいえ、まだモンスターは残っている。だから俺達は世界中を旅しながらモンスターを倒しに行きたいんだと国王や皆に伝えると、皆俺達の気持ちを汲んで笑顔で送り出してくれた。
始まりは確かに俺とジークだけど、今ではレベッカもいる。当然モンスターを倒したいという事はレベッカに真っ先に相談した。そうしたらレベッカは快く理解してくれた。俺の我が儘を受け入れてくれるレベッカには本当に頭が上がらない。
しかもレベッカは「どうせなら新婚旅行も兼ねて世界中を旅したい!」とポジティブな方向に舵を切ってくれたので2人で話してニクスも誘う事にした。するとニクスは「当然付いて行きます!」と一切の迷いなく即決してくれた。
嬉しくて有り難いが、本当にいいのかなと少し心配してしまった。だが直ぐに旅の支度をしてやる気も満ち溢れているからいいのだろう……。結婚式依頼イディアナ王国にいるマスターにも会っていないし、バーレーン様とニクスも会わせてあげたい。あれからも互いに少しづつ向き合っているからな。
「――何ボーっとしてるのよルカ」
「私はもう何時でも出発出来ますよ!」
<もう張り合いのある敵はいないが、モンスターを全て駆逐してやろう。いずれ強い奴と出会うかもしれないしな>
俺はふと思う時がある……。
人生っていうものは本当に分からない――。
次の瞬間には絶望の淵に立たされている時もあれば、またその次の瞬間には世界が180度変わっている時もある。
突然1人になってしまったと思っても、周りを見れば自分に手を差し伸べてくれる人がいる。
母さんが死んでジークと出会ってグレイ達に見捨てられレベッカと出会って……。
奇妙で不思議な何とも言えない出会いや経験は、何時も偶然のように思えるけど、もしかたらそれは自分が生きていく上で決まっていた必然であり運命なのかもしれないな――。
「皆……ありがとう」
気が付くと、俺はそう口に出していた。
「ねぇ、本当に大丈夫? ボーっとしてると思ったら急にお礼言い出して……」
「どっか悪いんですかルカさん? 回復魔法掛けますよ」
<オロチを倒して平和ボケしているな。いや、結婚とやらをしてから浮かれている>
「そんな事ないってジーク。それに俺は大丈夫だし普通だ。ふと今までの出来事に浸っただけだよ」
<浸るのは早い。まだ終わっておらぬからな>
「そうよ。私達のモンスター討伐新婚旅行は今から始まるんだからねルカ!」
「楽しみですね!」
ジークもレベッカもニクスも相変わらずだ。今までも色々あったし、きっと今からも色々起こるだろう。でも、俺達ならもう大丈夫。辛く困難な事も乗り越えてきたし、今は1人じゃない。困った時には頼れる仲間達がいる。
「――よし。ジークもレベッカもニクスも準備はいいよな? 出発するぞ?」
「私達はとっくに大丈夫よ。ルカがずっと変なだけ」
「ハハハ、悪い悪い。それじゃあ切り替えて……いざ出発だ!」
「「おおー!」」
こうして、俺達は再び新たな冒険へと旅立った。
いや、正確にはモンスター討伐新婚旅行……?
まぁ別に何でもいいか。
俺には大切な仲間達がいる。
ただそれだけで、この先も大丈夫だから――。
【完結】