ルカ達が東ルートを進み始めた一方で、ダッジ隊長率いる1番隊とクレーグ副隊長率いる2番隊はそれぞれ自分達のルートでとある事が起きていた――。
♢♦♢
~ペトラ遺跡・西ルート~
「モンスター1体出ないなんてやっぱ異常だよな」
「そうね。少ないなら未だしも、全く出てこないなんて有り得ないわ」
「既にオロチのテリトリーって事さ。周囲への警戒を怠らないでね。何時でも動ける様に」
西ルートを行くクレーグ達。
通常ならモンスターの1匹でも遭遇するのが当たり前であるが、ここまで全く遭遇しない事に皆が奇妙に思っていた。それと同時に、この異様さが嫌でも緊張感を生み出し、常に神経が研ぎ澄まされていた。
クレーグ達2番隊が西ルートを暫く進むと、ジルフが静かに口を開いた――。
「……向こう……。此処から30m先にモンスターの魔力を感知した……」
自分達の周りの広範囲を魔力感知していたジルフのセンサーに、遂に初めてのモンスターの魔力が感知された。そして次の瞬間、森の奥から物音が聞こえてくる。
「何だろう……」
バキバキと草木の音が次第に近づいてきているのを感じ、全員が一斉に戦闘態勢に入った。
「来る……」
『グオォォォ!』
ジルフがそう言った刹那、クレーグ達の前に見た事もないモンスターが現れた。
「何だコイツ……!」
「ひょっとして“キメラ”か⁉」
クレーグ達の前に現れたモンスターは獅子の様な頭部が2つあり、四足歩行の体と脚は、まるで様々なモンスターを縫合したかの様な異質なな姿であった。
熊のような右前脚に鳥のような左前脚。後ろ脚の2つも何のモンスターかは分からないがそれぞれ違うもの。尾は蛇のように動いており、明らかに異質な存在。正確な正体は分からないが、恐らくクレーグの言うキメラに1番見た目は近いだろう。
「こんなキメラいるの……?」
「いや。コレは見た事がない。そもそもキメラかどうかも定かじゃないよね」
「今はそんな事よりコイツに集中しないと!」
「……“バフ”……“シールド”」
キメラの強い魔力を感じ取ったジルフは皆に付与魔法を掛けた。これで身体強化と魔力増幅が施され、更にジルフは1人1人にダメージ軽減の防御壁を張った。
「強いわねこのモンスター。私が奴の注意を引きつけるから、その隙に仕留めて! 悪いけど何時もより早めにお願いね……!」
そう言ってリリィは特殊適性である“超磁場”を発動させながらキメラに攻撃を仕掛けた。
リリィの超磁場は範囲の敵や物を自在に引き寄せたり反発させる能力を持っている。相手を攪乱させるには持ってこいの能力だろう。勿論リリィも実力者であり相当の場数を踏んでいるが、何処か自信がなさそうなリリィを見るのは特殊隊の仲間でも初めてであった。
「“マグネットエリア”」
リリィが超磁場を利用した魔法によって凄い速さでキメラの周りを動き回ると、それに反応したキメラがリリィを視界に捉えた。攻撃しようと鋭い鉤爪のある前脚を動かそうとしたが、リリィの力によって動きが極端に遅くなっていた。
攻撃を余裕で躱したリリィはそのままキメラの注意を引きつけ、その生まれた隙を突きクレーグ、ピノ、ジルフの3人が一斉に攻撃を放った。
「“アクアインパクト”!」
「“メタルアーチー”!」
「……“フレイム・ボルト”……!」
――ズシャァァァンッ!
『ヴオォォォッ……⁉』
♢♦♢
~北ルート~
「――初めて見るモンスターだなコレは」これははじめてみる魔獣だな」
「何だコイツ!」
「声デカいわよヴァン」
「うわぁ……」
北ルートから最深部を目指していたダッジ隊長率いる1番隊。
西ルートでクレーグ達が異質なモンスターと遭遇したとほぼ同時刻。ダッジ隊長達もモンスターを視界に捉えていた。
それも上空数メートル上で――。
『ギギャァァ!』
「マジで何だよコイツ! 面白い見た目してるなー!」
ダッジ隊長が見上げる視線の先には、鋭い牙を生やした人間の様な頭部と上半身に鱗の様なものを纏い、下半身は完全に鳥。上半身から生える両腕は大きな翼と化しており、その漆黒の翼をバサバサと羽ばたかせながら飛んでいた。
「あれってハーピィとか言う奴……?」
「本当にいるのそんなモンスターって」
「目撃情報は極めて少ないが、ハーピィ自体は存在する。だが、アレは何か訳が違うだろう――」
ダッジ隊長の読みは当たっていた。
この世界に確かにハーピィというよく似たモンスターが存在するが、今ダッジ隊長達の目の前にいるこれは明らかに異質で姿形である。
ハーピィは本来人間と同じぐらいのサイズであるが、コイツは人間の大きさを遥かに凌ぐサイズ。巨体のダッジ隊長ですら小さく見えるこのハーピィの存在は有り得ない。しかもハーピィはAランク指定のモンスターにも関わらず、ここにいる奴は間違いなくSランク以上の魔力の強さだった。
思わずヴァン達も空中を舞う異質な巨体ハーピィに視線を奪われ言葉を失っていた。
「此処からでも攻撃は出来るが致命傷は難しいな。エレナ、俺が風で飛ばしてやるから仕留めて来い。もしくはあの翼を使えなくして下に叩き落せ」
「えー!私ですか⁉了解!」
何故一瞬嫌がる素振りを見せたか分からないが、好戦的なエレナは言わずもがなやる気満々だ。
「頼むぞ」
エレナの特殊適性である“格闘の極み”は、皆の様に剣や槍など武器こそ使わないがその能力によって既に打撃が武器の威力を凌駕する程――。
ダッジ隊長の風魔法によって空中へ飛んだエレナは、練り上げた魔力を足へと集中させ、ハーピィ目掛け空中で旋回し鋭い回し蹴りを繰り出した。
「近くで見るとよりデカいわね……“レッグスラッシュ”!」
――シュバンッ!
『ギッ……⁉』
「落ちるよ皆ー!」
繰り出されたエレナの回し蹴りは、まるで剣で一刀両断するかの如くハーピィの両翼を切断したのだった。激しい血飛沫と共に甲高い呻き声を上げながらハーピィは地上へと落下していく。
「もらったぁぁ! 追加で食らいやがれハーピィ!炎魔法、“ファイア”!」
落下していく空中で、体勢を立て直せないハーピィ目掛けてヴァンが灼熱の炎で攻撃した。
――ボオォォォン!
『ギギャャャ……!!』
両翼を切断され全身火傷状態となったハーピィそのまま勢いよく地面に叩きつけられた。エレナとヴァンの連続攻撃でかなりのダメージを負わせたが、倒しきるまでに至らない。攻撃を食らい怒り狂ったハーピィは魔力を高め暴れ出してしまった。
「うわ、仕留め切れなかったか。滅茶苦茶怒ってるし!」
「ジェニー、ヴァン。2人で攻撃をし続けろ。俺とエレナで止めを刺しにいく」
「OK!」
「次で確実に息の根を止めてやるわ!」
ダッジ隊長の指示により、ヴァンとジェニーは距離を取った位置からハーピィに攻撃を放ち続ける。そして剣を抜いたダッジ隊長とエレナは2人の攻撃を援護にハーピィを仕留めに掛かった――。
♢♦♢
~ペトラ遺跡・最深部~
森の奥深く……。
薄暗いこの場所で、一際神秘的な輝きを放つ1人の美しい青年がいた。
『――フフフフ。どうやら来たみたいだねジークリート……。君を殺しぞびれた2000年前から、私がどれ程この日を待ちわびただろうか。
あの時の私では僅かに君に力が及ばなかった……。
人間を利用してまで君を封印した時は何とも言えぬ高揚感に包まれたが、時が経てば経つ程……君への思いが強くなっていったよジークリート。
私は後悔している。君を封印しただけでは満足出来ない。やはり君を殺したいんだ。私自らね。
さぁ、存分に楽しもうじゃないかぁジークリートよ――』
♢♦♢
~ペトラ遺跡・西ルート~
「モンスター1体出ないなんてやっぱ異常だよな」
「そうね。少ないなら未だしも、全く出てこないなんて有り得ないわ」
「既にオロチのテリトリーって事さ。周囲への警戒を怠らないでね。何時でも動ける様に」
西ルートを行くクレーグ達。
通常ならモンスターの1匹でも遭遇するのが当たり前であるが、ここまで全く遭遇しない事に皆が奇妙に思っていた。それと同時に、この異様さが嫌でも緊張感を生み出し、常に神経が研ぎ澄まされていた。
クレーグ達2番隊が西ルートを暫く進むと、ジルフが静かに口を開いた――。
「……向こう……。此処から30m先にモンスターの魔力を感知した……」
自分達の周りの広範囲を魔力感知していたジルフのセンサーに、遂に初めてのモンスターの魔力が感知された。そして次の瞬間、森の奥から物音が聞こえてくる。
「何だろう……」
バキバキと草木の音が次第に近づいてきているのを感じ、全員が一斉に戦闘態勢に入った。
「来る……」
『グオォォォ!』
ジルフがそう言った刹那、クレーグ達の前に見た事もないモンスターが現れた。
「何だコイツ……!」
「ひょっとして“キメラ”か⁉」
クレーグ達の前に現れたモンスターは獅子の様な頭部が2つあり、四足歩行の体と脚は、まるで様々なモンスターを縫合したかの様な異質なな姿であった。
熊のような右前脚に鳥のような左前脚。後ろ脚の2つも何のモンスターかは分からないがそれぞれ違うもの。尾は蛇のように動いており、明らかに異質な存在。正確な正体は分からないが、恐らくクレーグの言うキメラに1番見た目は近いだろう。
「こんなキメラいるの……?」
「いや。コレは見た事がない。そもそもキメラかどうかも定かじゃないよね」
「今はそんな事よりコイツに集中しないと!」
「……“バフ”……“シールド”」
キメラの強い魔力を感じ取ったジルフは皆に付与魔法を掛けた。これで身体強化と魔力増幅が施され、更にジルフは1人1人にダメージ軽減の防御壁を張った。
「強いわねこのモンスター。私が奴の注意を引きつけるから、その隙に仕留めて! 悪いけど何時もより早めにお願いね……!」
そう言ってリリィは特殊適性である“超磁場”を発動させながらキメラに攻撃を仕掛けた。
リリィの超磁場は範囲の敵や物を自在に引き寄せたり反発させる能力を持っている。相手を攪乱させるには持ってこいの能力だろう。勿論リリィも実力者であり相当の場数を踏んでいるが、何処か自信がなさそうなリリィを見るのは特殊隊の仲間でも初めてであった。
「“マグネットエリア”」
リリィが超磁場を利用した魔法によって凄い速さでキメラの周りを動き回ると、それに反応したキメラがリリィを視界に捉えた。攻撃しようと鋭い鉤爪のある前脚を動かそうとしたが、リリィの力によって動きが極端に遅くなっていた。
攻撃を余裕で躱したリリィはそのままキメラの注意を引きつけ、その生まれた隙を突きクレーグ、ピノ、ジルフの3人が一斉に攻撃を放った。
「“アクアインパクト”!」
「“メタルアーチー”!」
「……“フレイム・ボルト”……!」
――ズシャァァァンッ!
『ヴオォォォッ……⁉』
♢♦♢
~北ルート~
「――初めて見るモンスターだなコレは」これははじめてみる魔獣だな」
「何だコイツ!」
「声デカいわよヴァン」
「うわぁ……」
北ルートから最深部を目指していたダッジ隊長率いる1番隊。
西ルートでクレーグ達が異質なモンスターと遭遇したとほぼ同時刻。ダッジ隊長達もモンスターを視界に捉えていた。
それも上空数メートル上で――。
『ギギャァァ!』
「マジで何だよコイツ! 面白い見た目してるなー!」
ダッジ隊長が見上げる視線の先には、鋭い牙を生やした人間の様な頭部と上半身に鱗の様なものを纏い、下半身は完全に鳥。上半身から生える両腕は大きな翼と化しており、その漆黒の翼をバサバサと羽ばたかせながら飛んでいた。
「あれってハーピィとか言う奴……?」
「本当にいるのそんなモンスターって」
「目撃情報は極めて少ないが、ハーピィ自体は存在する。だが、アレは何か訳が違うだろう――」
ダッジ隊長の読みは当たっていた。
この世界に確かにハーピィというよく似たモンスターが存在するが、今ダッジ隊長達の目の前にいるこれは明らかに異質で姿形である。
ハーピィは本来人間と同じぐらいのサイズであるが、コイツは人間の大きさを遥かに凌ぐサイズ。巨体のダッジ隊長ですら小さく見えるこのハーピィの存在は有り得ない。しかもハーピィはAランク指定のモンスターにも関わらず、ここにいる奴は間違いなくSランク以上の魔力の強さだった。
思わずヴァン達も空中を舞う異質な巨体ハーピィに視線を奪われ言葉を失っていた。
「此処からでも攻撃は出来るが致命傷は難しいな。エレナ、俺が風で飛ばしてやるから仕留めて来い。もしくはあの翼を使えなくして下に叩き落せ」
「えー!私ですか⁉了解!」
何故一瞬嫌がる素振りを見せたか分からないが、好戦的なエレナは言わずもがなやる気満々だ。
「頼むぞ」
エレナの特殊適性である“格闘の極み”は、皆の様に剣や槍など武器こそ使わないがその能力によって既に打撃が武器の威力を凌駕する程――。
ダッジ隊長の風魔法によって空中へ飛んだエレナは、練り上げた魔力を足へと集中させ、ハーピィ目掛け空中で旋回し鋭い回し蹴りを繰り出した。
「近くで見るとよりデカいわね……“レッグスラッシュ”!」
――シュバンッ!
『ギッ……⁉』
「落ちるよ皆ー!」
繰り出されたエレナの回し蹴りは、まるで剣で一刀両断するかの如くハーピィの両翼を切断したのだった。激しい血飛沫と共に甲高い呻き声を上げながらハーピィは地上へと落下していく。
「もらったぁぁ! 追加で食らいやがれハーピィ!炎魔法、“ファイア”!」
落下していく空中で、体勢を立て直せないハーピィ目掛けてヴァンが灼熱の炎で攻撃した。
――ボオォォォン!
『ギギャャャ……!!』
両翼を切断され全身火傷状態となったハーピィそのまま勢いよく地面に叩きつけられた。エレナとヴァンの連続攻撃でかなりのダメージを負わせたが、倒しきるまでに至らない。攻撃を食らい怒り狂ったハーピィは魔力を高め暴れ出してしまった。
「うわ、仕留め切れなかったか。滅茶苦茶怒ってるし!」
「ジェニー、ヴァン。2人で攻撃をし続けろ。俺とエレナで止めを刺しにいく」
「OK!」
「次で確実に息の根を止めてやるわ!」
ダッジ隊長の指示により、ヴァンとジェニーは距離を取った位置からハーピィに攻撃を放ち続ける。そして剣を抜いたダッジ隊長とエレナは2人の攻撃を援護にハーピィを仕留めに掛かった――。
♢♦♢
~ペトラ遺跡・最深部~
森の奥深く……。
薄暗いこの場所で、一際神秘的な輝きを放つ1人の美しい青年がいた。
『――フフフフ。どうやら来たみたいだねジークリート……。君を殺しぞびれた2000年前から、私がどれ程この日を待ちわびただろうか。
あの時の私では僅かに君に力が及ばなかった……。
人間を利用してまで君を封印した時は何とも言えぬ高揚感に包まれたが、時が経てば経つ程……君への思いが強くなっていったよジークリート。
私は後悔している。君を封印しただけでは満足出来ない。やはり君を殺したいんだ。私自らね。
さぁ、存分に楽しもうじゃないかぁジークリートよ――』