~冒険者ギルド~
束の間……と言うより、下手したら“最後”となるかもしれない3日間の休息を得た俺とレベッカは、久しぶりに自分の家に向かいながら冒険者ギルドにも顔を出した。
「――あれ、ルカじゃねぇか」
「おー、久しぶりだね! 元気にしてた?」
「お久しぶりですルカさん!レベッカさん!」
俺達に気付くなり、現マスターのフリードさんや受付のマリアちゃんが元気よく声を掛けてくれた。しかもタイミング良くジャックさんもいるじゃないか。皆元気そうで何よりだ。
「ご無沙汰してます」
「お前帰って来るなら連絡しろよな」
「ハハハ、すみません。急に休みが取れたので」
「まぁ丁度良かったぜ。俺これからクエスト依頼で1週間ぐらい街離れるからよ、鍵渡しておくぜ。帰る時は受付の彼女に渡しておいてくれ」
「本当にありがとうございます。分かりました。マリアちゃんにあずけておきますね」
「ああ。じゃあ俺行くからよ。また帰ったらゆっくり話そうぜ」
そう言ってジャックさんはギルドを後にした。
良かった……。もしかしたら最後になるかもしれないから、ジャックさんとも入れ違いにならなくて本当に良かった。ジャックさんにはお礼をしてもし切れない程恩があるからな……。
こんな俺をずっと見守っていてくれて、ありがとうございましたジャックさん――。
♢♦♢
~霊園~
家に向かう前に、俺は母さんの墓参りに来た。
レベッカに鍵を渡して先に帰って休んでくれと言ったが、一緒に来てくれると言ってくれたので2人で来た。
母さんの墓参りに誰かと行くなんて初めてだな――。
―――――――――――――――――――――――――
『X.X.X ~エミリオ・リルガーデン永眠~ 』
―――――――――――――――――――――――――
俺は買ってきた花を供え、墓の前で手を合わせた。
レベッカも同じ様に手を合わせてくれている。
母さん久しぶり……。たまにしか来れなくてごめん。でもさ、やっと全部が終わってゆっくり出来るかもしれないんだ。
あれから本当に色々あったけど……俺はこうして色んな人に支えてもらって今日まで生きてこられたよ。だから俺は、そんな風に大切に思える皆を守りたい。母さんやジークを苦しめたオロチを倒すからさ。
俺が絶対に全てを終わらせて、平和な世界にしてやるんだ。
それに何より、今の俺には失いたくない1番大切な存在がいる。
見守っててよ母さん――。
「わざわざありがとなレベッカ」
「ううん。私もルカのお母さんにお礼を言いたかったから」
俺は別にどうなっても構わない。ただレベッカだけは何が何でも無事でいてほしい。
墓参りを済ませた俺とレベッカは、久しぶりに一緒に街で買い物をしながら家に帰った。
~ルカの家~
「「ただいま」」
無意識にレベッカと声が重なった。こんな何気ない事がとても大切でかけがえのない瞬間なんだと改めて感じるな。やっぱりレベッカだけは絶対に守りたい。
「なんか懐かしいねルカ」
「そうだな。しかもジャックさんが見てくれてるから部屋も綺麗だ」
懐かしさに浸りながら、俺とレベッカはご飯の支度をしたりお風呂に入ったりと、以前ここで2人で暮らしていたのがつい昨日の事の様にも感じる。
オロチを倒して……またレベッカとこんな暮らしが出来るかな……。って言うかしたいなぁ。さっき母さんの墓の前でふと言ったけど、何時からかレベッカは俺の中で1番大切な存在になっている。
何時からだろう。自分でも明確には分からないけど、多分初めて会った時から俺は……「――ルカ!」
そんな事をボーっと思っていた次の瞬間、レベッカが俺の名前を呼んだ。ただそれだけの事なのに、レベッカの事を考えていたからドキッとしてしまった。
「ど、どうした?」
「うんちょっとね……。話したいなぁと思って。部屋入ってもいい?」
「ああ、勿論」
俺が自分の部屋でレベッカの事を考えていると、まさかの本人が来た挙句に俺の横に座ってきた。何故だか勝手に意識して心臓の動きが速い。
「いよいよオロチと戦うんだよね……。なんか実感ないなぁ」
「そうだな。奴を見た事もないし実力も定かじゃない。流石にちょっと不安があるよ」
「え、ルカでも不安になる事あるんだね。そんなに強いのに。今回も全然余裕なのかと思ってた」
「俺を何だと思ってるんだよ。普通に不安も心配もあるよ。
「フフフ。そうなんだね。それは失礼しました。でもさ……今回はちょっと怖いよ。ジークちゃんを封印して王国をモンスター達に襲わせる様な相手だもん……。ちゃんと皆で無事に帰れるよね?」
レベッカが心配になるのも無理はない。他の皆もそう思っているだろう。なにせ相手はあのオロチだからな。どれ程危ない奴なんだろう……。
「もし怖いなら辞めたっていいんだぞ。強制じゃないんだから」
「違うの! 確かに怖いけど、ルカや特殊隊の皆がいるなら心強くて大丈夫。ただ……もしかしたら、その……“最後”かもしれないって思ったから……」
「レベッカ……。え……ッ⁉」
次の瞬間、横に座っていたレベッカが俺に抱きついてきた。突然の事に反応出来なかった俺は支えきれず、腰かけていたベッドに倒れ込んだ。
ある意味押し倒された様な体勢になっている為、横たわる俺の上にレベッカが覆いかぶさっており更に鼓動が速くなったのが分かった。
「ど、ど、どうしたレベッカ……」
俺の上で俯くレベッカを見ると、彼女はその大きな瞳に薄っすらと涙を浮かべていた。
「レベッカ?」
「ルカ……私ルカが好き……。だから……最後かもしれないから……私を、抱いてほしい……」
思考停止――。
は? ちょっと待て……。今俺の事“好き”って言ったか……?レベッカが? しかも……だ、抱いてほしいって……聞き間違い……とかじゃないよな……?
待て待てヤバいぞ。何か自分の中で堪えていた感情が一気に抑えきれなくなった――。
「あ、ち、違うの! ううん……違う事はないんだけど、ご、ごめんねルカ!今の忘れて……ッ! 何か急に口走っちゃってッ……『――ギュッ……』
気が付けば俺はレベッカを抱きしめていた。
「レベッカ。俺はレベッカの事が大好きだ。今までハッキリ伝えられなくてごめん……。自分の気持ちをどうやって伝えればいいか分からないけど……。
レベッカ、俺と結婚して下さい――」
「……!」
細かい事や色々な段取が滅茶苦茶な事は分かってる。でもこれが俺の本
当の気持ちだ。
恥ずかし過ぎて顔は勿論見れないし勢いで自分から抱きしめたけど、恥ずかし過ぎて心臓がバクバクだ……。しかもレベッカからするいい香りとこの体勢のせいで理性が飛びそう。
「――フフフ。ルカの心臓の音が凄くよく聞こえる」
「あ、ああまぁな……。人生で1番緊張してるだろうから」
笑いながらそう言うと、レベッカは顔を上げ超近距離でこう言った。
「ルカ。私で良ければお願いします――」
「……!」
俺が突然したプロポーズに対して、返ってきたレベッカの言葉がそれだった。少し恥じらいながら言うレベッカの顔が何とも言えない可愛さだと思った刹那、レベッカが「大好き」と軽く俺にキスをした――。
その瞬間、俺の理性は何処かへぶっ飛んだ――。
「ごめんレベッカ。もう我慢出来ない……。レベッカの全てが欲しい」
この状況で手を出さない男が世界中のどこかに存在するのだろうか? 仮にいたとしても、俺にはもう無理だ。
「うん……。私もルカが欲しい――」
こうして、俺とレベッカはそのまま愛し合った。
珍しくぐっすりと眠れ、俺達が起きたのは昼近く。
目覚めると直ぐ側に最愛の人がいて、俺はとても幸せな気持ちだった――。
そして……。
遂に3日後のオロチ討伐の日を迎えた――。
束の間……と言うより、下手したら“最後”となるかもしれない3日間の休息を得た俺とレベッカは、久しぶりに自分の家に向かいながら冒険者ギルドにも顔を出した。
「――あれ、ルカじゃねぇか」
「おー、久しぶりだね! 元気にしてた?」
「お久しぶりですルカさん!レベッカさん!」
俺達に気付くなり、現マスターのフリードさんや受付のマリアちゃんが元気よく声を掛けてくれた。しかもタイミング良くジャックさんもいるじゃないか。皆元気そうで何よりだ。
「ご無沙汰してます」
「お前帰って来るなら連絡しろよな」
「ハハハ、すみません。急に休みが取れたので」
「まぁ丁度良かったぜ。俺これからクエスト依頼で1週間ぐらい街離れるからよ、鍵渡しておくぜ。帰る時は受付の彼女に渡しておいてくれ」
「本当にありがとうございます。分かりました。マリアちゃんにあずけておきますね」
「ああ。じゃあ俺行くからよ。また帰ったらゆっくり話そうぜ」
そう言ってジャックさんはギルドを後にした。
良かった……。もしかしたら最後になるかもしれないから、ジャックさんとも入れ違いにならなくて本当に良かった。ジャックさんにはお礼をしてもし切れない程恩があるからな……。
こんな俺をずっと見守っていてくれて、ありがとうございましたジャックさん――。
♢♦♢
~霊園~
家に向かう前に、俺は母さんの墓参りに来た。
レベッカに鍵を渡して先に帰って休んでくれと言ったが、一緒に来てくれると言ってくれたので2人で来た。
母さんの墓参りに誰かと行くなんて初めてだな――。
―――――――――――――――――――――――――
『X.X.X ~エミリオ・リルガーデン永眠~ 』
―――――――――――――――――――――――――
俺は買ってきた花を供え、墓の前で手を合わせた。
レベッカも同じ様に手を合わせてくれている。
母さん久しぶり……。たまにしか来れなくてごめん。でもさ、やっと全部が終わってゆっくり出来るかもしれないんだ。
あれから本当に色々あったけど……俺はこうして色んな人に支えてもらって今日まで生きてこられたよ。だから俺は、そんな風に大切に思える皆を守りたい。母さんやジークを苦しめたオロチを倒すからさ。
俺が絶対に全てを終わらせて、平和な世界にしてやるんだ。
それに何より、今の俺には失いたくない1番大切な存在がいる。
見守っててよ母さん――。
「わざわざありがとなレベッカ」
「ううん。私もルカのお母さんにお礼を言いたかったから」
俺は別にどうなっても構わない。ただレベッカだけは何が何でも無事でいてほしい。
墓参りを済ませた俺とレベッカは、久しぶりに一緒に街で買い物をしながら家に帰った。
~ルカの家~
「「ただいま」」
無意識にレベッカと声が重なった。こんな何気ない事がとても大切でかけがえのない瞬間なんだと改めて感じるな。やっぱりレベッカだけは絶対に守りたい。
「なんか懐かしいねルカ」
「そうだな。しかもジャックさんが見てくれてるから部屋も綺麗だ」
懐かしさに浸りながら、俺とレベッカはご飯の支度をしたりお風呂に入ったりと、以前ここで2人で暮らしていたのがつい昨日の事の様にも感じる。
オロチを倒して……またレベッカとこんな暮らしが出来るかな……。って言うかしたいなぁ。さっき母さんの墓の前でふと言ったけど、何時からかレベッカは俺の中で1番大切な存在になっている。
何時からだろう。自分でも明確には分からないけど、多分初めて会った時から俺は……「――ルカ!」
そんな事をボーっと思っていた次の瞬間、レベッカが俺の名前を呼んだ。ただそれだけの事なのに、レベッカの事を考えていたからドキッとしてしまった。
「ど、どうした?」
「うんちょっとね……。話したいなぁと思って。部屋入ってもいい?」
「ああ、勿論」
俺が自分の部屋でレベッカの事を考えていると、まさかの本人が来た挙句に俺の横に座ってきた。何故だか勝手に意識して心臓の動きが速い。
「いよいよオロチと戦うんだよね……。なんか実感ないなぁ」
「そうだな。奴を見た事もないし実力も定かじゃない。流石にちょっと不安があるよ」
「え、ルカでも不安になる事あるんだね。そんなに強いのに。今回も全然余裕なのかと思ってた」
「俺を何だと思ってるんだよ。普通に不安も心配もあるよ。
「フフフ。そうなんだね。それは失礼しました。でもさ……今回はちょっと怖いよ。ジークちゃんを封印して王国をモンスター達に襲わせる様な相手だもん……。ちゃんと皆で無事に帰れるよね?」
レベッカが心配になるのも無理はない。他の皆もそう思っているだろう。なにせ相手はあのオロチだからな。どれ程危ない奴なんだろう……。
「もし怖いなら辞めたっていいんだぞ。強制じゃないんだから」
「違うの! 確かに怖いけど、ルカや特殊隊の皆がいるなら心強くて大丈夫。ただ……もしかしたら、その……“最後”かもしれないって思ったから……」
「レベッカ……。え……ッ⁉」
次の瞬間、横に座っていたレベッカが俺に抱きついてきた。突然の事に反応出来なかった俺は支えきれず、腰かけていたベッドに倒れ込んだ。
ある意味押し倒された様な体勢になっている為、横たわる俺の上にレベッカが覆いかぶさっており更に鼓動が速くなったのが分かった。
「ど、ど、どうしたレベッカ……」
俺の上で俯くレベッカを見ると、彼女はその大きな瞳に薄っすらと涙を浮かべていた。
「レベッカ?」
「ルカ……私ルカが好き……。だから……最後かもしれないから……私を、抱いてほしい……」
思考停止――。
は? ちょっと待て……。今俺の事“好き”って言ったか……?レベッカが? しかも……だ、抱いてほしいって……聞き間違い……とかじゃないよな……?
待て待てヤバいぞ。何か自分の中で堪えていた感情が一気に抑えきれなくなった――。
「あ、ち、違うの! ううん……違う事はないんだけど、ご、ごめんねルカ!今の忘れて……ッ! 何か急に口走っちゃってッ……『――ギュッ……』
気が付けば俺はレベッカを抱きしめていた。
「レベッカ。俺はレベッカの事が大好きだ。今までハッキリ伝えられなくてごめん……。自分の気持ちをどうやって伝えればいいか分からないけど……。
レベッカ、俺と結婚して下さい――」
「……!」
細かい事や色々な段取が滅茶苦茶な事は分かってる。でもこれが俺の本
当の気持ちだ。
恥ずかし過ぎて顔は勿論見れないし勢いで自分から抱きしめたけど、恥ずかし過ぎて心臓がバクバクだ……。しかもレベッカからするいい香りとこの体勢のせいで理性が飛びそう。
「――フフフ。ルカの心臓の音が凄くよく聞こえる」
「あ、ああまぁな……。人生で1番緊張してるだろうから」
笑いながらそう言うと、レベッカは顔を上げ超近距離でこう言った。
「ルカ。私で良ければお願いします――」
「……!」
俺が突然したプロポーズに対して、返ってきたレベッカの言葉がそれだった。少し恥じらいながら言うレベッカの顔が何とも言えない可愛さだと思った刹那、レベッカが「大好き」と軽く俺にキスをした――。
その瞬間、俺の理性は何処かへぶっ飛んだ――。
「ごめんレベッカ。もう我慢出来ない……。レベッカの全てが欲しい」
この状況で手を出さない男が世界中のどこかに存在するのだろうか? 仮にいたとしても、俺にはもう無理だ。
「うん……。私もルカが欲しい――」
こうして、俺とレベッカはそのまま愛し合った。
珍しくぐっすりと眠れ、俺達が起きたのは昼近く。
目覚めると直ぐ側に最愛の人がいて、俺はとても幸せな気持ちだった――。
そして……。
遂に3日後のオロチ討伐の日を迎えた――。