この魔法攻撃はラミアの中で1番強力な魔法だ。
本気になったのか感情をコントロール出来ていないのか分からないが、この攻撃に俺も応えるとしようか――。
俺は剣を下ろし、持っていない反対側の掌を前に向けた。前方からはラミアの放った炎の塊が勢いよく飛んできている。そして、俺は前に出した掌でその炎の塊を受け止めた。
――ボウゥゥン!
「く、食らったわよ……! 皆今のうちに攻撃して!」
「よくやったラミア!」
「グハハハ! 殺してやる!」
「死ねルカー!」
炎の塊が衝突した事により、辺りは一瞬で硝煙に包まれていた。
自分の攻撃が“食らったと勘違い”したラミアに続いて、煙で視界が悪くなったところをグレイ達も狙って来た。
一体何故俺に攻撃が通じると勘違いしたんだろう……?
――ガキィィィィン!
「「……!」」
辺り一帯煙の中、金属の当たる音が闘技場に響き渡った。
「そんな馬鹿なッ……⁉」
「んぐッ……!」
「どうなってやがる……⁉ 俺達の攻撃を剣1本で……」
煙が徐々に晴れていき、視界がクリアになっていく。俺達の戦いを見ている観客たちもまたザワつき始めていた。
だがそれよりも少し早く……グレイ、ブラハム、ゴウキンの3人は、自身に起きた事に驚き動けずにいた――。
「う、嘘でしょ……⁉」
「凄い! 全員の攻撃を受け止めているぞ!」
「何が起きたんだ⁉」
「いいぞー! 一気に倒せ兄ちゃん!」
煙が完全に晴れ、俺達の姿を捉えたラミアが驚きの声を上げていた。そしてそれとほぼ同時に、多くの観客達もまた大いに盛り上がりをみせた。
「これが全力か。情けねぇな――」
あの煙の中、俺は3方向から同時に仕掛けてきたグレイ達の攻撃を、握っていた剣で全て捌いていた。
そんな落ち込まなくてもいいのに。根本的にスピードが違い過ぎるんだから。俺とお前達じゃ。しかも今ので終わらせようとしたのか、渾身の攻撃だったみたいだな。弱過ぎるけど。
「くそッ……くそくそくそくそッ!! テメェは本当にムカつくなルカァァァァァ!」
――ボオォォォォ!
攻撃を捌いた俺は今、自身の剣でグレイ、ブラハム、ゴウキンが振りかざしてきた武器を全て止めている、3対1の鍔迫り合いみたいな状況だ。3人は俺が攻撃を止めてからもずっと力を込めているのか、小刻みに体が揺れていた。
そして、この鍔迫り合いの中、グレイが最後の魔力を振り絞り、再び己の剣に炎を纏わせた。
「うらァァァァァッ!!」
グレイの雄叫びと共に、どんどん炎が強く巻き起こっていく。
「熱ッ……!」
「熱いなおいッ……!
グレイの激しい炎に耐えられないブラハムとゴウキンはその場から慌てて距離を取る。だがグレイは更に炎を強めていく。
「ゔあァァァァァァァァァァッ!!」
ヤケになっているのは一目瞭然。
ただただ怒りに身を任せたその炎は次第にグレイ本人が耐えられない程熱を帯びていき、本当に限界まで上げた最大火力であろう炎を纏わせ渾身の一振りを放ってきた。
「死ねッ!ルカァァァァァァァァァァーー!!」
「1人で暑苦しいんだよ――」
――ボフンッ……!
俺はまるでゴミでも払うかの様にグレイの炎を払った。
だって1人で五月蠅いし微妙に蒸し暑い。
「う……噓だろ……。有り得ない……」
今ので完全にグレイは魔力切れ。戦意も喪失したみたいだ。
「<魔力切れか? じゃあ早く薬草飲めよ>」
俺はグレイ達に再び覇気を飛ばしながら命令した。抵抗しつつも薬草を飲んだグレイ達は、体力と魔力が戻って再び威勢も取り戻した。
「ふ、ふざけんじゃねぇクソッ!」
「どこまで俺達を弄ぶ気だコイツ……!」
「こうなったら薬草使いまくって渾身の攻撃を放ち続けてやる!」
本当に根性というか執念だけは凄まじいものを感じるな……。その勢いをもうちょっと他に向けられていれば良かったのに。まぁそんな事言っても今更だけどな。
回復して開き直ったグレイ達は、その後怒涛の攻撃を仕掛けてきたのだった。
「「うおぉぉぉッ!!」」
♢♦♢
もうどのぐらい時間が経った……?
あれからというもの、グレイ達は4人で絶え間なく攻撃を繰り出していた。魔力が切れては薬草を使い、体力が切れては薬草を使う……何十回もその繰り返し。
そして遂に、今のが最後の薬草だ――。
「ハァ……ハァ……」
「……」
「もうやりたくねぇ……」
「……グハハ……」
全員、薬草で魔力も体力も回復しているものの、既に何時からか気持ちが折れていた。目にも生気が感じられない。まるで生きた屍の様だ。
何十回……何百回……。何をやってもどんな攻撃をしても、一切俺にダメージになる事は無かった。傍から見ればやり過ぎかもしれない。少なからず同情する者もいるだろう。
だが悪いがそんな事どうでもいい――。
これは俺とグレイ達の問題なんだ――。
それに、散々俺達にしてきた仕打ちに比べれば大したことはないだろ。
「今のが最後の薬草か……。詰まらないな。もっと用意しておけば良かった」
グレイ達の精神はもはや崩壊寸前なのだろう。あれだけあった威勢が全員から消えている。もうまともに言い返す事も出来ないらしい。
ここまでだな……。
「仕方ない。もう終わりにッ……「――ゔらァァァァッ!」
本当にこれで終わりだと思ったまさにその刹那。
消えかけの蝋燭が最後に激しく燃えるかの如く、最後の最後に突如グレイが雄叫びを上げた。本能が訴えかけているのだろう……。
「凄いよ。ほんと大した根性だ……。それだけ残念でもあるけどな」
グレイの声に呼応する様に、他の3人も生気を取り戻し、本当に本当の最後の攻撃を仕掛けてた――。
「くたばりやがれルカーーッ!」
「――あの時、お前達に“最後に言った”だろ? ブラハム……お前は槍使いのくせに突きが甘いと」
もう何時もの連携攻撃ではなかった。全員がただ本能的に意のまま攻撃を繰り出してきただけだった。
最初に来たのはブラハム。相変わらず突きが甘い槍で俺を突いてきたが、俺はいとも簡単にその攻撃を躱し、剣の柄でブラハムに突きを放った。
――ズガンッ!
「こうやって突くんだよ」
俺の攻撃を食らったブラハムは凄い勢いで闘技場の壁までぶっ飛び、そのまま打ちつけられた衝撃で気を失い地面に落ちた。
「くたばれクソ雑魚がッ!」
「ゴウキン……お前は攻撃が大振り過ぎて、次の動作が遅れる」
言うだけ無駄か。得意の大振り放ってきたゴウキンに対し、俺はまたスッと攻撃を躱しながらガラ空きになった巨体の腹部目掛け、拳を打ち込んだ。
――ドンッ!
「そんな大振りは当たらない」
ブラハム程飛ばなかったが、ゴウキンも殴られた腹部を悶絶するように抑えながら意識を失った。
「アンタなんか本ッッ当に大嫌い!!」
「俺も全く同じ意見だ。ラミア……お前は魔法に余計な魔力を込め過ぎだと言ってやっただろ。何でもかんでも欲張るな、尻軽女が」
ある意味意見が最も合っていたかもな。俺もお前が凄く嫌だったよ。魔法使いだから魔法で教えてやるよ。
――バチバチバチッ!
「コレが魔法の使い方だ」
俺はラミアに雷魔法を放ったが、全く当たっていない。奴の周りに撃ち込んだだけで悲鳴と共に気絶した。
残るは……。
「ゔらぁぁぁッ! 消えろルカァァァ!」
「グレイ……お前ともこれで最後だ――」
グレイは激しい炎を剣に纏わせ、思い切り振り下ろしてきた。俺も同様に炎を剣に纏わせ、グレイ目掛けて振り下ろした。
――ガキィィィィンッ!
互いの剣が衝突した刹那、目を閉じてしまう程の光が生じた。
そして、僅か1秒にも満たないその光が一瞬で収まると、砕かれた剣と共にグレイは気を失ってその場に倒れたのだった。
――キィン……。
一呼吸吐きながら、俺は剣を鞘へと閉まった。
「――ここまでッ! 只今の攻撃によりグレイパーティ戦闘不能!よって、本日の決闘……勝者はルカ・リルガーデン!!」
「「おおぉぉぉぉぉッ!!」」
こうして、俺とグレイ達の決闘は幕を閉じた――。
本気になったのか感情をコントロール出来ていないのか分からないが、この攻撃に俺も応えるとしようか――。
俺は剣を下ろし、持っていない反対側の掌を前に向けた。前方からはラミアの放った炎の塊が勢いよく飛んできている。そして、俺は前に出した掌でその炎の塊を受け止めた。
――ボウゥゥン!
「く、食らったわよ……! 皆今のうちに攻撃して!」
「よくやったラミア!」
「グハハハ! 殺してやる!」
「死ねルカー!」
炎の塊が衝突した事により、辺りは一瞬で硝煙に包まれていた。
自分の攻撃が“食らったと勘違い”したラミアに続いて、煙で視界が悪くなったところをグレイ達も狙って来た。
一体何故俺に攻撃が通じると勘違いしたんだろう……?
――ガキィィィィン!
「「……!」」
辺り一帯煙の中、金属の当たる音が闘技場に響き渡った。
「そんな馬鹿なッ……⁉」
「んぐッ……!」
「どうなってやがる……⁉ 俺達の攻撃を剣1本で……」
煙が徐々に晴れていき、視界がクリアになっていく。俺達の戦いを見ている観客たちもまたザワつき始めていた。
だがそれよりも少し早く……グレイ、ブラハム、ゴウキンの3人は、自身に起きた事に驚き動けずにいた――。
「う、嘘でしょ……⁉」
「凄い! 全員の攻撃を受け止めているぞ!」
「何が起きたんだ⁉」
「いいぞー! 一気に倒せ兄ちゃん!」
煙が完全に晴れ、俺達の姿を捉えたラミアが驚きの声を上げていた。そしてそれとほぼ同時に、多くの観客達もまた大いに盛り上がりをみせた。
「これが全力か。情けねぇな――」
あの煙の中、俺は3方向から同時に仕掛けてきたグレイ達の攻撃を、握っていた剣で全て捌いていた。
そんな落ち込まなくてもいいのに。根本的にスピードが違い過ぎるんだから。俺とお前達じゃ。しかも今ので終わらせようとしたのか、渾身の攻撃だったみたいだな。弱過ぎるけど。
「くそッ……くそくそくそくそッ!! テメェは本当にムカつくなルカァァァァァ!」
――ボオォォォォ!
攻撃を捌いた俺は今、自身の剣でグレイ、ブラハム、ゴウキンが振りかざしてきた武器を全て止めている、3対1の鍔迫り合いみたいな状況だ。3人は俺が攻撃を止めてからもずっと力を込めているのか、小刻みに体が揺れていた。
そして、この鍔迫り合いの中、グレイが最後の魔力を振り絞り、再び己の剣に炎を纏わせた。
「うらァァァァァッ!!」
グレイの雄叫びと共に、どんどん炎が強く巻き起こっていく。
「熱ッ……!」
「熱いなおいッ……!
グレイの激しい炎に耐えられないブラハムとゴウキンはその場から慌てて距離を取る。だがグレイは更に炎を強めていく。
「ゔあァァァァァァァァァァッ!!」
ヤケになっているのは一目瞭然。
ただただ怒りに身を任せたその炎は次第にグレイ本人が耐えられない程熱を帯びていき、本当に限界まで上げた最大火力であろう炎を纏わせ渾身の一振りを放ってきた。
「死ねッ!ルカァァァァァァァァァァーー!!」
「1人で暑苦しいんだよ――」
――ボフンッ……!
俺はまるでゴミでも払うかの様にグレイの炎を払った。
だって1人で五月蠅いし微妙に蒸し暑い。
「う……噓だろ……。有り得ない……」
今ので完全にグレイは魔力切れ。戦意も喪失したみたいだ。
「<魔力切れか? じゃあ早く薬草飲めよ>」
俺はグレイ達に再び覇気を飛ばしながら命令した。抵抗しつつも薬草を飲んだグレイ達は、体力と魔力が戻って再び威勢も取り戻した。
「ふ、ふざけんじゃねぇクソッ!」
「どこまで俺達を弄ぶ気だコイツ……!」
「こうなったら薬草使いまくって渾身の攻撃を放ち続けてやる!」
本当に根性というか執念だけは凄まじいものを感じるな……。その勢いをもうちょっと他に向けられていれば良かったのに。まぁそんな事言っても今更だけどな。
回復して開き直ったグレイ達は、その後怒涛の攻撃を仕掛けてきたのだった。
「「うおぉぉぉッ!!」」
♢♦♢
もうどのぐらい時間が経った……?
あれからというもの、グレイ達は4人で絶え間なく攻撃を繰り出していた。魔力が切れては薬草を使い、体力が切れては薬草を使う……何十回もその繰り返し。
そして遂に、今のが最後の薬草だ――。
「ハァ……ハァ……」
「……」
「もうやりたくねぇ……」
「……グハハ……」
全員、薬草で魔力も体力も回復しているものの、既に何時からか気持ちが折れていた。目にも生気が感じられない。まるで生きた屍の様だ。
何十回……何百回……。何をやってもどんな攻撃をしても、一切俺にダメージになる事は無かった。傍から見ればやり過ぎかもしれない。少なからず同情する者もいるだろう。
だが悪いがそんな事どうでもいい――。
これは俺とグレイ達の問題なんだ――。
それに、散々俺達にしてきた仕打ちに比べれば大したことはないだろ。
「今のが最後の薬草か……。詰まらないな。もっと用意しておけば良かった」
グレイ達の精神はもはや崩壊寸前なのだろう。あれだけあった威勢が全員から消えている。もうまともに言い返す事も出来ないらしい。
ここまでだな……。
「仕方ない。もう終わりにッ……「――ゔらァァァァッ!」
本当にこれで終わりだと思ったまさにその刹那。
消えかけの蝋燭が最後に激しく燃えるかの如く、最後の最後に突如グレイが雄叫びを上げた。本能が訴えかけているのだろう……。
「凄いよ。ほんと大した根性だ……。それだけ残念でもあるけどな」
グレイの声に呼応する様に、他の3人も生気を取り戻し、本当に本当の最後の攻撃を仕掛けてた――。
「くたばりやがれルカーーッ!」
「――あの時、お前達に“最後に言った”だろ? ブラハム……お前は槍使いのくせに突きが甘いと」
もう何時もの連携攻撃ではなかった。全員がただ本能的に意のまま攻撃を繰り出してきただけだった。
最初に来たのはブラハム。相変わらず突きが甘い槍で俺を突いてきたが、俺はいとも簡単にその攻撃を躱し、剣の柄でブラハムに突きを放った。
――ズガンッ!
「こうやって突くんだよ」
俺の攻撃を食らったブラハムは凄い勢いで闘技場の壁までぶっ飛び、そのまま打ちつけられた衝撃で気を失い地面に落ちた。
「くたばれクソ雑魚がッ!」
「ゴウキン……お前は攻撃が大振り過ぎて、次の動作が遅れる」
言うだけ無駄か。得意の大振り放ってきたゴウキンに対し、俺はまたスッと攻撃を躱しながらガラ空きになった巨体の腹部目掛け、拳を打ち込んだ。
――ドンッ!
「そんな大振りは当たらない」
ブラハム程飛ばなかったが、ゴウキンも殴られた腹部を悶絶するように抑えながら意識を失った。
「アンタなんか本ッッ当に大嫌い!!」
「俺も全く同じ意見だ。ラミア……お前は魔法に余計な魔力を込め過ぎだと言ってやっただろ。何でもかんでも欲張るな、尻軽女が」
ある意味意見が最も合っていたかもな。俺もお前が凄く嫌だったよ。魔法使いだから魔法で教えてやるよ。
――バチバチバチッ!
「コレが魔法の使い方だ」
俺はラミアに雷魔法を放ったが、全く当たっていない。奴の周りに撃ち込んだだけで悲鳴と共に気絶した。
残るは……。
「ゔらぁぁぁッ! 消えろルカァァァ!」
「グレイ……お前ともこれで最後だ――」
グレイは激しい炎を剣に纏わせ、思い切り振り下ろしてきた。俺も同様に炎を剣に纏わせ、グレイ目掛けて振り下ろした。
――ガキィィィィンッ!
互いの剣が衝突した刹那、目を閉じてしまう程の光が生じた。
そして、僅か1秒にも満たないその光が一瞬で収まると、砕かれた剣と共にグレイは気を失ってその場に倒れたのだった。
――キィン……。
一呼吸吐きながら、俺は剣を鞘へと閉まった。
「――ここまでッ! 只今の攻撃によりグレイパーティ戦闘不能!よって、本日の決闘……勝者はルカ・リルガーデン!!」
「「おおぉぉぉぉぉッ!!」」
こうして、俺とグレイ達の決闘は幕を閉じた――。