♢♦♢
何がどうなってこんな状況になるんだ……?
連行された理由は今確かに騎士団員の人の報告で分かった。まさかのグレイの野郎達が密告したらしい。助けてあげたなんて恩着せがましい事は思っていなかったが、こうなると全く話は別だ。折角助けてやったのにそのお返しがコレか! お前達が本当に腐りきったゴミだという事がよ~~く分かった。
一瞬この場でぶん殴ってやろうかと思うぐらいムカついたが、それ以上に俺はこの思いがけない展開に驚いている。
何で……?
何で王国が誇る気高き騎士団の方が俺の前で膝を付いている……?
しかも“大団長”って、何百人も所属している騎士団員の中でも全てのトップに立つとんでもなく偉くて強くて凄くて威厳のある御方が何故俺の前で膝を付いて謝っているんだ――。
突然の事に思考停止すること数秒、我に返った俺は慌てて自分も両膝を付きながらモレー大団長に声を掛けた
「ち、ちょッ……いやいやいや! や、止めて下さいよ大団長……!何をしてるんですか⁉ 早く頭を上げてください! あ、あの、俺全然……全く気にしてないですから!はい!」
大団長様が俺に謝るなんてお門違いもいいところだ。きっと国王から招待を受けている事もあって、自分の部下の行動にも責任を感じての事なんだろうけど……。
「本当に申し訳ございません」
「いや、こちらこそ本当にもう大丈夫ですから……! 」
俺はそう大団長に言ったが、大団長はまだ自分を許せていないのか渋々立ち上がった。
「このような無礼の後で申し上げにくいのですが、実は国王様が貴方とお話をされたいと申しておりまして、宜しければお時間を頂けますか?」
「え、国王様が……⁉ そ、それは勿論行かせて頂きますけど……」
「ありがとうございます。それでは此方へどうぞ」
モレー大団長はそう言って振り返り歩いて行った。俺もその大団長の後ろについて歩み出した。……まさにその時、俺の背後からバタバタと複数の足音が響いてきた。
俺はその音を聞くなり無意識に溜息を付いていた。
わざわざ振り返らなくても分かる。だってこの足音は……。
「――待って下さいモレー大団長!」
大声でそう叫んだのは、他でもないグレイだ。
「誰かね君は……」
「あ、あの……俺は王都のギルドに所属している冒険者のグレイと言います! ソイツは……ルカは俺の元パーティで、ルカが危険なモンスターを召喚していると俺が報告しました!」
「成程、君が発端か……。それで?彼が危険なモンスターを召喚しているという証拠は?」
「はい! 大団長も先程見たと思いますが、突然現れたもう1頭のドラゴン……あの正体がそこにるルカなんですッ! コイツは昔俺に、自分から竜神王ジークリートを召喚したと告白してきました!
竜神王は大昔に封印される程危険な存在ですよね⁉ このまま国王に会わせたら絶対に危険です!」
ここまでくると逆に感心する。その執念と根性だけは認めざるを得ないなグレイ……。
「そ、そうです! こんな奴を国王の前に連れて行くなど危な過ぎます!何時さっきのドラゴンの姿で皆を襲うか……!」
「今すぐに捕まえて下さい! このままだと国王だけでなく、王国中の人々が危険になりますよ!」
「それにコイツはこの力を悪用しています……! FランクがいきなりSSSランクになったり、パーティを追放した腹いせに俺達のクエストの妨害までしてたんですよッ!」
グレイに続きラミア、ブラハム、ゴウキンが立て続けにそう言い放った。
人間というのは落ちるところまで落ちると“こうなる”のか……。実に哀れだ。最早怒りなど通り越して呆れて物が言えない。
「……そうか。君達の言い分はよく分かった」
グレイ達の話を聞いたモレー大団長が静かにそう言った。
「あ、ありがとうございますッ! だった早くコイツを拘束しッ……「――それで、“証拠”は?」
――ゾクッ……!
グレイの言葉を遮る様に再度そう言ったモレー大団長。
静かな口調ながらも大団長から放たれているとてつもなく冷たい威圧に、グレイ達は皆それ以上言葉を発せられなかった。
その威圧を放たれていない俺にもよく分かる……。下手に何か喋ればただでは済まないと言う恐ろしい雰囲気が――。
「どうやら彼が危険なモンスターを召喚していると言う事や、さっきのドラゴンが彼だと言う証拠が1つもないようだな。
本来ならば、君達のその報告は私の部下がしっかりと精査した上で調査等を始める。だが今はドラゴンが出現したという不測の事態によって、多くの者達が少々冷静さを欠いている様だ……。
確かに、逆を言えば私も彼がその危険なモンスターを召喚していないと君達に証明するのは不可能。
だが、先のドラゴンが彼だと言うならば、私や国王様は勿論、この場にいた者全員が彼に救われたと言える! 無論、その中には君達も入っている――」
グレイ達は完全に論破されただろう。俺が言うのもアレだけど、もう諦めろよ。
「た、確かにそうかもしれませんが……!でもッ……!」
「――ならば私から説明しようかね」
突如、透き通るような声がこの場に響いた。決して声量があったとは言えない。だが確実にしっかりと全員の耳に届いていた。穏やかながらどこか気品のあるその声がした方向へ視線を移すと、そこにはドラシエル王国の国王、ネロ・ユーテリアス・ジキルドの姿があった──。
「こ、国王様……!」
――ザッ!
その場にいた護衛や騎士団員達が一斉に膝をつき敬礼をした。
綺麗に束ねられた艶のある髪に、だらしなさを一切感じさせない整った髭。濃い青色の力強い瞳とその王たる圧巻の品格に、全員が言葉を失った。
国王の年齢はまだ40代前半。先代の国王はモンスターによって受けた怪我により既に亡くなっており、15年以上も前から彼がドラシエル王国の唯一無二の国王である。
「――皆の者、顔を上げよ。先の出来事で皆疲れているだろう。今はもっと気軽にして良い」
国王の人個によって、全員が緊張しつつも敬礼を解いた。
「一通りの話を聞かせてもらった。君がルカ・リルガーデンだね?」
「は、はい……」
国王を初めてこんな近くで見た俺は、まだ現実味がまるでない。ずっとフワフワした様な感覚だ。
「そして彼が危険だと訴えているのが君達か?」
俺と同様。
グレイ達もただ国王に尋ねられただけなのに、その存在感からただただ小さい返事を返す事しか出来なかった。
「は、はい……」
「成程。それでは私の口からハッキリさせておこう。
彼、ルカ・リルガーデンは確かに竜神王ジークリートを召喚し、その身にジークリートの魔力を宿しているとマスターからの報告で聞いている。
だがその力が危険なものでなく、しかと本人がジークリートの魔力を使いこなしているという事までな――」
マスターからは報告しておくと言われてたけど、実際に国王の口から聞くととても信じられない……。本当に俺なんかを認知してくれているんだ……。正確にはジークの力を持っているからだとは思うけど……。
「そ、そんな……。何故ギルドのマスターがルカなんかを相手に……。い、いや、でもッ!国王様……! 俺達冒険者はモンスターを討伐するのが目的の筈! その冒険者がモンスターの力を使っているなんて言語道断ではないでしょうか⁉
それに例え力を使いこなしていると証明されても、モンスターを体に宿している奴なんて本当に信用出来るんでしょうか⁉ しかもそのモンスターはあの竜神王ジークリートですよね……!」
この切羽詰まった状況でよく舌が回るものだ。往生際の悪さはSSSランクだな間違いなく。まぁ信用問題を出されたら、俺ももう何も言えないけどな。
「そうか……。確かに君の言う事も一理あるな。それに私が何を言っても君は納得しなさそうだ。うん……ではこうしよう。
君と彼で“直接対決”をして、より安全だと言う事を直に私に証明してくれ――」
「「……!」」
何とも奇妙な展開になってきた――。
何がどうなってこんな状況になるんだ……?
連行された理由は今確かに騎士団員の人の報告で分かった。まさかのグレイの野郎達が密告したらしい。助けてあげたなんて恩着せがましい事は思っていなかったが、こうなると全く話は別だ。折角助けてやったのにそのお返しがコレか! お前達が本当に腐りきったゴミだという事がよ~~く分かった。
一瞬この場でぶん殴ってやろうかと思うぐらいムカついたが、それ以上に俺はこの思いがけない展開に驚いている。
何で……?
何で王国が誇る気高き騎士団の方が俺の前で膝を付いている……?
しかも“大団長”って、何百人も所属している騎士団員の中でも全てのトップに立つとんでもなく偉くて強くて凄くて威厳のある御方が何故俺の前で膝を付いて謝っているんだ――。
突然の事に思考停止すること数秒、我に返った俺は慌てて自分も両膝を付きながらモレー大団長に声を掛けた
「ち、ちょッ……いやいやいや! や、止めて下さいよ大団長……!何をしてるんですか⁉ 早く頭を上げてください! あ、あの、俺全然……全く気にしてないですから!はい!」
大団長様が俺に謝るなんてお門違いもいいところだ。きっと国王から招待を受けている事もあって、自分の部下の行動にも責任を感じての事なんだろうけど……。
「本当に申し訳ございません」
「いや、こちらこそ本当にもう大丈夫ですから……! 」
俺はそう大団長に言ったが、大団長はまだ自分を許せていないのか渋々立ち上がった。
「このような無礼の後で申し上げにくいのですが、実は国王様が貴方とお話をされたいと申しておりまして、宜しければお時間を頂けますか?」
「え、国王様が……⁉ そ、それは勿論行かせて頂きますけど……」
「ありがとうございます。それでは此方へどうぞ」
モレー大団長はそう言って振り返り歩いて行った。俺もその大団長の後ろについて歩み出した。……まさにその時、俺の背後からバタバタと複数の足音が響いてきた。
俺はその音を聞くなり無意識に溜息を付いていた。
わざわざ振り返らなくても分かる。だってこの足音は……。
「――待って下さいモレー大団長!」
大声でそう叫んだのは、他でもないグレイだ。
「誰かね君は……」
「あ、あの……俺は王都のギルドに所属している冒険者のグレイと言います! ソイツは……ルカは俺の元パーティで、ルカが危険なモンスターを召喚していると俺が報告しました!」
「成程、君が発端か……。それで?彼が危険なモンスターを召喚しているという証拠は?」
「はい! 大団長も先程見たと思いますが、突然現れたもう1頭のドラゴン……あの正体がそこにるルカなんですッ! コイツは昔俺に、自分から竜神王ジークリートを召喚したと告白してきました!
竜神王は大昔に封印される程危険な存在ですよね⁉ このまま国王に会わせたら絶対に危険です!」
ここまでくると逆に感心する。その執念と根性だけは認めざるを得ないなグレイ……。
「そ、そうです! こんな奴を国王の前に連れて行くなど危な過ぎます!何時さっきのドラゴンの姿で皆を襲うか……!」
「今すぐに捕まえて下さい! このままだと国王だけでなく、王国中の人々が危険になりますよ!」
「それにコイツはこの力を悪用しています……! FランクがいきなりSSSランクになったり、パーティを追放した腹いせに俺達のクエストの妨害までしてたんですよッ!」
グレイに続きラミア、ブラハム、ゴウキンが立て続けにそう言い放った。
人間というのは落ちるところまで落ちると“こうなる”のか……。実に哀れだ。最早怒りなど通り越して呆れて物が言えない。
「……そうか。君達の言い分はよく分かった」
グレイ達の話を聞いたモレー大団長が静かにそう言った。
「あ、ありがとうございますッ! だった早くコイツを拘束しッ……「――それで、“証拠”は?」
――ゾクッ……!
グレイの言葉を遮る様に再度そう言ったモレー大団長。
静かな口調ながらも大団長から放たれているとてつもなく冷たい威圧に、グレイ達は皆それ以上言葉を発せられなかった。
その威圧を放たれていない俺にもよく分かる……。下手に何か喋ればただでは済まないと言う恐ろしい雰囲気が――。
「どうやら彼が危険なモンスターを召喚していると言う事や、さっきのドラゴンが彼だと言う証拠が1つもないようだな。
本来ならば、君達のその報告は私の部下がしっかりと精査した上で調査等を始める。だが今はドラゴンが出現したという不測の事態によって、多くの者達が少々冷静さを欠いている様だ……。
確かに、逆を言えば私も彼がその危険なモンスターを召喚していないと君達に証明するのは不可能。
だが、先のドラゴンが彼だと言うならば、私や国王様は勿論、この場にいた者全員が彼に救われたと言える! 無論、その中には君達も入っている――」
グレイ達は完全に論破されただろう。俺が言うのもアレだけど、もう諦めろよ。
「た、確かにそうかもしれませんが……!でもッ……!」
「――ならば私から説明しようかね」
突如、透き通るような声がこの場に響いた。決して声量があったとは言えない。だが確実にしっかりと全員の耳に届いていた。穏やかながらどこか気品のあるその声がした方向へ視線を移すと、そこにはドラシエル王国の国王、ネロ・ユーテリアス・ジキルドの姿があった──。
「こ、国王様……!」
――ザッ!
その場にいた護衛や騎士団員達が一斉に膝をつき敬礼をした。
綺麗に束ねられた艶のある髪に、だらしなさを一切感じさせない整った髭。濃い青色の力強い瞳とその王たる圧巻の品格に、全員が言葉を失った。
国王の年齢はまだ40代前半。先代の国王はモンスターによって受けた怪我により既に亡くなっており、15年以上も前から彼がドラシエル王国の唯一無二の国王である。
「――皆の者、顔を上げよ。先の出来事で皆疲れているだろう。今はもっと気軽にして良い」
国王の人個によって、全員が緊張しつつも敬礼を解いた。
「一通りの話を聞かせてもらった。君がルカ・リルガーデンだね?」
「は、はい……」
国王を初めてこんな近くで見た俺は、まだ現実味がまるでない。ずっとフワフワした様な感覚だ。
「そして彼が危険だと訴えているのが君達か?」
俺と同様。
グレイ達もただ国王に尋ねられただけなのに、その存在感からただただ小さい返事を返す事しか出来なかった。
「は、はい……」
「成程。それでは私の口からハッキリさせておこう。
彼、ルカ・リルガーデンは確かに竜神王ジークリートを召喚し、その身にジークリートの魔力を宿しているとマスターからの報告で聞いている。
だがその力が危険なものでなく、しかと本人がジークリートの魔力を使いこなしているという事までな――」
マスターからは報告しておくと言われてたけど、実際に国王の口から聞くととても信じられない……。本当に俺なんかを認知してくれているんだ……。正確にはジークの力を持っているからだとは思うけど……。
「そ、そんな……。何故ギルドのマスターがルカなんかを相手に……。い、いや、でもッ!国王様……! 俺達冒険者はモンスターを討伐するのが目的の筈! その冒険者がモンスターの力を使っているなんて言語道断ではないでしょうか⁉
それに例え力を使いこなしていると証明されても、モンスターを体に宿している奴なんて本当に信用出来るんでしょうか⁉ しかもそのモンスターはあの竜神王ジークリートですよね……!」
この切羽詰まった状況でよく舌が回るものだ。往生際の悪さはSSSランクだな間違いなく。まぁ信用問題を出されたら、俺ももう何も言えないけどな。
「そうか……。確かに君の言う事も一理あるな。それに私が何を言っても君は納得しなさそうだ。うん……ではこうしよう。
君と彼で“直接対決”をして、より安全だと言う事を直に私に証明してくれ――」
「「……!」」
何とも奇妙な展開になってきた――。