♢♦♢
~ガメル山脈山頂付近~
「――ありがとうございましたフリードさん!」
「おお、ルカ君! 良かった良かった……。久々にテンション上がる相手だったけど、流石に偽物でもドラゴンを相手にするのは少々骨が折れる」
俺がグレイ達を安全な所に送っている間、フリードさん達が懸命にルージュドラゴンの相手をしてくれていた。フリードさんや他の人達の呼吸が少し荒くなっているのが分かる。俺の勝手ですみません皆さん……。
「リアーナさん! 俺が教えた薬草作ったんですよね? 後は俺に任せて、皆離れて体力を回復して下さい!」
事は一分一秒を争う状況。話している間にも時間は止まることなく皆が必死にルージュドラゴンと攻防を繰り広げている。
「フリードさんも急いで下さい。後、なるべく離れる様皆に伝えてもらえますか」
「よし、分かったよ。ジークリートの攻撃がどれ程の物か見学させてもらうとしよう」
そう言って、フリードさんの号令で皆が一斉に最後の攻撃を放った後、皆は急いで山を下って行った。
<さぁ、久方ぶりに火力を出そうか――>
少し不謹慎だが、ジークは久々に力を出せる相手で嬉しそうだ。俺はドラゴンの姿のままルージュドラゴンの長い首に噛み付き、奴が怯んだ一瞬を見計らい練り上げていた魔力で魔法を放った。
「“天雷の裁き”――!」
ルージュドラゴンの巨体を上回る大きい雷が天空から放たれた。
迸るい稲妻が轟音を響かせながら、一瞬でルージュドラゴンに直撃し、丸焦げになった奴は完全に動かなくなった。
「よし。上手く決まったな」
<我の力なら余裕であるが、久方のこの威力は気分が良い>
「ハハハ、それなら良かった」
ルージュドラゴンを倒した俺は人間の姿に戻った。
さぁ~て、本当の問題はここからだ――。
「状況が状況なだけに思わずドラゴンの姿にまでなってしまったが……。今からどうしよう? 俺とは分からないまでも結構な人数に見られたよなきっと……」
例え一部の人達がジークの事を理解してくれているとしても、それが大勢の人に知れ渡って不安を抱いてしまうという事になれば、当然話は変わってくるだろうな。
体にドラゴンがいるなんて、普通から見れば怖いし不気味なそんざいだよな……。急に意見が翻って俺も王国から追放とかなったらどうしよう……。いや、それならまだマシか。下手したら死刑かもしれない。
「――ルカ!!」
「レベッカ……」
慌てた様子でこちらへ走ってくるレベッカ。
そうだ。レベッカもジークの事は知っているけど、俺があんな化け物みたいな姿になるところを見たんだから嫌われたかもしれなッ……『――ギュ……!』
息を切らしながら走って来たレベッカは、そのまま何故か俺に抱きついてきた。
ええぇぇぇぇッ……⁉
お、俺今抱きつかれてる……⁉ レベッカに……⁉
予想外過ぎる出来事に体が硬直した。
「あ、お、おいッ……レ、レベッカ……」
「無事で良かったルカ! 凄いよ! ドラゴン倒しちゃうなんて!」
大きな瞳を更に大きく見開き、レベッカは笑顔で俺にそう言ってきた。可愛く整った顔が眼前にまで迫り俺はとても恥ずかしかったが、数秒前に抱いた一抹の不安はいつの間にか消え去っていた。
レベッカに続き、フリードさん達も皆集まって来た。
「驚いたよ。まさかドラゴンを一撃で倒すとはね」
「流石ですねルカ君」
「本当に凄かったよ! 君が噂の少年だったのか」
「王都のギルドにはとんでもない子がいるわね」
皆が俺を賞賛してくれている。良かった……。避けられり怖がられたらどうしようかと心配だったけど……。俺は周りの人達に恵まれているようだ。
そう思えた瞬間、うっすらと視界が滲んだ。
俺はきっと、自分で思っていた以上に自分に蓋をしていたんだろうな……。グレイ達との長い時間で、いつの間にかそれが当たり前になったいたんだ。
笑いながら話す皆の顔を見て、俺はとても穏やかな気持ちになっていた。
「よし、ルージュドラゴンの素材を回収して、僕達も皆の所に戻ろう」
「――ルカ・リルガーデンというのは誰だ?」
「「……!」」
フリードさんがそう言った矢先、俺達が話している場所とは少し離れた所か声が響いてきた。視線を移すと、そこには甲冑を着た騎士団員が4人程おり、何やら物々しい雰囲気を纏っていた。
「あ、あのー、ルカは俺ですけど……?」
「貴様がルカ・リルガーデンか!」
俺を認識した途端、騎士団員の人達は声を荒げ更に顔つきが険しくなった。俺は勿論、フリードさん達もこの状況に全くピンときていない。
「ルカ・リルガーデン! 貴様が危険なモンスターを召喚し、その力を“悪用しているとの報告”が入った。直ちに我々と共に来てもらおう」
「「――⁉」」
唐突な騎士団員の言葉に、俺達は驚いて目を見合わせていた。そして呆気に取られているそんな俺達を他所に、騎士団員は俺に近付き無理矢理拘束しようとしてきた。
「え、ちょっと……どういう事ですか⁉」
この時、俺の背筋に嫌な汗が流れた。
もしかして今のドラゴンの姿を見た多くの人達が恐怖を覚えたのではないかと――。
急な展開に勿論驚いているが、心の何処かで落ち着きもあった。やはり“こういう反応”が正しいのではと、少なからず抱いていたからだ……。
「――お待ち下さい」
騎士団員が俺を拘束しよとした瞬間、フリードさんがそれを止めた。
「僕は王都のギルドに所属しているフリード・スターマン。何故彼を拘束するのですか? その報告は一体誰からのものでしょうか」
「お前達に事情を話す必要はない。兎も角連行しろとの上からの指示だ。さぁ、早く我々と来るんだ!」
「何言ってるんですか! ルカは今ドラゴンを倒して皆を助けたんですよ!」
「ああ、その通りだ! お前達もそれで今助かってるんだろう。間違いなく命の恩人である彼に何の文句がある」
フリードさん達が俺の為に騎士団の人達を説得してくれている。しかし少なからず騎士団も組織。上から命令されていると言う彼らもまた引く訳にはいかない様子だ。
「……それは確かにそうであるが、先程も言った通り我々も命令の元動いているのだ。お前達が何と言おうと彼は連行する!」
「だからそれが納得いかないと言っているだろう!」
折角ルージュドラゴンを倒して皆無事だったのに、何でこんな無意味な争いを……。
「――分かりました! 取り敢えず俺は貴方達一緒に行きます。なのでもう言い争いはやめて下さい!」
俺はこの場を鎮めようとそう言った。だってこんなの誰も得しない。
「ル、ルカ君ッ……⁉」
「大丈夫ですよ。 いざとなったら余裕で逃げ出せますから」
俺はフリードさんの耳元で静かにそう言い、心配そうに見つめるレベッカにも“大丈夫だ”と頷いて伝えた。皆の気持ちは嬉しかった。でもこんな争いはやめてほしい。どの道これは何時かきっちり向かい合わないといけない俺の問題でもある。
……と、格好つけた事を言いたいが、もし本当にヤバい状況になったら悪いが俺は本気で逃げ出す!
勿論正当な理由があったなら、それは俺の運命だから受け入れる。だがもし納得いかない曖昧な理由で処罰されそうになったら、申し訳ないが逃げさせてもらいます。当然皆さんに被害は与えませんが、しっかり逃げさせて頂きます。
騎士団員に連行されながら、俺はある程度気持ちの整理が付き覚悟を決めていた。俺にも非があるからな。
そう思っていたのだがこの後……。
これまた誰もが予想だにしていなかったであろう方向に、話は進んでいくのであった――。
~ガメル山脈山頂付近~
「――ありがとうございましたフリードさん!」
「おお、ルカ君! 良かった良かった……。久々にテンション上がる相手だったけど、流石に偽物でもドラゴンを相手にするのは少々骨が折れる」
俺がグレイ達を安全な所に送っている間、フリードさん達が懸命にルージュドラゴンの相手をしてくれていた。フリードさんや他の人達の呼吸が少し荒くなっているのが分かる。俺の勝手ですみません皆さん……。
「リアーナさん! 俺が教えた薬草作ったんですよね? 後は俺に任せて、皆離れて体力を回復して下さい!」
事は一分一秒を争う状況。話している間にも時間は止まることなく皆が必死にルージュドラゴンと攻防を繰り広げている。
「フリードさんも急いで下さい。後、なるべく離れる様皆に伝えてもらえますか」
「よし、分かったよ。ジークリートの攻撃がどれ程の物か見学させてもらうとしよう」
そう言って、フリードさんの号令で皆が一斉に最後の攻撃を放った後、皆は急いで山を下って行った。
<さぁ、久方ぶりに火力を出そうか――>
少し不謹慎だが、ジークは久々に力を出せる相手で嬉しそうだ。俺はドラゴンの姿のままルージュドラゴンの長い首に噛み付き、奴が怯んだ一瞬を見計らい練り上げていた魔力で魔法を放った。
「“天雷の裁き”――!」
ルージュドラゴンの巨体を上回る大きい雷が天空から放たれた。
迸るい稲妻が轟音を響かせながら、一瞬でルージュドラゴンに直撃し、丸焦げになった奴は完全に動かなくなった。
「よし。上手く決まったな」
<我の力なら余裕であるが、久方のこの威力は気分が良い>
「ハハハ、それなら良かった」
ルージュドラゴンを倒した俺は人間の姿に戻った。
さぁ~て、本当の問題はここからだ――。
「状況が状況なだけに思わずドラゴンの姿にまでなってしまったが……。今からどうしよう? 俺とは分からないまでも結構な人数に見られたよなきっと……」
例え一部の人達がジークの事を理解してくれているとしても、それが大勢の人に知れ渡って不安を抱いてしまうという事になれば、当然話は変わってくるだろうな。
体にドラゴンがいるなんて、普通から見れば怖いし不気味なそんざいだよな……。急に意見が翻って俺も王国から追放とかなったらどうしよう……。いや、それならまだマシか。下手したら死刑かもしれない。
「――ルカ!!」
「レベッカ……」
慌てた様子でこちらへ走ってくるレベッカ。
そうだ。レベッカもジークの事は知っているけど、俺があんな化け物みたいな姿になるところを見たんだから嫌われたかもしれなッ……『――ギュ……!』
息を切らしながら走って来たレベッカは、そのまま何故か俺に抱きついてきた。
ええぇぇぇぇッ……⁉
お、俺今抱きつかれてる……⁉ レベッカに……⁉
予想外過ぎる出来事に体が硬直した。
「あ、お、おいッ……レ、レベッカ……」
「無事で良かったルカ! 凄いよ! ドラゴン倒しちゃうなんて!」
大きな瞳を更に大きく見開き、レベッカは笑顔で俺にそう言ってきた。可愛く整った顔が眼前にまで迫り俺はとても恥ずかしかったが、数秒前に抱いた一抹の不安はいつの間にか消え去っていた。
レベッカに続き、フリードさん達も皆集まって来た。
「驚いたよ。まさかドラゴンを一撃で倒すとはね」
「流石ですねルカ君」
「本当に凄かったよ! 君が噂の少年だったのか」
「王都のギルドにはとんでもない子がいるわね」
皆が俺を賞賛してくれている。良かった……。避けられり怖がられたらどうしようかと心配だったけど……。俺は周りの人達に恵まれているようだ。
そう思えた瞬間、うっすらと視界が滲んだ。
俺はきっと、自分で思っていた以上に自分に蓋をしていたんだろうな……。グレイ達との長い時間で、いつの間にかそれが当たり前になったいたんだ。
笑いながら話す皆の顔を見て、俺はとても穏やかな気持ちになっていた。
「よし、ルージュドラゴンの素材を回収して、僕達も皆の所に戻ろう」
「――ルカ・リルガーデンというのは誰だ?」
「「……!」」
フリードさんがそう言った矢先、俺達が話している場所とは少し離れた所か声が響いてきた。視線を移すと、そこには甲冑を着た騎士団員が4人程おり、何やら物々しい雰囲気を纏っていた。
「あ、あのー、ルカは俺ですけど……?」
「貴様がルカ・リルガーデンか!」
俺を認識した途端、騎士団員の人達は声を荒げ更に顔つきが険しくなった。俺は勿論、フリードさん達もこの状況に全くピンときていない。
「ルカ・リルガーデン! 貴様が危険なモンスターを召喚し、その力を“悪用しているとの報告”が入った。直ちに我々と共に来てもらおう」
「「――⁉」」
唐突な騎士団員の言葉に、俺達は驚いて目を見合わせていた。そして呆気に取られているそんな俺達を他所に、騎士団員は俺に近付き無理矢理拘束しようとしてきた。
「え、ちょっと……どういう事ですか⁉」
この時、俺の背筋に嫌な汗が流れた。
もしかして今のドラゴンの姿を見た多くの人達が恐怖を覚えたのではないかと――。
急な展開に勿論驚いているが、心の何処かで落ち着きもあった。やはり“こういう反応”が正しいのではと、少なからず抱いていたからだ……。
「――お待ち下さい」
騎士団員が俺を拘束しよとした瞬間、フリードさんがそれを止めた。
「僕は王都のギルドに所属しているフリード・スターマン。何故彼を拘束するのですか? その報告は一体誰からのものでしょうか」
「お前達に事情を話す必要はない。兎も角連行しろとの上からの指示だ。さぁ、早く我々と来るんだ!」
「何言ってるんですか! ルカは今ドラゴンを倒して皆を助けたんですよ!」
「ああ、その通りだ! お前達もそれで今助かってるんだろう。間違いなく命の恩人である彼に何の文句がある」
フリードさん達が俺の為に騎士団の人達を説得してくれている。しかし少なからず騎士団も組織。上から命令されていると言う彼らもまた引く訳にはいかない様子だ。
「……それは確かにそうであるが、先程も言った通り我々も命令の元動いているのだ。お前達が何と言おうと彼は連行する!」
「だからそれが納得いかないと言っているだろう!」
折角ルージュドラゴンを倒して皆無事だったのに、何でこんな無意味な争いを……。
「――分かりました! 取り敢えず俺は貴方達一緒に行きます。なのでもう言い争いはやめて下さい!」
俺はこの場を鎮めようとそう言った。だってこんなの誰も得しない。
「ル、ルカ君ッ……⁉」
「大丈夫ですよ。 いざとなったら余裕で逃げ出せますから」
俺はフリードさんの耳元で静かにそう言い、心配そうに見つめるレベッカにも“大丈夫だ”と頷いて伝えた。皆の気持ちは嬉しかった。でもこんな争いはやめてほしい。どの道これは何時かきっちり向かい合わないといけない俺の問題でもある。
……と、格好つけた事を言いたいが、もし本当にヤバい状況になったら悪いが俺は本気で逃げ出す!
勿論正当な理由があったなら、それは俺の運命だから受け入れる。だがもし納得いかない曖昧な理由で処罰されそうになったら、申し訳ないが逃げさせてもらいます。当然皆さんに被害は与えませんが、しっかり逃げさせて頂きます。
騎士団員に連行されながら、俺はある程度気持ちの整理が付き覚悟を決めていた。俺にも非があるからな。
そう思っていたのだがこの後……。
これまた誰もが予想だにしていなかったであろう方向に、話は進んでいくのであった――。