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レベッカとの思いがけない出会いから早くも1週間――。
今日も特別変わった事がない1日。この生活にもお互い少しは慣れただろう。レベッカが寝たのを確認した俺は、自分の部屋のベッドでの転がりながらジークと話していた。
「――へぇ~、じゃあやっぱレベッカの魔力イーターってかなりレアな体質なんだな」
<ああ。レベッカのそれは我らモンスターにとっても厄介であるな。まぁレベッカの場合はまだ自身でコントロール出来ていない上に、本来の魔力がそもそも多い。それで余計に手間取っているのであろうな>
「そうか……。常に魔力を吸い込んじゃうって大変だよなきっと。魔力のコントロールさえ出来れば多少は解決になるのか?」
<それは当然だな>
成程ね……。だったら次のクエスト行く前に、少しでも練習した方がいいな。訓練場は他の冒険者がいるから使えないし……。
「どっか場所ないかな?」
<……>
「ん、聞いてるかジーク」
<……>
「おい、どうしたんだよ急に黙りッ……「ルカ?」
空けていた部屋の扉の隙間から、レベッカが俺の名を呼んだ。
あれ、起きたのか。やばい……。まさか今の聞かれてた?
「なんだレベッカ、起きてたのか」
「うん、ちょっと喉が渇いちゃって。それよりルカ、今誰と話してたの?」
おっと、やっぱり聞かれていたか。別にいいと言えばいいんだけど……。どうしよう。
「気のせいじゃない? ほら、 俺以外部屋に誰もいないし」
「嘘だ」
一応扉を開いて部屋の中を見せたけどダメみたいだな。完全に疑ってる。
「ねぇルカ、確かにまだ出会って数日しか経っていない関係だけど、嘘はつかないでほしい」
「レベッカ……」
「私はルカとパーティーだよね? 話したくない事があるなら無理には聞かないよ。だからそれならそうだとちゃんと言ってほしい。嘘や誤魔化しは嫌なの……」
しまった……。コレは滅茶苦茶正論で言葉が出ない。自分でもお互いに裏切りは止めようって約束したもんな。確かに今のは俺が悪い。
「ごめんレベッカ……。俺が悪かったよ。でも決して君を失望させようと思ったわけじゃないんだ……」
「分かってるよ。ただ正直に言ってほしかっただけ」
「そうだよな。じゃあこんな時間で悪いけど、今から俺の秘密を聞いてくれ」
「え……? 」
レベッカなら話してもいいと思えた。
いや、寧ろレベッカには聞いてほしかった。彼女の事も知りたいし、俺の事ももっと知ってほしいと思ったんだ。
「眠いなら明日でも大丈夫だけど」
「何よ急に。気になって逆に眠れないよ」
俺はリビングへとレベッカを促し、暖かい飲み物を入れた後、静かに口を開いた。
「実はさ、俺体の中にモンスターがいるんだ……」
自分でも凄い話の切り口だと思う。案の定レベッカも目を見開いて驚いているし。そりゃそうだよな。俺達冒険者はモンスターを討伐するのが最重要目的なのに、そんな奴が事もあろうかそのモンスターを体に宿してるんだから。
あー、やっぱ言わなきゃ良かったかなぁ。僅かな間が永遠にも感じる……。
どうしよう。これで怖がられたり拒絶されたら……。それはまた結構ショックだな。前回は立ち直れたけど、何か今回はもう無理そうだ。
「そうだったんだね……」
飲み物を一口飲み、レベッカはグラスをテーブルに置きながらそう呟いた。
おいおい、コレは一体“どっち”の反応だ? やっぱり怖がられたッ……「だからそんなに強いんだルカは!」
え……?
「これで納得しちゃったな~。私の特異体質も効かないし、魔力量も凄い。それにルカは魔法使う時に魔力がキラキラキラ~って輝いているもんね! それも全部モンスターの力って事なんだ!」
「あ、ああ……まぁ」
予想外の反応に俺の方が驚きを隠せない。
「凄いね!モンスターを宿して戦うなんて何か格好いいよね」
「え、そう……? って言うか、怖がったりしないの? と言うかまず信じてくれたの……?」
「フフフ、何言ってるのルカ。全然怖くないし、信じるに決まってる。それにこの状況で冗談言えたらある意味凄いよ」
レベッカはそう言いながら、何時ものあの笑顔を見せてくれた。
「ハハハ……。ごめん、俺もジークの事自分から話して信じてくれたのレベッカが始めてだからさ、ちょっと驚いてる」
グレイに話した時は信じて貰えなかった。ジャックさんとマスターには先に気が付かれていたし、それ以外の人に話したこともなかった。
「なぁんだ、もっと言いづらい事情でも抱えてるのかと思ったよ。実は私が美人過ぎて緊張するから寝られないとか!」
「何だそれ。絶対自分で言わない方がいいぞ」
「え、それはちょっと失礼!」
「じゃあ何て言えばいいんだよ。ハハハ」
照れ隠しで精一杯。確かにレベッカは可愛いよ。だけど当然そんな事は言える筈もない。そして俺のこんな話しを受け入れてくれた事が凄く嬉しくて、凄く照れ臭くて……。
今はちょっと素直になれないんだ――。
「それにしても、俺の魔力ってキラキラしてるの?」
「してるよ。凄いキレイ! そう言えばさ、さっきジークって言ってたけど、もしかしてそれモンスターの名前?ルカの体に何がいるの?」
「いいかレベッカ。教えるけど嘘じゃないからな。俺の体にいるのは……あの竜神王ジークリートなんだ――」
「え、竜神王って……あの伝説の⁉ あんなのが本当にいるの……⁉」
<“あんなの”とは無礼だな――>
「わッ⁉ なに⁉」
レベッカの言葉に反応したジークが会話に入ってきた。
「――って、ジーク! お前俺以外の奴とも話せるのか⁉」
<当たり前だ。何故ルカと会話が出来て他の奴と出来ん。そこは我の気分次第だ>
何だそれ~。3年も経って初めて知ったぞ俺は。まぁ今思えば黙っててくれた方が何かと良かったけどな。バレたらいちいち面倒だし。
「凄い……!本当に存在するだね、竜神王ジークリートって……。驚き」
「俺も驚いてるけど、まぁ取り敢えず害は無いから安心してくれ。王だからちょっと偉そうだけど、根は良い奴なんだ」
<ルカ。貴様そんな風に思っていたのか>
「逆に自覚なかったのか」
「ハハハハ!ルカとジークは仲良しだね。そもそもどうやって出会ったの?」
レベッカの何気ない問いに、一瞬胸の奥が高鳴った。
僅かに空けてしまった変な間のせいで、レベッカが何やらバツが悪そうな表情を浮かべた。
「大丈夫だよレベッカ。今まで誰に話してこなかったから慣れてなくて……。
俺がジークと出会ったのは3年前、王国を襲ったモンスター軍の襲撃の時さ――」
俺は気が付けば全てをレベッカに話していた……。
母さんが死んだ事、自分が死にかけた事、ジークと出会った事、パーティから追放された事。
レベッカと出会う前の事も知ってほしくて、俺は全てを彼女に話してた――。
「そうだったんだね……」
<まさかルカが召喚魔法もまともに使えんとは思わなくてな>
「それは何度も悪かったって謝っただろ」
<その後もあんな奴らの為に我の力を使いよって。しかも後方からサポートなど暇で暇でしょうがないわ>
「ハハハ、それも悪かったよ」
<改めて思い出したら腹が立ってきた。我はもう寝るとする>
そう言ってジークは本当に眠りについてしまった様だ。
「おいおい、何だコイツ。また勝手なッ……⁉」
次の瞬間、気が付くと俺はレベッカに抱きしめられていた。
「辛かったね。もう大丈夫だよ」
「……⁉」
レベッカのその一言で、俺の目からは涙が溢れ出した――。
甘い香りと優しい暖かさ。
そっと寄り添い抱きしめてくれたレベッカの腕の中で、俺は自分の目から流れる大粒の涙を止められなかった――。
レベッカとの思いがけない出会いから早くも1週間――。
今日も特別変わった事がない1日。この生活にもお互い少しは慣れただろう。レベッカが寝たのを確認した俺は、自分の部屋のベッドでの転がりながらジークと話していた。
「――へぇ~、じゃあやっぱレベッカの魔力イーターってかなりレアな体質なんだな」
<ああ。レベッカのそれは我らモンスターにとっても厄介であるな。まぁレベッカの場合はまだ自身でコントロール出来ていない上に、本来の魔力がそもそも多い。それで余計に手間取っているのであろうな>
「そうか……。常に魔力を吸い込んじゃうって大変だよなきっと。魔力のコントロールさえ出来れば多少は解決になるのか?」
<それは当然だな>
成程ね……。だったら次のクエスト行く前に、少しでも練習した方がいいな。訓練場は他の冒険者がいるから使えないし……。
「どっか場所ないかな?」
<……>
「ん、聞いてるかジーク」
<……>
「おい、どうしたんだよ急に黙りッ……「ルカ?」
空けていた部屋の扉の隙間から、レベッカが俺の名を呼んだ。
あれ、起きたのか。やばい……。まさか今の聞かれてた?
「なんだレベッカ、起きてたのか」
「うん、ちょっと喉が渇いちゃって。それよりルカ、今誰と話してたの?」
おっと、やっぱり聞かれていたか。別にいいと言えばいいんだけど……。どうしよう。
「気のせいじゃない? ほら、 俺以外部屋に誰もいないし」
「嘘だ」
一応扉を開いて部屋の中を見せたけどダメみたいだな。完全に疑ってる。
「ねぇルカ、確かにまだ出会って数日しか経っていない関係だけど、嘘はつかないでほしい」
「レベッカ……」
「私はルカとパーティーだよね? 話したくない事があるなら無理には聞かないよ。だからそれならそうだとちゃんと言ってほしい。嘘や誤魔化しは嫌なの……」
しまった……。コレは滅茶苦茶正論で言葉が出ない。自分でもお互いに裏切りは止めようって約束したもんな。確かに今のは俺が悪い。
「ごめんレベッカ……。俺が悪かったよ。でも決して君を失望させようと思ったわけじゃないんだ……」
「分かってるよ。ただ正直に言ってほしかっただけ」
「そうだよな。じゃあこんな時間で悪いけど、今から俺の秘密を聞いてくれ」
「え……? 」
レベッカなら話してもいいと思えた。
いや、寧ろレベッカには聞いてほしかった。彼女の事も知りたいし、俺の事ももっと知ってほしいと思ったんだ。
「眠いなら明日でも大丈夫だけど」
「何よ急に。気になって逆に眠れないよ」
俺はリビングへとレベッカを促し、暖かい飲み物を入れた後、静かに口を開いた。
「実はさ、俺体の中にモンスターがいるんだ……」
自分でも凄い話の切り口だと思う。案の定レベッカも目を見開いて驚いているし。そりゃそうだよな。俺達冒険者はモンスターを討伐するのが最重要目的なのに、そんな奴が事もあろうかそのモンスターを体に宿してるんだから。
あー、やっぱ言わなきゃ良かったかなぁ。僅かな間が永遠にも感じる……。
どうしよう。これで怖がられたり拒絶されたら……。それはまた結構ショックだな。前回は立ち直れたけど、何か今回はもう無理そうだ。
「そうだったんだね……」
飲み物を一口飲み、レベッカはグラスをテーブルに置きながらそう呟いた。
おいおい、コレは一体“どっち”の反応だ? やっぱり怖がられたッ……「だからそんなに強いんだルカは!」
え……?
「これで納得しちゃったな~。私の特異体質も効かないし、魔力量も凄い。それにルカは魔法使う時に魔力がキラキラキラ~って輝いているもんね! それも全部モンスターの力って事なんだ!」
「あ、ああ……まぁ」
予想外の反応に俺の方が驚きを隠せない。
「凄いね!モンスターを宿して戦うなんて何か格好いいよね」
「え、そう……? って言うか、怖がったりしないの? と言うかまず信じてくれたの……?」
「フフフ、何言ってるのルカ。全然怖くないし、信じるに決まってる。それにこの状況で冗談言えたらある意味凄いよ」
レベッカはそう言いながら、何時ものあの笑顔を見せてくれた。
「ハハハ……。ごめん、俺もジークの事自分から話して信じてくれたのレベッカが始めてだからさ、ちょっと驚いてる」
グレイに話した時は信じて貰えなかった。ジャックさんとマスターには先に気が付かれていたし、それ以外の人に話したこともなかった。
「なぁんだ、もっと言いづらい事情でも抱えてるのかと思ったよ。実は私が美人過ぎて緊張するから寝られないとか!」
「何だそれ。絶対自分で言わない方がいいぞ」
「え、それはちょっと失礼!」
「じゃあ何て言えばいいんだよ。ハハハ」
照れ隠しで精一杯。確かにレベッカは可愛いよ。だけど当然そんな事は言える筈もない。そして俺のこんな話しを受け入れてくれた事が凄く嬉しくて、凄く照れ臭くて……。
今はちょっと素直になれないんだ――。
「それにしても、俺の魔力ってキラキラしてるの?」
「してるよ。凄いキレイ! そう言えばさ、さっきジークって言ってたけど、もしかしてそれモンスターの名前?ルカの体に何がいるの?」
「いいかレベッカ。教えるけど嘘じゃないからな。俺の体にいるのは……あの竜神王ジークリートなんだ――」
「え、竜神王って……あの伝説の⁉ あんなのが本当にいるの……⁉」
<“あんなの”とは無礼だな――>
「わッ⁉ なに⁉」
レベッカの言葉に反応したジークが会話に入ってきた。
「――って、ジーク! お前俺以外の奴とも話せるのか⁉」
<当たり前だ。何故ルカと会話が出来て他の奴と出来ん。そこは我の気分次第だ>
何だそれ~。3年も経って初めて知ったぞ俺は。まぁ今思えば黙っててくれた方が何かと良かったけどな。バレたらいちいち面倒だし。
「凄い……!本当に存在するだね、竜神王ジークリートって……。驚き」
「俺も驚いてるけど、まぁ取り敢えず害は無いから安心してくれ。王だからちょっと偉そうだけど、根は良い奴なんだ」
<ルカ。貴様そんな風に思っていたのか>
「逆に自覚なかったのか」
「ハハハハ!ルカとジークは仲良しだね。そもそもどうやって出会ったの?」
レベッカの何気ない問いに、一瞬胸の奥が高鳴った。
僅かに空けてしまった変な間のせいで、レベッカが何やらバツが悪そうな表情を浮かべた。
「大丈夫だよレベッカ。今まで誰に話してこなかったから慣れてなくて……。
俺がジークと出会ったのは3年前、王国を襲ったモンスター軍の襲撃の時さ――」
俺は気が付けば全てをレベッカに話していた……。
母さんが死んだ事、自分が死にかけた事、ジークと出会った事、パーティから追放された事。
レベッカと出会う前の事も知ってほしくて、俺は全てを彼女に話してた――。
「そうだったんだね……」
<まさかルカが召喚魔法もまともに使えんとは思わなくてな>
「それは何度も悪かったって謝っただろ」
<その後もあんな奴らの為に我の力を使いよって。しかも後方からサポートなど暇で暇でしょうがないわ>
「ハハハ、それも悪かったよ」
<改めて思い出したら腹が立ってきた。我はもう寝るとする>
そう言ってジークは本当に眠りについてしまった様だ。
「おいおい、何だコイツ。また勝手なッ……⁉」
次の瞬間、気が付くと俺はレベッカに抱きしめられていた。
「辛かったね。もう大丈夫だよ」
「……⁉」
レベッカのその一言で、俺の目からは涙が溢れ出した――。
甘い香りと優しい暖かさ。
そっと寄り添い抱きしめてくれたレベッカの腕の中で、俺は自分の目から流れる大粒の涙を止められなかった――。