「パトリスさん、ありがとうございました」
「いえ、みなさんがご無事で本当に良かったです」
「それにしても、まさかこんなすぐにちょっかいを出してくるとは思ってもいませんでしたよ……」
「貴族様や大手の商店に通達をしたのが先日でしたからね。もしかすると、向こうの連絡ミスか何かで、あの遣いの者は本当に知らなかったのかもしれません」
「なるほど」
「あるいは主人があえて教えずに遣いに出したのかもしれません。うまく屋敷に連れてこれればそれでよし。たとえ失敗したとしても、そんな遣いの者は知らないと言えばいいだけですからね。どちらにせよこうなってしまっては、トカゲの尻尾切りで、そんな遣いは知らないと言い張られるでしょう」
「………………」
どこの世界でも権力者によるトカゲの尻尾切りはあるようだ。そうなるとあの威張っていた遣いの人も少しだけ可哀想な気もするな。とはいえわざわざ庇う気もない。
あえてこちらから冒険者ギルドと協力関係にあることを遣いの人に言わずに、ライザックさん達の到着を待ったのは、見せしめにするためでもあった。
たぶん今日のことはすぐに街中に広まるだろう。うちの店に手を出そうとして酷い目にあったという事実がほしかった。あの遣いの人はともかく、リムジンだかリジムンだか分からない男爵には、ぜひとも厳罰を与えてほしいところである。
「なんにせよみなさんが無事でよかったです。それでは私はギルドに戻って話を聞いて、リジムン男爵に今回の出来事を抗議したいと思います。結果は後ほどお伝えしますね」
「はい。本当に助かりました」
「いえいえ。どうぞ今後ともよろしくお願いします」
パトリスさんは他の冒険者ギルド職員と一緒に冒険者ギルドへ戻っていった。また改めてお礼を伝えに行くとしよう。
「みなさん、大変お騒がせしました。憲兵や冒険者ギルドに知らせに向かってくれたお客様も、本当にありがとうございました。今後ともアウトドアショップをよろしくお願いします」
従業員のみんなと今日のことを話すのはお店が終わってからでいい。まずは店にやって来てくれたお客さんの対応をするとしよう。
「「「ありがとうございました」」」
バタンッ
今日は面倒なトラブルがあったが、それ以外は問題なく営業を終えることができた。
「ふう〜みんな今日はお疲れさま。いろいろとあって大変だったけれど、みんなのおかげで乗り切ることができたよ」
「しかし災難だったな。今までも販売制限以上の商品を購入したいという商人が来たことはあったが、まさかあそこまで面倒な貴族がいるとは驚きだ」
「リリアの言う通り、まさか白昼堂々とお店にやって来て大騒ぎするとは思ってもいなかったよ。これだから貴族ってやつは面倒だよね」
「もしかしたら、ランジェさんが見つけた尾行者はその貴族の手先かもしれないね」
今週ランジェさんが街に戻ってきた時に報告を受けたのだが、先週この町を出た際にランジェさんが尾行されたらしい。向こうは襲ってくる様子はなかったようで、ランジェさんの跡をつけ、様子を伺っているだけだったようだ。
とある森に入ったところで尾行を撒いたらしいが、うちの店の商品の仕入れ先を探りにきた輩で、もしかすると今回ちょっかいを出してきた貴族かもしれない。
「尾行の腕もまだまだだったよ。例の遣いの取り巻きもそんなに強くなかったんでしょ?」
「ああ。確かに装備はまともだったが、あの身のこなしではいいところDランク冒険者相当だろう。あの程度の相手なら、10人単位で来ても私とドルファがいれば対応できた」
「10、10人もですか!?」
「それは頼もしいね」
フィアちゃんが驚くのも分かる。俺にはその強さは分からないが、敵が5倍いたとしても対応できるようだ。高ランク冒険者というのは本当にすごいな。
「……一応補足しておくが、この街に現役Bランク冒険者と、元Bランク冒険者が一緒にいるのは相当おかしいことだからな。この街で傭兵を雇うにしても、さっきのやつらの腕なら十分上の方だぞ」
「そういえばそうだったね……」
あまりに身近過ぎて忘れそうになるが、リリアもランジェさんもドルファも、この始まりの街では相当な実力者だ。今日はランジェさんもいてくれたが、リリアとドルファだけでも戦力的にはまったく問題なさそうなことが再確認できたな。
「とりあえず打ち合わせていた通り、何かあったらすぐに冒険者ギルドに連絡をして、ライザックさん達を呼びに行くで大丈夫そうだね」
「うん。たぶんこの街で一番強いのはライザックだから、とりあえずライザックさえ連れてくればなんとかなると思うよ」
「ライザックさんてそんなに強いんだ……」
「元Aランク冒険者だからな。引退したとはいえ、正面からまともに戦えば、少なくともこの街に彼より強い者はいないだろう」
そこまでなのか……ただ単に見た目が怖いだけでなく、相当な実力者だったらしい。味方になってくれるなら、これほど頼もしいことはない。
「たぶん今日の出来事はすぐに広まると思うから、ちょっかいを出してくるやつらは減ると思うけれど、警戒はこのまま続けていこう。ランジェさんも街を出る時は尾行者には気をつけてね」
「ああ、了解だ」
「了解だよ」
「いえ、みなさんがご無事で本当に良かったです」
「それにしても、まさかこんなすぐにちょっかいを出してくるとは思ってもいませんでしたよ……」
「貴族様や大手の商店に通達をしたのが先日でしたからね。もしかすると、向こうの連絡ミスか何かで、あの遣いの者は本当に知らなかったのかもしれません」
「なるほど」
「あるいは主人があえて教えずに遣いに出したのかもしれません。うまく屋敷に連れてこれればそれでよし。たとえ失敗したとしても、そんな遣いの者は知らないと言えばいいだけですからね。どちらにせよこうなってしまっては、トカゲの尻尾切りで、そんな遣いは知らないと言い張られるでしょう」
「………………」
どこの世界でも権力者によるトカゲの尻尾切りはあるようだ。そうなるとあの威張っていた遣いの人も少しだけ可哀想な気もするな。とはいえわざわざ庇う気もない。
あえてこちらから冒険者ギルドと協力関係にあることを遣いの人に言わずに、ライザックさん達の到着を待ったのは、見せしめにするためでもあった。
たぶん今日のことはすぐに街中に広まるだろう。うちの店に手を出そうとして酷い目にあったという事実がほしかった。あの遣いの人はともかく、リムジンだかリジムンだか分からない男爵には、ぜひとも厳罰を与えてほしいところである。
「なんにせよみなさんが無事でよかったです。それでは私はギルドに戻って話を聞いて、リジムン男爵に今回の出来事を抗議したいと思います。結果は後ほどお伝えしますね」
「はい。本当に助かりました」
「いえいえ。どうぞ今後ともよろしくお願いします」
パトリスさんは他の冒険者ギルド職員と一緒に冒険者ギルドへ戻っていった。また改めてお礼を伝えに行くとしよう。
「みなさん、大変お騒がせしました。憲兵や冒険者ギルドに知らせに向かってくれたお客様も、本当にありがとうございました。今後ともアウトドアショップをよろしくお願いします」
従業員のみんなと今日のことを話すのはお店が終わってからでいい。まずは店にやって来てくれたお客さんの対応をするとしよう。
「「「ありがとうございました」」」
バタンッ
今日は面倒なトラブルがあったが、それ以外は問題なく営業を終えることができた。
「ふう〜みんな今日はお疲れさま。いろいろとあって大変だったけれど、みんなのおかげで乗り切ることができたよ」
「しかし災難だったな。今までも販売制限以上の商品を購入したいという商人が来たことはあったが、まさかあそこまで面倒な貴族がいるとは驚きだ」
「リリアの言う通り、まさか白昼堂々とお店にやって来て大騒ぎするとは思ってもいなかったよ。これだから貴族ってやつは面倒だよね」
「もしかしたら、ランジェさんが見つけた尾行者はその貴族の手先かもしれないね」
今週ランジェさんが街に戻ってきた時に報告を受けたのだが、先週この町を出た際にランジェさんが尾行されたらしい。向こうは襲ってくる様子はなかったようで、ランジェさんの跡をつけ、様子を伺っているだけだったようだ。
とある森に入ったところで尾行を撒いたらしいが、うちの店の商品の仕入れ先を探りにきた輩で、もしかすると今回ちょっかいを出してきた貴族かもしれない。
「尾行の腕もまだまだだったよ。例の遣いの取り巻きもそんなに強くなかったんでしょ?」
「ああ。確かに装備はまともだったが、あの身のこなしではいいところDランク冒険者相当だろう。あの程度の相手なら、10人単位で来ても私とドルファがいれば対応できた」
「10、10人もですか!?」
「それは頼もしいね」
フィアちゃんが驚くのも分かる。俺にはその強さは分からないが、敵が5倍いたとしても対応できるようだ。高ランク冒険者というのは本当にすごいな。
「……一応補足しておくが、この街に現役Bランク冒険者と、元Bランク冒険者が一緒にいるのは相当おかしいことだからな。この街で傭兵を雇うにしても、さっきのやつらの腕なら十分上の方だぞ」
「そういえばそうだったね……」
あまりに身近過ぎて忘れそうになるが、リリアもランジェさんもドルファも、この始まりの街では相当な実力者だ。今日はランジェさんもいてくれたが、リリアとドルファだけでも戦力的にはまったく問題なさそうなことが再確認できたな。
「とりあえず打ち合わせていた通り、何かあったらすぐに冒険者ギルドに連絡をして、ライザックさん達を呼びに行くで大丈夫そうだね」
「うん。たぶんこの街で一番強いのはライザックだから、とりあえずライザックさえ連れてくればなんとかなると思うよ」
「ライザックさんてそんなに強いんだ……」
「元Aランク冒険者だからな。引退したとはいえ、正面からまともに戦えば、少なくともこの街に彼より強い者はいないだろう」
そこまでなのか……ただ単に見た目が怖いだけでなく、相当な実力者だったらしい。味方になってくれるなら、これほど頼もしいことはない。
「たぶん今日の出来事はすぐに広まると思うから、ちょっかいを出してくるやつらは減ると思うけれど、警戒はこのまま続けていこう。ランジェさんも街を出る時は尾行者には気をつけてね」
「ああ、了解だ」
「了解だよ」