「よし、こんなものだろう」
とりあえず市場を歩いて服を一式揃えてみた。上は白い襟付きのシャツと下は茶色のズボンで、ベルトではなく紐で縛ってある。材質は絹ではないみたいだけれどよくわからない。羊毛みたいな異世界産である生物の毛で編みこまれているようだ。靴の方も何かの革でできている。
全部で金貨1枚と銀貨5枚だった。服やズボンはそれほど高くなかったのだが、靴が金貨1枚となかなか高価になってしまった。まあ革製品だから仕方ない面もあるのかな。とりあえずこれで服装を変な目で見られることはないだろう。
「きゃっ!」
「おっと、ごめんね。大丈夫?」
しまった、いろいろと市場を見渡しながら歩いていたら、人とぶつかってしまったみたいだ。
「は、はい、大丈夫です」
俺がぶつかってしまった女の子は獣人のようだ。頭からは茶色くて可愛らしい2つのケモミミがある。そしてその子の後ろには、フサフサとした大きくて立派な尻尾がゆらゆらと揺れている。ネコの獣人のニコレとは違って、この茶色くて大きな尻尾はキツネの獣人さんかな。
「あ……」
「あちゃあ……」
女の子の視線の先を見ると、そこには地面に落ちてしまったパンが2つあった。
「ごめんね、俺のせいだ。弁償するよ」
「い、いえ! 私も走っていたから……そ、それにほら、こうすれば大丈夫です!」
ポンポンと落ちてしまったパンの土をはらいながら、持っていたカゴにパンを拾う少女。この世界の人達は逞しいな。
「……いや、今のはよそ見しながら歩いていた俺が悪いよ。全部でいくらだったの?」
「えっと銅貨5枚ですけれど……で、でも本当に大丈夫ですから」
「銅貨5枚か、じゃあお詫び料も含めて銀貨1枚だな。こうでもしないと俺が気になっちゃうから、遠慮なく受け取ってほしいな」
「……は、はい。それじゃあ、遠慮なくいただいちゃいます! お兄ちゃん、ありがとう!」
「うん。それじゃあね」
「はいです!」
銀貨1枚を受け取り、笑顔でお礼を言って去っていく女の子。うむ、ぶつかったのが強面のヤバい人達じゃなくて本当によかったよ。可愛いケモミミ少女の笑顔も見れたし、あれで銀貨1枚なら安いものだったな。
そのまま市場をまわって朝食兼昼飯を食べた。異世界産の肉はどれも美味しく、元の世界の美味しく育てられた牛や豚に近いくらいの味だ。味付けは基本塩で、魚醤などを使ったタレを使った串焼きも結構な味だった。異世界ものでよくある、食文化が壊滅的みたいなことがなくて本当に助かった。
「さて、次はここだ」
市場の次にやってきたのは、昨日香辛料を売った商業ギルドだ。一通り市場を回ってみて売れそうな商品の目星はつけてきたので、商業ギルドに登録して物を売る資格を取る。
「いらっしゃいませ。本日はどのようなご用件でしょうか?」
昨日と同じように案内係の人が話しかけてくる。
「商売を始めようと思っているので、商業ギルドへの登録をお願いしたいのですが」
「はい、新規のご登録ですね! あちらの窓口にお願いします」
案内のお姉さんの指示に従って窓口のほうへ進む。昨日の買い取り窓口はかなり混んでいたが、こちらのほうは空いていたので、そのまま受付になった。
「それではこちらにお名前の記入をお願いします。このあと簡単な試験を受けてもらいまして、合格した場合には金貨5枚の登録料をお支払いいただきまして登録完了となります」
「はい、わかりました」
簡単な試験があることは宿の女将さんから聞いている。あの宿を開くときも簡単な試験に合格しなければいけなかったらしい。言われてみれば、商売や宿を経営するならおつりの計算などができなければ話にならないもんな。
そして問題となるのは読み書きのほうだが、それも謎の翻訳機能により、日本語で読み書きするとこちらの言葉として変換されるようだ。これに関しては本当にありがたい。
「はい、終わりました」
「あら、とてもお早いですね。この場で採点しますので少々お待ちください」
そりゃ簡単な四則演算だけだったからな。元の世界なら小学生でも商人になれるぞ。
「はい、全問正解になります。おめでとうございます、合格です」
「はい、ありがとうございます」
さすがにこんな問題を間違えるわけにはいかないよな。
「それでは登録料の金貨5枚をお願いします」
「はい」
「ありがとうございます。ギルドカードを作りますので少々お待ちください」
しばらくすると職員さんが戻ってきた。
「お待たせ致しました。こちらがテツヤ様の商業ギルドカードになります。こちらは身分証としてもお使いすることができます」
「ありがとうございます」
ギルドカードを受け取るとそこには俺の名前や年齢が記載されていた。身分証になるのはありがたいな。これで街の外に出ても、門番の面倒なチェックを受けなくてよくなる。
「こちらのギルドカードがあれば商売をすることが可能となります。あちらのほうで店舗を借りる手続きを取れるようになります。もし、商店を構えるようでしたら、商業ギルドへお店の登録が必要となりますので、一度ご相談ください」
「はい、わかりました」
ふむふむ、一時的な店を始めるなら場所の費用さえ払えば、すぐに店を開けるということだな。実際に商店として店を構えるなら、登録が必要ということになるわけか。
「それでは以上で商業ギルドへの登録は完了となります。何かございましたら、遠慮なく当商業ギルドまでご相談くださいませ。テツヤ様の商売繁盛を心より祈っております」
「ありがとうございます!」
テストはアレだったが、これで晴れて俺も商人だ!
無事に商業ギルドへの登録が完了したが、これで明日からすぐに店を出すわけではない。その前にもうひとつだけ、やらなければならないことがある。
ここは冒険者の始まりの街、そこでターゲットとなるのは当然駆け出し冒険者達だ。この街には毎日駆け出し冒険者がやってきて、同じように駆け出し冒険者を卒業した冒険者達が別の街を目指していく。
俺のアウトドアショップの能力で購入できる物が、実際に駆け出し冒険者に需要があるかを確認したい。それともうひとつ確認したいことがあるから、街の外に出て普段新人冒険者達が活動しているという森へ行ってみなければならない。
というわけでやってきました冒険者ギルド! さすが冒険者始まりの街である冒険者ギルド、でかい建物だと思っていた商業ギルドよりもさらに大きいし、大勢の人で賑わっている。
もちろん俺が冒険者として登録するわけではなく、冒険者に依頼する側として冒険者ギルドに足を踏み入れた。
とりあえず市場を歩いて服を一式揃えてみた。上は白い襟付きのシャツと下は茶色のズボンで、ベルトではなく紐で縛ってある。材質は絹ではないみたいだけれどよくわからない。羊毛みたいな異世界産である生物の毛で編みこまれているようだ。靴の方も何かの革でできている。
全部で金貨1枚と銀貨5枚だった。服やズボンはそれほど高くなかったのだが、靴が金貨1枚となかなか高価になってしまった。まあ革製品だから仕方ない面もあるのかな。とりあえずこれで服装を変な目で見られることはないだろう。
「きゃっ!」
「おっと、ごめんね。大丈夫?」
しまった、いろいろと市場を見渡しながら歩いていたら、人とぶつかってしまったみたいだ。
「は、はい、大丈夫です」
俺がぶつかってしまった女の子は獣人のようだ。頭からは茶色くて可愛らしい2つのケモミミがある。そしてその子の後ろには、フサフサとした大きくて立派な尻尾がゆらゆらと揺れている。ネコの獣人のニコレとは違って、この茶色くて大きな尻尾はキツネの獣人さんかな。
「あ……」
「あちゃあ……」
女の子の視線の先を見ると、そこには地面に落ちてしまったパンが2つあった。
「ごめんね、俺のせいだ。弁償するよ」
「い、いえ! 私も走っていたから……そ、それにほら、こうすれば大丈夫です!」
ポンポンと落ちてしまったパンの土をはらいながら、持っていたカゴにパンを拾う少女。この世界の人達は逞しいな。
「……いや、今のはよそ見しながら歩いていた俺が悪いよ。全部でいくらだったの?」
「えっと銅貨5枚ですけれど……で、でも本当に大丈夫ですから」
「銅貨5枚か、じゃあお詫び料も含めて銀貨1枚だな。こうでもしないと俺が気になっちゃうから、遠慮なく受け取ってほしいな」
「……は、はい。それじゃあ、遠慮なくいただいちゃいます! お兄ちゃん、ありがとう!」
「うん。それじゃあね」
「はいです!」
銀貨1枚を受け取り、笑顔でお礼を言って去っていく女の子。うむ、ぶつかったのが強面のヤバい人達じゃなくて本当によかったよ。可愛いケモミミ少女の笑顔も見れたし、あれで銀貨1枚なら安いものだったな。
そのまま市場をまわって朝食兼昼飯を食べた。異世界産の肉はどれも美味しく、元の世界の美味しく育てられた牛や豚に近いくらいの味だ。味付けは基本塩で、魚醤などを使ったタレを使った串焼きも結構な味だった。異世界ものでよくある、食文化が壊滅的みたいなことがなくて本当に助かった。
「さて、次はここだ」
市場の次にやってきたのは、昨日香辛料を売った商業ギルドだ。一通り市場を回ってみて売れそうな商品の目星はつけてきたので、商業ギルドに登録して物を売る資格を取る。
「いらっしゃいませ。本日はどのようなご用件でしょうか?」
昨日と同じように案内係の人が話しかけてくる。
「商売を始めようと思っているので、商業ギルドへの登録をお願いしたいのですが」
「はい、新規のご登録ですね! あちらの窓口にお願いします」
案内のお姉さんの指示に従って窓口のほうへ進む。昨日の買い取り窓口はかなり混んでいたが、こちらのほうは空いていたので、そのまま受付になった。
「それではこちらにお名前の記入をお願いします。このあと簡単な試験を受けてもらいまして、合格した場合には金貨5枚の登録料をお支払いいただきまして登録完了となります」
「はい、わかりました」
簡単な試験があることは宿の女将さんから聞いている。あの宿を開くときも簡単な試験に合格しなければいけなかったらしい。言われてみれば、商売や宿を経営するならおつりの計算などができなければ話にならないもんな。
そして問題となるのは読み書きのほうだが、それも謎の翻訳機能により、日本語で読み書きするとこちらの言葉として変換されるようだ。これに関しては本当にありがたい。
「はい、終わりました」
「あら、とてもお早いですね。この場で採点しますので少々お待ちください」
そりゃ簡単な四則演算だけだったからな。元の世界なら小学生でも商人になれるぞ。
「はい、全問正解になります。おめでとうございます、合格です」
「はい、ありがとうございます」
さすがにこんな問題を間違えるわけにはいかないよな。
「それでは登録料の金貨5枚をお願いします」
「はい」
「ありがとうございます。ギルドカードを作りますので少々お待ちください」
しばらくすると職員さんが戻ってきた。
「お待たせ致しました。こちらがテツヤ様の商業ギルドカードになります。こちらは身分証としてもお使いすることができます」
「ありがとうございます」
ギルドカードを受け取るとそこには俺の名前や年齢が記載されていた。身分証になるのはありがたいな。これで街の外に出ても、門番の面倒なチェックを受けなくてよくなる。
「こちらのギルドカードがあれば商売をすることが可能となります。あちらのほうで店舗を借りる手続きを取れるようになります。もし、商店を構えるようでしたら、商業ギルドへお店の登録が必要となりますので、一度ご相談ください」
「はい、わかりました」
ふむふむ、一時的な店を始めるなら場所の費用さえ払えば、すぐに店を開けるということだな。実際に商店として店を構えるなら、登録が必要ということになるわけか。
「それでは以上で商業ギルドへの登録は完了となります。何かございましたら、遠慮なく当商業ギルドまでご相談くださいませ。テツヤ様の商売繁盛を心より祈っております」
「ありがとうございます!」
テストはアレだったが、これで晴れて俺も商人だ!
無事に商業ギルドへの登録が完了したが、これで明日からすぐに店を出すわけではない。その前にもうひとつだけ、やらなければならないことがある。
ここは冒険者の始まりの街、そこでターゲットとなるのは当然駆け出し冒険者達だ。この街には毎日駆け出し冒険者がやってきて、同じように駆け出し冒険者を卒業した冒険者達が別の街を目指していく。
俺のアウトドアショップの能力で購入できる物が、実際に駆け出し冒険者に需要があるかを確認したい。それともうひとつ確認したいことがあるから、街の外に出て普段新人冒険者達が活動しているという森へ行ってみなければならない。
というわけでやってきました冒険者ギルド! さすが冒険者始まりの街である冒険者ギルド、でかい建物だと思っていた商業ギルドよりもさらに大きいし、大勢の人で賑わっている。
もちろん俺が冒険者として登録するわけではなく、冒険者に依頼する側として冒険者ギルドに足を踏み入れた。