「……というわけで、俺はこことは別の世界からやってきたんだ」

「………………」

「今見せたように、お金と引き換えに俺の元の世界の物を取り寄せることができる能力を持っている。ここのお店で売っている商品は俺の能力で出した物なんだ。ランジェさんには商品を仕入れるフリをしてもらっているだけだ。今まで秘密にしていて悪かったな、ドルファ」

「………………」

 アウトドアショップの能力のレベルが4に上がり、扱う商品が増えたということもあって、ドルファにも俺の秘密を話すことに決めた。

 今日のお店の営業も無事に終わり、閉店作業を始める前にドルファに俺のことを話した。

 すべて話したのはいいが、ドルファは黙ったままだ。実際にドルファの前で金貨をチャージして、商品を購入して見せたのだが、ドルファは黙ったまま何も話さない。

 やはり別の世界から来たなんていう荒唐無稽な話は信じることができないのだろうか。あるいは、そのことを信じてくれた上で、なにか考えているのだろうか。

「……このお店で売っている商品が、見たこともない物ばかりだったのはそういう理由か。なるほど、よくよく考えてみれば納得もいくな。リリアもフィアちゃんもそのことは知っていたみたいだな」

「2人にはドルファを雇う前から話していたんだ。ドルファにすぐに話さなかったのは悪いと思っているよ」

「いや、そんな大事なことをすぐに話せないのは当然だ。むしろ、よくただの従業員である俺に話してくれたのは嬉しく思う。

 ……しかし別の世界か。頭では分かっているんだが、あまり想像ができないな。テツヤさんも普通の人族に見えるし、あまり実感がわかないぞ」

「……まあすごく遠い国から来たと思ってくれればいいかな」

 ぶっちゃけ外国も異世界も似たようなものである。文明がそれほど進んでいないこっちの世界ならなおのことだな。

「とりあえず了解した。俺を信用して話してくれたんだ、金を積まれても絶対に誰にも話さない……と言いたいところだが、アンジュに何かあった場合に限っては約束できない。どうやら俺はアンジュにかんしては()()過剰に反応してしまうことがあるからな」

「………………」

 ……うん、あの反応が少しなのかはこの際置いておこう。

「その場合はもちろんアンジュさんを優先してくれて構わないよ。俺の秘密なんかよりも、みんなやみんなの家族の身の安全の方が大事だからね。

 少なくとも俺の秘密が知られても、利用するように考えるのが普通だから、遠慮なく話していいからね」

 ぶっちゃけ俺も拷問なんてされたら、秒で秘密をしゃべってしまう可能性が高い。最悪拘束されたり監禁されたりするかもしれないが、殺されることはないだろう。

「……可能な限り話さないことは誓う!」

「ぜ、絶対にしゃべらないよ!」

「ああ、命に懸けても話さないと誓う!」

「いや、だから話していいってば……」

 たとえ監禁されたり拘束されたとしても、今では俺の味方をしてくれる人達も大勢いる。その人達を信じて助けが来るのを待てばいい。



「2人ともお疲れさま。明日もまたよろしくね」

「お疲れさまです!」

「ああ、また明日」

 ドルファに俺の事情を説明したが、どうやら納得してくれたみたいだ。そのあとはみんなでいつも通りの閉店作業を終えて、ドルファにフィアちゃんを送ってもらう。

「ちょっと待って。はい、2人にお土産だよ。アンジュさんとレーアさんと一緒に食べてね」

「ああ、ありがとうな」

「テツヤお兄ちゃん、ありがとう!」

「新しく買えるようになった俺の世界の甘いお菓子だよ。みんなで楽しんでね」

 2人にはチョコレートバーとようかんを包みに入れて渡してあげた。ランジェさんもリリアも気に入っていたから、きっとみんなも気に入ってくれるだろう。

 さて、それじゃあこのまま、さらに味方を増やしにいくとしますかね。敵になってしまう可能性もゼロではないところが怖いところでもあるがな……



「おう、テツヤにリリア。どうしたんだ?」

「ちょっと用事がありましてね。パトリスさんもお久しぶりです」

 2人に話があると受付で伝えたところ、すぐにギルドマスターの部屋に案内してくれた。ある程度はこちらを信用してくれているようだ。

「お久しぶりです、テツヤさん、リリアさん。先日いただいたワイルドボアの燻製肉はとても美味しかったですよ。ありがとうございました」

「喜んでいただけたならなによりですよ」

 ドルファとフィアちゃんを見送ったあと、俺とリリアは冒険者ギルドを訪ねた。

 リリアとランジェさんにも相談したのだが、俺の能力のことを冒険者ギルドマスターのライザックさんと副ギルドマスターのパトリスさんには話すという結論に至った。

 俺のアウトドアショップの能力がレベルアップして、方位磁石や浄水器以外の様々な商品を購入できるようになった。今後はより一層面倒な輩が現れるかもしれないし、いろいろと協力してもらいたいこともある。

 ……もしかしたらこの2人が敵になる可能性だってなくはない。短い付き合いだが、2人がそんな人ではないことはわかっているのだが、それでももしかしたらという気持ちはゼロにはならない。

 リリアも万が一の場合には2人に敵対してでも俺に味方してくれると言ってくれたのはとても嬉しかった。俺も覚悟を決めるとしよう!