「「「ありがとうございました」」」
無事に今日の1日が終わった。最後のお客さんが店を出て、店の表にある看板を裏返して閉店にする。
「ふう〜みんなお疲れさま。やっぱり1人増えるだけでだいぶ楽になるな」
「ああ、店員が4人になるとこれだけ楽になるのだな。先週とは全然違ったぞ」
「うん! とっても楽になったよ。フィアも落ち着いてちゃんと計算できた!」
ドルファが加わったことにより、リリアやフィアちゃんにかかる負担も減ってくれた。先週は会計に人が並んで、お客さんを待たせてしまうことも多かったからな。
そりゃ会計に人が大勢並ぶと、こっちも焦って計算を間違えたりしてしまう。
「ドルファは初日だったけれど、大丈夫だった?」
「ああ。だが思ったよりも忙しいのだな。体力的にはまったく問題ないが、お客さんを相手にするのは精神的に疲れるようだ」
「元冒険者なら体力は大丈夫みたいだな。俺は体力的にも結構きついんだけど……」
意外に接客も体力を使うんだよな。基本的にはずっと立ちっぱなしだし、倉庫から商品を運ぶのもなかなか疲れる。
一応お客さんの少ない時間に交代で休憩時間を挟んでいるが、それでもだからな。ドルファが加わってくれて多少余裕もできたし、もう少し休憩時間を増やすとするか。
「接客のほうは問題なかったね。面倒なお客さんもうまくいなしていたし、笑顔も言葉遣いもそのままで大丈夫そうだ」
やはりドルファはイケメンなこともあって、女冒険者から商品の説明を求められることも多い。それを妬んだ男の冒険者に、少し乱暴な口使いや言いがかりに近いことを言われても、上手くそれをいなしていた。
冒険者は手が早いイメージがあったのだが、ドルファはちゃんと自分を抑えることができそうである。すぐに逆上してお客さんに手をあげるようだったら、雇用を考えなければいけないところだった。
「俺が面倒を起こすとアンジュに迷惑が掛かってしまうからな。それを考えれば、多少のことでいちいち腹を立ててもしょうがないだろ」
「「「………………」」」
分かってはいたけれど、この人の行動原理はすべて妹のアンジュさんに基づいているんだな……まあ問題を起こさないようならそれでもいいか。
その代わりにアンジュさんの悪口を言われたりしたら激昂しそうだが、それは相手も悪いわけだし、やりすぎないところでリリアに止めてもらうしかない。
「あとは計算がもう少しなのと、商品の値段を覚えられれば完璧だね。でもそれは慣れていけばすぐにできるようになるから。リリアとフィアちゃん達からは何かある?」
「問題は特にないな。もし可能だったら、商品の補充を重点的にやってほしい。私は片腕だし、フィアちゃんはそこまで重いものを持てないから、どうしても我々では遅くなってしまうんだ」
「なるほど、明日から意識してみる」
「フィアからは大丈夫です」
「ドルファからは何かある? ここをこうしたらいいとか、仕事のここがちょっと辛いとか、なにかあれば遠慮なく教えてほしい」
「仕事内容については今のところは大丈夫だ。むしろ、この仕事内容であれだけの給金をもらって本当にいいのかと思ってしまうな」
「面接の時に言ったように、店員の仕事だけじゃなくて護衛の役割も含まれているからね。何かあった時はいろいろと頼むよ」
「ああ、任せておいてくれ!」
今のところドルファの雇用は問題なさそうだな。明日も一緒に行動するが、なんならもう俺が付かずにひとりでも働いていけそうである。
そのあとはドルファに閉店作業を教えた。1人増えただけで、だいぶ作業時間が短縮できたので大いに助かる。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
そして2日後、ドルファは今日も問題なく働いている。今日から俺は付かずにひとりで動いてもらっているのだが、多少は仕事にも慣れてきたようで、初日よりもテキパキと働いてくれている。
リリアやフィアちゃんともうまく連携を取り始めて、より効率的に働けるようになってきた。今週になってお客さんも多少は落ち着いてきたので、だいぶ仕事は楽になってきたな。
とはいえ、誰かひとりでも休むと、また人手が足りなくなってしまうので、もうひとりくらい雇ってもいいかもしれないな。従業員が多くなっても、仕事に余裕があるくらいのほうがちょうどいい。状況を見てまた求人を出してもいいかもしれないな。
「テツヤさん、こんにちは。お久しぶりです」
「パトリスさん、いらっしゃいませ」
昼過ぎくらいに冒険者ギルドの副ギルドマスターのパトリスさんがお店に来てくれた。
「いらっしゃいませ」
「こんにちは。おや、従業員がひとり増えているのですね」
「はい、お店も盛況なので人手を増やしました。今日はなにかお探しですか?」
「実は例の浄水器のほうも確認させていただきまして、冒険者ギルドに置かせてもらいたいと思っております。そのことで本日お店が終わりましたら、ギルドマスターと一緒におうかがいしてもよろしいでしょうか?」
「はい。あっ、うちの店にはちゃんとした応接室みたいな部屋はないので、冒険者ギルドにうかがいますよ。ちょうど方位磁石も納めに行きますから」
「承知しました。お手数をお掛けしてすみませんね。どうぞよろしくお願いします」
無事に今日の1日が終わった。最後のお客さんが店を出て、店の表にある看板を裏返して閉店にする。
「ふう〜みんなお疲れさま。やっぱり1人増えるだけでだいぶ楽になるな」
「ああ、店員が4人になるとこれだけ楽になるのだな。先週とは全然違ったぞ」
「うん! とっても楽になったよ。フィアも落ち着いてちゃんと計算できた!」
ドルファが加わったことにより、リリアやフィアちゃんにかかる負担も減ってくれた。先週は会計に人が並んで、お客さんを待たせてしまうことも多かったからな。
そりゃ会計に人が大勢並ぶと、こっちも焦って計算を間違えたりしてしまう。
「ドルファは初日だったけれど、大丈夫だった?」
「ああ。だが思ったよりも忙しいのだな。体力的にはまったく問題ないが、お客さんを相手にするのは精神的に疲れるようだ」
「元冒険者なら体力は大丈夫みたいだな。俺は体力的にも結構きついんだけど……」
意外に接客も体力を使うんだよな。基本的にはずっと立ちっぱなしだし、倉庫から商品を運ぶのもなかなか疲れる。
一応お客さんの少ない時間に交代で休憩時間を挟んでいるが、それでもだからな。ドルファが加わってくれて多少余裕もできたし、もう少し休憩時間を増やすとするか。
「接客のほうは問題なかったね。面倒なお客さんもうまくいなしていたし、笑顔も言葉遣いもそのままで大丈夫そうだ」
やはりドルファはイケメンなこともあって、女冒険者から商品の説明を求められることも多い。それを妬んだ男の冒険者に、少し乱暴な口使いや言いがかりに近いことを言われても、上手くそれをいなしていた。
冒険者は手が早いイメージがあったのだが、ドルファはちゃんと自分を抑えることができそうである。すぐに逆上してお客さんに手をあげるようだったら、雇用を考えなければいけないところだった。
「俺が面倒を起こすとアンジュに迷惑が掛かってしまうからな。それを考えれば、多少のことでいちいち腹を立ててもしょうがないだろ」
「「「………………」」」
分かってはいたけれど、この人の行動原理はすべて妹のアンジュさんに基づいているんだな……まあ問題を起こさないようならそれでもいいか。
その代わりにアンジュさんの悪口を言われたりしたら激昂しそうだが、それは相手も悪いわけだし、やりすぎないところでリリアに止めてもらうしかない。
「あとは計算がもう少しなのと、商品の値段を覚えられれば完璧だね。でもそれは慣れていけばすぐにできるようになるから。リリアとフィアちゃん達からは何かある?」
「問題は特にないな。もし可能だったら、商品の補充を重点的にやってほしい。私は片腕だし、フィアちゃんはそこまで重いものを持てないから、どうしても我々では遅くなってしまうんだ」
「なるほど、明日から意識してみる」
「フィアからは大丈夫です」
「ドルファからは何かある? ここをこうしたらいいとか、仕事のここがちょっと辛いとか、なにかあれば遠慮なく教えてほしい」
「仕事内容については今のところは大丈夫だ。むしろ、この仕事内容であれだけの給金をもらって本当にいいのかと思ってしまうな」
「面接の時に言ったように、店員の仕事だけじゃなくて護衛の役割も含まれているからね。何かあった時はいろいろと頼むよ」
「ああ、任せておいてくれ!」
今のところドルファの雇用は問題なさそうだな。明日も一緒に行動するが、なんならもう俺が付かずにひとりでも働いていけそうである。
そのあとはドルファに閉店作業を教えた。1人増えただけで、だいぶ作業時間が短縮できたので大いに助かる。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
そして2日後、ドルファは今日も問題なく働いている。今日から俺は付かずにひとりで動いてもらっているのだが、多少は仕事にも慣れてきたようで、初日よりもテキパキと働いてくれている。
リリアやフィアちゃんともうまく連携を取り始めて、より効率的に働けるようになってきた。今週になってお客さんも多少は落ち着いてきたので、だいぶ仕事は楽になってきたな。
とはいえ、誰かひとりでも休むと、また人手が足りなくなってしまうので、もうひとりくらい雇ってもいいかもしれないな。従業員が多くなっても、仕事に余裕があるくらいのほうがちょうどいい。状況を見てまた求人を出してもいいかもしれないな。
「テツヤさん、こんにちは。お久しぶりです」
「パトリスさん、いらっしゃいませ」
昼過ぎくらいに冒険者ギルドの副ギルドマスターのパトリスさんがお店に来てくれた。
「いらっしゃいませ」
「こんにちは。おや、従業員がひとり増えているのですね」
「はい、お店も盛況なので人手を増やしました。今日はなにかお探しですか?」
「実は例の浄水器のほうも確認させていただきまして、冒険者ギルドに置かせてもらいたいと思っております。そのことで本日お店が終わりましたら、ギルドマスターと一緒におうかがいしてもよろしいでしょうか?」
「はい。あっ、うちの店にはちゃんとした応接室みたいな部屋はないので、冒険者ギルドにうかがいますよ。ちょうど方位磁石も納めに行きますから」
「承知しました。お手数をお掛けしてすみませんね。どうぞよろしくお願いします」