「それじゃあ、まずはこのお店の仕事を簡単に教えるよ。開店前は商品を倉庫から棚に補充するんだ。倉庫はこっちだよ」
まずはドルファに店の中を案内する。といってもそれほど広い店内ではない。
「ここが倉庫だ。商品ごとにこの木箱に入っている。お店が始まって店内の商品が少なくなったら、ここから商品の棚まで持っていって並べてくれ。場所は値札が付いているから、少しずつ覚えてくれればいい」
「ああ、わかった」
基本的には俺とリリアとフィアちゃんで、商品が足りなくなったら倉庫から商品を持ってきて棚に並べている。ブルーシートとかは意外と重いので、フィアちゃんが運ぶのが大変そうな物は俺が運ぶ。
「特にインスタントスープは4種類あって間違えやすいから気を付けてね。基本的にはこの倉庫にある分が終わったら、その日の分は終わりだよ。次の日の分は、夜に俺とリリアが上の階にある倉庫から下の倉庫に移動しておくから」
「ああ、了解だ」
本当はドルファが帰ったあとで、俺のアウトドアショップの能力で商品を補充する。俺の能力についてはしばらくドルファの様子を見てから伝えるつもりだ。
どちらにしろ、この1週間はお互いに試用期間となる。1週間働いてもらい、お互いに問題なければ正式に雇用となるわけだ。うちのお店としては人手不足だし、よっぽどのことがなければ、ドルファさんに働いてもらいたい。
「うちのお店はちょっと特殊な場所から仕入れを行っているんだ。数週間に一度、収納魔法を使える冒険者にお願いして商品を届けてもらっているんだよ。たぶん来週に来ると思うから、その時に紹介するね」
「ああ。この店の商品は珍しい物ばかりだと思っていたが、やはり特殊な場所から仕入れていだんだな」
「……そうだな」
嘘をつくのは少し後ろめたいが、まだ俺の能力のことを話すわけにはいかないからな。
「開店準備はこんな感じかな。お店が始まったら、お客さんの案内や商品の説明をしてもらう。うちのお店は他のお店にはない商品が多いから、商品の使い方を聞かれることが多いんだ」
ローテーブルの組み立て方やクールタオルの使い方、浄水器や方位磁石にファイヤースターターでの火の着け方などなど、使い方の説明をできるようになってもらわないといけない。
「この店の商品は結構使わせてもらっていたから、大体の使い方は分かる。いくつか使ってない物の使い方を教えてほしい」
「ああ、もちろんだよ」
ドルファはうちのお店の商品をいろいろと使ってくれていたようで、大半の商品は使い方を説明しなくても大丈夫だった。
「次は会計だな。それじゃあ俺とリリアとフィアちゃんで、お客さんみたいにいろんな商品を会計に持っていくから、実際に会計してみてくれ」
「ああ、わかった」
「リリア、フィアちゃん、お客さんになったつもりでいろいろと買ってみてくれ」
「了解だ」
「はいです」
お店にあるお金を使って、会計の練習をする。リリアやフィアちゃんにも参加してもらうことで、みんなの勉強にもなるからな。
2人とも会計や接客については、たった1週間でほとんどできるようになったが、従業員同士でお互いに学ぶこともあるだろう。
「うん、みんないい感じだね。ドルファはもう少し笑顔のほうがいいかな」
ドルファのお金の計算については問題なさそうだった。数が多いと多少時間が掛かってしまうが、慣れればもっと速くなるだろう。それに最初の数日間は俺と一緒に行動してもらうから、その間に少しずつ慣れてもらえばいい。
あとは少し笑顔が固い気もする。接客業は笑顔が大事だからな。こっちの世界だと言葉遣いよりも笑顔のほうが重要かもしれない。
せっかくのイケメンなんだから、この機会にイケメンスマイルを習得して、数少ない女性冒険者のハートを鷲掴みしてもらうとしよう。
「笑顔か……こんな感じか?」
「ちょっと固いかな。ほら、こんな感じで。はい、リリアとフィアちゃんも」
「こ、こうか?」
「はいです!」
うん、2人ともいい笑顔である。リリアは少し恥ずかしがっているけれど、そこが逆に可愛らしいな。恥じらっている女の子が可愛く見えるのって俺だけじゃないよね!
フィアちゃんのほうは子供らしく満面の笑みである。これに癒されない男はいないといっても過言ではない。思わず、そのモフモフしたキツネミミを撫でたくなってしまったが、なんとか自重した。
「なかなか難しいな……みんなのような笑顔がうまくできないみたいだ」
俺は元の世界の営業で鍛えられてきたし、女の子のほうが笑う機会が多いのかもしれないな。
「……そうだな、アンジュさんがここにいると思ってみたらどう?」
「なるほど……こうか?」
「うおっ!?」
先程までの固い表情から一変し、ものすごい笑顔のイケメンの姿がここにあった。なんだろう、自然と背景に漫画のようにキラキラしたエフェクトが見える。すごいな、これがイケメンスマイルの威力か……
「いい笑顔だな」
「ま、眩しいです!」
「うん、バッチリだよ。このままの笑顔でいけそう?」
「……いや、実際にアンジュがいないと長時間維持するのは難しいな」
「………………」
よくわからんが、ドルファにしか分からない使用条件があるようだ。
「じゃあアンジュさんの親しい友達を相手にするくらいの感覚でどうだ?」
「アンジュに親しい男なんているか!」
「女の子! 男じゃなくて女の子の友達!」
イケメンスマイルからいきなり鬼の形相になった。このイケメンさんはたまに面倒だな……
「む、そうだな。こんな感じか?」
「いいね! お客さんを相手にする時はその笑顔で十分だよ」
「ああ、これなら可能だ」
先程よりは劣るが、それでも十分いい笑顔だ。一応妹さんの女友達には愛想良くしているらしい。先程の超イケメンスマイルは女性のクレーマーが来た時に使ってもらうとしよう。
まずはドルファに店の中を案内する。といってもそれほど広い店内ではない。
「ここが倉庫だ。商品ごとにこの木箱に入っている。お店が始まって店内の商品が少なくなったら、ここから商品の棚まで持っていって並べてくれ。場所は値札が付いているから、少しずつ覚えてくれればいい」
「ああ、わかった」
基本的には俺とリリアとフィアちゃんで、商品が足りなくなったら倉庫から商品を持ってきて棚に並べている。ブルーシートとかは意外と重いので、フィアちゃんが運ぶのが大変そうな物は俺が運ぶ。
「特にインスタントスープは4種類あって間違えやすいから気を付けてね。基本的にはこの倉庫にある分が終わったら、その日の分は終わりだよ。次の日の分は、夜に俺とリリアが上の階にある倉庫から下の倉庫に移動しておくから」
「ああ、了解だ」
本当はドルファが帰ったあとで、俺のアウトドアショップの能力で商品を補充する。俺の能力についてはしばらくドルファの様子を見てから伝えるつもりだ。
どちらにしろ、この1週間はお互いに試用期間となる。1週間働いてもらい、お互いに問題なければ正式に雇用となるわけだ。うちのお店としては人手不足だし、よっぽどのことがなければ、ドルファさんに働いてもらいたい。
「うちのお店はちょっと特殊な場所から仕入れを行っているんだ。数週間に一度、収納魔法を使える冒険者にお願いして商品を届けてもらっているんだよ。たぶん来週に来ると思うから、その時に紹介するね」
「ああ。この店の商品は珍しい物ばかりだと思っていたが、やはり特殊な場所から仕入れていだんだな」
「……そうだな」
嘘をつくのは少し後ろめたいが、まだ俺の能力のことを話すわけにはいかないからな。
「開店準備はこんな感じかな。お店が始まったら、お客さんの案内や商品の説明をしてもらう。うちのお店は他のお店にはない商品が多いから、商品の使い方を聞かれることが多いんだ」
ローテーブルの組み立て方やクールタオルの使い方、浄水器や方位磁石にファイヤースターターでの火の着け方などなど、使い方の説明をできるようになってもらわないといけない。
「この店の商品は結構使わせてもらっていたから、大体の使い方は分かる。いくつか使ってない物の使い方を教えてほしい」
「ああ、もちろんだよ」
ドルファはうちのお店の商品をいろいろと使ってくれていたようで、大半の商品は使い方を説明しなくても大丈夫だった。
「次は会計だな。それじゃあ俺とリリアとフィアちゃんで、お客さんみたいにいろんな商品を会計に持っていくから、実際に会計してみてくれ」
「ああ、わかった」
「リリア、フィアちゃん、お客さんになったつもりでいろいろと買ってみてくれ」
「了解だ」
「はいです」
お店にあるお金を使って、会計の練習をする。リリアやフィアちゃんにも参加してもらうことで、みんなの勉強にもなるからな。
2人とも会計や接客については、たった1週間でほとんどできるようになったが、従業員同士でお互いに学ぶこともあるだろう。
「うん、みんないい感じだね。ドルファはもう少し笑顔のほうがいいかな」
ドルファのお金の計算については問題なさそうだった。数が多いと多少時間が掛かってしまうが、慣れればもっと速くなるだろう。それに最初の数日間は俺と一緒に行動してもらうから、その間に少しずつ慣れてもらえばいい。
あとは少し笑顔が固い気もする。接客業は笑顔が大事だからな。こっちの世界だと言葉遣いよりも笑顔のほうが重要かもしれない。
せっかくのイケメンなんだから、この機会にイケメンスマイルを習得して、数少ない女性冒険者のハートを鷲掴みしてもらうとしよう。
「笑顔か……こんな感じか?」
「ちょっと固いかな。ほら、こんな感じで。はい、リリアとフィアちゃんも」
「こ、こうか?」
「はいです!」
うん、2人ともいい笑顔である。リリアは少し恥ずかしがっているけれど、そこが逆に可愛らしいな。恥じらっている女の子が可愛く見えるのって俺だけじゃないよね!
フィアちゃんのほうは子供らしく満面の笑みである。これに癒されない男はいないといっても過言ではない。思わず、そのモフモフしたキツネミミを撫でたくなってしまったが、なんとか自重した。
「なかなか難しいな……みんなのような笑顔がうまくできないみたいだ」
俺は元の世界の営業で鍛えられてきたし、女の子のほうが笑う機会が多いのかもしれないな。
「……そうだな、アンジュさんがここにいると思ってみたらどう?」
「なるほど……こうか?」
「うおっ!?」
先程までの固い表情から一変し、ものすごい笑顔のイケメンの姿がここにあった。なんだろう、自然と背景に漫画のようにキラキラしたエフェクトが見える。すごいな、これがイケメンスマイルの威力か……
「いい笑顔だな」
「ま、眩しいです!」
「うん、バッチリだよ。このままの笑顔でいけそう?」
「……いや、実際にアンジュがいないと長時間維持するのは難しいな」
「………………」
よくわからんが、ドルファにしか分からない使用条件があるようだ。
「じゃあアンジュさんの親しい友達を相手にするくらいの感覚でどうだ?」
「アンジュに親しい男なんているか!」
「女の子! 男じゃなくて女の子の友達!」
イケメンスマイルからいきなり鬼の形相になった。このイケメンさんはたまに面倒だな……
「む、そうだな。こんな感じか?」
「いいね! お客さんを相手にする時はその笑顔で十分だよ」
「ああ、これなら可能だ」
先程よりは劣るが、それでも十分いい笑顔だ。一応妹さんの女友達には愛想良くしているらしい。先程の超イケメンスマイルは女性のクレーマーが来た時に使ってもらうとしよう。