「とりあえず俺が行ってみるから、2人は店内にいてほしい。リリアは店の入り口付近でこっちの様子を見ていてくれ!」
「は、はいです!」
「わかった。何かあったらすぐに行くからな!」
「頼む!」
店内を2人に任せて店の外に出る。店外にはまだ10人ほどのお客さんが並んでおり、お店の入り口付近で2人の男性が言い争いをしていた。
ひとりはいかにも駆け出し冒険者といった、それほど立派ではない装備をした若者だ。そしてもうひとりは髭面が特徴の30代くらいの男性で、身につけている装備は多少いいもので年季が入っている。
「この店の店主です。どうしました!?」
2人は今にも殴り合いそうな雰囲気で睨み合っている。この間に割って入るのはめちゃくちゃ怖いが、店の責任者としていかなければならない。……いざとなったらリリアが出てきてくれることを信じよう。
「このおっさんがいきなり列に割り込んできたんだよ! 割り込んできたことは後ろのみんなも見ているぞ!」
「そうだ、そうだ!」
「横入りはやめろ!」
どうやらこちらの髭面の男性が列に横入りしたらしい。昨日も2人の冒険者がどちらが先に並んでいたかで軽く揉めていたな。
「すみません、申し訳ないのですが、順番に列に並んでいただきますか?」
「もうすぐ馬車の時間なんだよ。俺は隣の街から来たCランク冒険者だ。依頼ついでにこの街で最近有名な店があるって聞いたから、わざわざここまで寄りにきたんだよ。悪いが先に入れちゃくれねえか?」
「………………」
一応こちらのお客さんにも事情はあるらしい。だからといって、さすがに横入りを認めるわけにはいかない。お客さんは平等に扱わなければならないからな。
「わざわざこのお店に寄っていただいて、本当にありがとうございます。申し訳ないのですが、他のお客様もおりますので、順番に並んでいただけませんか?」
「ちっ、そこをなんとかしてくれって言ってんだろ!」
「……大変申し訳ないのですが、できかねます。この街の冒険者ギルドで方位磁石という道具だけは販売しておりますので、よろしければそちらのほうもご利用できますよ」
隣の街から噂を聞いてやってきたというのなら、おそらくは方位磁石目当てだろう。この時間なら冒険者ギルドの売店なら混んではいないはずだ。ここで並んで待つよりも、たぶんそちらの方が早い。
「ああん? 話の分からねえやつだな。こんな駆け出し冒険者の客どもより、俺のほうが金を持っている客だし、俺様のようなCランク冒険者のほうが、店に箔が付くってもんだろ?」
話の分からねえやつはお前だよ! 確かにこの街ではCランク以上の冒険者は珍しくて、他の冒険者よりもお金を持っているのかもしれないが、それでお客として優遇するつもりはない。……というか、あんたも昔は駆け出し冒険者だっただろうに。
「……当店はお客様をランクや持っているお金で選んでいるわけではありません。申し訳ないのですが、列の一番後ろまでお並びください」
「なんだと!!」
髭面の男がゆっくりと詰め寄ってくる。俺よりも背が高く、ガタイがいいため、ものすごく怖い……
「いいぞ、いいぞ!」
「そうだぞ、さっさと後ろに並べ!」
後ろに並んでいたお客さん達も、こちらに味方してくれるのはありがたいんだが、今はたぶん逆効果だからやめて!
「そこまでにしてもらおうか」
「リリア!」
「これ以上騒ぎを起こすようなら、お引き取り願おう!」
俺と近寄ってくる髭面の男の間に割って入るリリア。女性であるリリアに頼るのは情けない限りではあるが、めちゃくちゃ頼りになる。
「なんだてめえは? ちっ、顔はいいが片腕じゃねえか、気持ち悪い女だな!」
「………………」
どうやらこの男は元Bランク冒険者のリリアを知らないらしい。……というか、今のリリアへの言い方は非常に腹が立った。もうここにいる全員で袋叩きにしてやりたいんだが!
「他のお客様や従業員への無礼な態度は許容できない! あなたに売る物は何もないから、もう帰ってくれ!」
「な、なんだと! 雑魚が調子に乗りやがって!」
うおっ!? 逆上して殴りかかってきた!?
「んなっ!?」
「見掛け倒しだな」
髭面の男が俺に向かって殴りかかってきたのだが、それをリリアは右手で軽々と受け止めた。髭面の男のほうが大柄で腕も太いのだが、細身のリリアの細い片腕で、いとも簡単に受け止めている。
「いでででで!?」
そして髭面の男の右腕を捻りあげ、地面に組み伏せた。いったいあの細い身体のどこにあれだけの力があるのだろう……
「テツヤ、衛兵を呼んできてくれないか?」
「あ、ああ! すぐに連れてくる!」
「いでででで! ちくしょう、離しやがれ!」
リリアが髭面の男を拘束している間に急いで衛兵の詰所まで走った。何かあった時のために衛兵の詰所の場所は把握してある。
そして髭面の男は俺が連れてきた衛兵達に拘束されて連行されていった。リリアのおかげで、俺やお客さんに怪我ひとつなく無事にこの場を収めることができた。
……他の街から来たと言っていたが、もしかしたら他の店が嫌がらせで髭面の男をけしかけた可能性もゼロではない。今まで以上に気を引き締めないといけないな。
連行されていった髭面の男は暴行未遂として処罰されるらしい。冒険者として降格処分くらいは受けるかもしれないとリリアが言っていた。……もっと重い罪でもよかったのにな。
このあとは大きなトラブルはなく、無事に2日目の営業を終えることができた。
「は、はいです!」
「わかった。何かあったらすぐに行くからな!」
「頼む!」
店内を2人に任せて店の外に出る。店外にはまだ10人ほどのお客さんが並んでおり、お店の入り口付近で2人の男性が言い争いをしていた。
ひとりはいかにも駆け出し冒険者といった、それほど立派ではない装備をした若者だ。そしてもうひとりは髭面が特徴の30代くらいの男性で、身につけている装備は多少いいもので年季が入っている。
「この店の店主です。どうしました!?」
2人は今にも殴り合いそうな雰囲気で睨み合っている。この間に割って入るのはめちゃくちゃ怖いが、店の責任者としていかなければならない。……いざとなったらリリアが出てきてくれることを信じよう。
「このおっさんがいきなり列に割り込んできたんだよ! 割り込んできたことは後ろのみんなも見ているぞ!」
「そうだ、そうだ!」
「横入りはやめろ!」
どうやらこちらの髭面の男性が列に横入りしたらしい。昨日も2人の冒険者がどちらが先に並んでいたかで軽く揉めていたな。
「すみません、申し訳ないのですが、順番に列に並んでいただきますか?」
「もうすぐ馬車の時間なんだよ。俺は隣の街から来たCランク冒険者だ。依頼ついでにこの街で最近有名な店があるって聞いたから、わざわざここまで寄りにきたんだよ。悪いが先に入れちゃくれねえか?」
「………………」
一応こちらのお客さんにも事情はあるらしい。だからといって、さすがに横入りを認めるわけにはいかない。お客さんは平等に扱わなければならないからな。
「わざわざこのお店に寄っていただいて、本当にありがとうございます。申し訳ないのですが、他のお客様もおりますので、順番に並んでいただけませんか?」
「ちっ、そこをなんとかしてくれって言ってんだろ!」
「……大変申し訳ないのですが、できかねます。この街の冒険者ギルドで方位磁石という道具だけは販売しておりますので、よろしければそちらのほうもご利用できますよ」
隣の街から噂を聞いてやってきたというのなら、おそらくは方位磁石目当てだろう。この時間なら冒険者ギルドの売店なら混んではいないはずだ。ここで並んで待つよりも、たぶんそちらの方が早い。
「ああん? 話の分からねえやつだな。こんな駆け出し冒険者の客どもより、俺のほうが金を持っている客だし、俺様のようなCランク冒険者のほうが、店に箔が付くってもんだろ?」
話の分からねえやつはお前だよ! 確かにこの街ではCランク以上の冒険者は珍しくて、他の冒険者よりもお金を持っているのかもしれないが、それでお客として優遇するつもりはない。……というか、あんたも昔は駆け出し冒険者だっただろうに。
「……当店はお客様をランクや持っているお金で選んでいるわけではありません。申し訳ないのですが、列の一番後ろまでお並びください」
「なんだと!!」
髭面の男がゆっくりと詰め寄ってくる。俺よりも背が高く、ガタイがいいため、ものすごく怖い……
「いいぞ、いいぞ!」
「そうだぞ、さっさと後ろに並べ!」
後ろに並んでいたお客さん達も、こちらに味方してくれるのはありがたいんだが、今はたぶん逆効果だからやめて!
「そこまでにしてもらおうか」
「リリア!」
「これ以上騒ぎを起こすようなら、お引き取り願おう!」
俺と近寄ってくる髭面の男の間に割って入るリリア。女性であるリリアに頼るのは情けない限りではあるが、めちゃくちゃ頼りになる。
「なんだてめえは? ちっ、顔はいいが片腕じゃねえか、気持ち悪い女だな!」
「………………」
どうやらこの男は元Bランク冒険者のリリアを知らないらしい。……というか、今のリリアへの言い方は非常に腹が立った。もうここにいる全員で袋叩きにしてやりたいんだが!
「他のお客様や従業員への無礼な態度は許容できない! あなたに売る物は何もないから、もう帰ってくれ!」
「な、なんだと! 雑魚が調子に乗りやがって!」
うおっ!? 逆上して殴りかかってきた!?
「んなっ!?」
「見掛け倒しだな」
髭面の男が俺に向かって殴りかかってきたのだが、それをリリアは右手で軽々と受け止めた。髭面の男のほうが大柄で腕も太いのだが、細身のリリアの細い片腕で、いとも簡単に受け止めている。
「いでででで!?」
そして髭面の男の右腕を捻りあげ、地面に組み伏せた。いったいあの細い身体のどこにあれだけの力があるのだろう……
「テツヤ、衛兵を呼んできてくれないか?」
「あ、ああ! すぐに連れてくる!」
「いでででで! ちくしょう、離しやがれ!」
リリアが髭面の男を拘束している間に急いで衛兵の詰所まで走った。何かあった時のために衛兵の詰所の場所は把握してある。
そして髭面の男は俺が連れてきた衛兵達に拘束されて連行されていった。リリアのおかげで、俺やお客さんに怪我ひとつなく無事にこの場を収めることができた。
……他の街から来たと言っていたが、もしかしたら他の店が嫌がらせで髭面の男をけしかけた可能性もゼロではない。今まで以上に気を引き締めないといけないな。
連行されていった髭面の男は暴行未遂として処罰されるらしい。冒険者として降格処分くらいは受けるかもしれないとリリアが言っていた。……もっと重い罪でもよかったのにな。
このあとは大きなトラブルはなく、無事に2日目の営業を終えることができた。