「これがダナマベアの肉か!」
冒険者ギルドマスターのライザックさんから開店祝いにもらった包みを開いてみると、そこにはサシの入った大きな肉の塊が現れた。この世界の翻訳機能がどうなっているのかはわからないが、ベアということはやはり熊の魔物とかなんだろうか?
牛の肉と違って鮮やかな赤色ではなく、少し赤黒い色をしている。さすがに元の世界で熊肉は食べたことはないが、どんな味がするかは気になるな。
「テツヤ、どう料理するのだ?」
「結構な量があるから、とりあえず今日は普通に焼いてみて、明日は鍋とかにしてみるかな」
さすがにこの肉の量はフィアちゃんのお母さんの分を入れたとしても、一食では食べきれないほどの量だ。とりあえず今日はシンプルに焼いてみて、明日は鍋や汁物にしてみるつもりだ。
「テツヤお兄ちゃん、何か手伝おうか?」
「ありがとう。そしたらリリアと一緒に野菜を切るのを手伝ってほしいな」
「うん!」
せっかくだからフィアちゃんとリリアにも料理を手伝ってもらう。みんなで料理をしたほうがより美味しく感じるもんな。
「よし、できた。早速みんなで食べよう!」
今日はみんな疲れているので、簡単な料理をふたつだけ作った。まず一品目はダナマベアの肉野菜炒めだ。これはシンプルに肉と野菜を炒めただけだが、味付けは魚醤と酒とすりおろしたニンニクと生姜で作った特製ダレだ。このタレはいろいろと使えるので多めに作って保存してある。
「おお、確かにこの肉はうまいな! 獣臭さなんてまったく感じないし、柔らかくて、噛めば噛むほど濃い肉の味が滲み出てくるよ!」
「ふわっ、お肉がとっても美味しいです!」
「ふむ、テツヤが作ったこのタレはうまい。肉と野菜を炒めただけなのにこんなにうまくなるとは思わなかったぞ」
「いや、これは肉がうまいよ。魔物の肉ってこんなにうまい肉もあるんだな」
簡単な肉野菜炒めなのにめちゃくちゃうまい。肉がうまくなるだけで、ただの肉野菜炒めがこれほどの味になるとは驚きだ。こちらの世界でいつも食べている魔物の肉は、うまくなるように育てられた元の世界の肉には少し劣っているのだが、この肉はさすが高級食材というだけあって、元の世界の高級肉に負けないほどの美味しさだった。
あとはこれに米があれば完璧なところである。肉野菜炒めにはパンよりも米がほしくなる。
「さて、それじゃあもう一品のほうも完成だな。さてこっちのほうも食べようか」
「……テツヤ、この銀色のものはなんなのだ?」
「キラキラしてとっても綺麗です!」
「これはアルミホイルっていうんだ。今回のメイン料理のダナマベアのステーキだよ。中はかなり熱いから気をつけてね。フィアちゃんの分は俺が開けるよ」
皿の上に乗っているアルミホイルを開けると、そこからはこれぞ肉と主張するようなステーキが現れた。ちなみにアルミホイルは元の世界から持ってきたリュックに入っていたものなので限りがある。
「……中は普通に肉を焼いただけではないのか?」
「いろいろと焼き方にもこだわっているからな。試しに食べてみてよ」
「テツヤがそう言うなら試してみよう」
「いい匂いです!」
ナイフとフォークを使いステーキを一口大に切って口へと運ぶ。レアとミディアムあたりで焼いたので、肉の中心にはまだ赤みが残っている。
「む、これは!? なんという肉汁の量、なんという柔らかさ、そしてなんという美味しさなのだ!?」
「お、美味しいです! こんな美味しいお肉を食べたのは初めてです!」
「おお、これは美味いな!」
ダナマベアの肉は歯を通すとスッと噛み切れるほど柔らかく、脂の旨みである肉汁が口の中に溢れてくる。獣臭さもなく、元の世界の牛とは異なる味わいだが、高級な和牛のステーキにも負けない味だ。
品種改良されて餌にも気を遣って育てられた元の世界の牛肉と同じくらいの味というのは驚きだ。もしかしたら、この世界にある魔力というものが関係しているのかもしれない。
「すごいな。私は前にダナマベアの肉を食べたことはあったが、この肉ほど柔らかくなく、これほどまでの味ではなかったぞ!」
「俺がいた世界だと肉の焼き方にもいろいろと工夫がされているんだよ」
ステーキといっても実は結構奥が深い。今回はいろいろとこだわってみた。
まずは肉に包丁で筋切りをする。そしてみじん切りにしたタマネギと一緒にいれておく。こうすることにより肉の繊維が柔らかくなり、焼いても箸で切れるほど柔らかくなる。
そしてこちらの世界にやってきた時に持っていたスキレットを加熱する。スキレットとは鋳鉄製の厚みがあるフライパンで、熱伝導や蓄熱性に優れている。そのため食材に均一に火が通り、ムラなく肉の旨みを閉じ込めて焼きあげることが可能だ。
炭で熱したスキレットに牛脂ならぬ熊脂を塗って、先程用意した肉にアウトドアスパイスで下味を付けてからスキレットに投入。強火で一気に両面を焼き上げてから、すぐにアルミホイルで肉を包み、数分間休ませる。こうすることで余熱を利用し、中までじっくりと熱を通し、肉汁を封じ込めることができる。
今回は高級肉ということなのでレアからミディアムレアくらいで焼きあげてみた。ここまでこだわったステーキがうまくないはずがあるだろうか、いやない!
「……ふうむ、テツヤの世界は食に対するこだわりがすごいな」
「そこは完全に同意するよ」
今更だが、日本人の食に対するこだわりはなかなかのものだよな。
「アウトドアスパイスも美味しいけれど、ステーキソースも作ってみたから試してみてね」
魔物の肉に効果があるのかはわからないが、肉を柔らかくするために使ったタマネギのみじん切りとタレを混ぜて少し煮詰めたオニオンソースのステーキソースだ。
「こっちも美味しいよ! フィアはこっちのほうが好きかな」
「確かにこれも美味いな。だが私はアウトドアスパイスのほうが好きかもしれん」
「味の好みはそれぞれだからね。お母さんのレーアさんにもお肉とタレをお裾分けするから持って帰ってあげてね」
「はい! テツヤお兄ちゃん、ありがとうです!」
この世界に来てから食べた肉の中でも一番美味しい肉だったな。これはライザックさんには感謝しないといけない。今度会った時に改めてお礼を伝えるとしよう。
冒険者ギルドマスターのライザックさんから開店祝いにもらった包みを開いてみると、そこにはサシの入った大きな肉の塊が現れた。この世界の翻訳機能がどうなっているのかはわからないが、ベアということはやはり熊の魔物とかなんだろうか?
牛の肉と違って鮮やかな赤色ではなく、少し赤黒い色をしている。さすがに元の世界で熊肉は食べたことはないが、どんな味がするかは気になるな。
「テツヤ、どう料理するのだ?」
「結構な量があるから、とりあえず今日は普通に焼いてみて、明日は鍋とかにしてみるかな」
さすがにこの肉の量はフィアちゃんのお母さんの分を入れたとしても、一食では食べきれないほどの量だ。とりあえず今日はシンプルに焼いてみて、明日は鍋や汁物にしてみるつもりだ。
「テツヤお兄ちゃん、何か手伝おうか?」
「ありがとう。そしたらリリアと一緒に野菜を切るのを手伝ってほしいな」
「うん!」
せっかくだからフィアちゃんとリリアにも料理を手伝ってもらう。みんなで料理をしたほうがより美味しく感じるもんな。
「よし、できた。早速みんなで食べよう!」
今日はみんな疲れているので、簡単な料理をふたつだけ作った。まず一品目はダナマベアの肉野菜炒めだ。これはシンプルに肉と野菜を炒めただけだが、味付けは魚醤と酒とすりおろしたニンニクと生姜で作った特製ダレだ。このタレはいろいろと使えるので多めに作って保存してある。
「おお、確かにこの肉はうまいな! 獣臭さなんてまったく感じないし、柔らかくて、噛めば噛むほど濃い肉の味が滲み出てくるよ!」
「ふわっ、お肉がとっても美味しいです!」
「ふむ、テツヤが作ったこのタレはうまい。肉と野菜を炒めただけなのにこんなにうまくなるとは思わなかったぞ」
「いや、これは肉がうまいよ。魔物の肉ってこんなにうまい肉もあるんだな」
簡単な肉野菜炒めなのにめちゃくちゃうまい。肉がうまくなるだけで、ただの肉野菜炒めがこれほどの味になるとは驚きだ。こちらの世界でいつも食べている魔物の肉は、うまくなるように育てられた元の世界の肉には少し劣っているのだが、この肉はさすが高級食材というだけあって、元の世界の高級肉に負けないほどの美味しさだった。
あとはこれに米があれば完璧なところである。肉野菜炒めにはパンよりも米がほしくなる。
「さて、それじゃあもう一品のほうも完成だな。さてこっちのほうも食べようか」
「……テツヤ、この銀色のものはなんなのだ?」
「キラキラしてとっても綺麗です!」
「これはアルミホイルっていうんだ。今回のメイン料理のダナマベアのステーキだよ。中はかなり熱いから気をつけてね。フィアちゃんの分は俺が開けるよ」
皿の上に乗っているアルミホイルを開けると、そこからはこれぞ肉と主張するようなステーキが現れた。ちなみにアルミホイルは元の世界から持ってきたリュックに入っていたものなので限りがある。
「……中は普通に肉を焼いただけではないのか?」
「いろいろと焼き方にもこだわっているからな。試しに食べてみてよ」
「テツヤがそう言うなら試してみよう」
「いい匂いです!」
ナイフとフォークを使いステーキを一口大に切って口へと運ぶ。レアとミディアムあたりで焼いたので、肉の中心にはまだ赤みが残っている。
「む、これは!? なんという肉汁の量、なんという柔らかさ、そしてなんという美味しさなのだ!?」
「お、美味しいです! こんな美味しいお肉を食べたのは初めてです!」
「おお、これは美味いな!」
ダナマベアの肉は歯を通すとスッと噛み切れるほど柔らかく、脂の旨みである肉汁が口の中に溢れてくる。獣臭さもなく、元の世界の牛とは異なる味わいだが、高級な和牛のステーキにも負けない味だ。
品種改良されて餌にも気を遣って育てられた元の世界の牛肉と同じくらいの味というのは驚きだ。もしかしたら、この世界にある魔力というものが関係しているのかもしれない。
「すごいな。私は前にダナマベアの肉を食べたことはあったが、この肉ほど柔らかくなく、これほどまでの味ではなかったぞ!」
「俺がいた世界だと肉の焼き方にもいろいろと工夫がされているんだよ」
ステーキといっても実は結構奥が深い。今回はいろいろとこだわってみた。
まずは肉に包丁で筋切りをする。そしてみじん切りにしたタマネギと一緒にいれておく。こうすることにより肉の繊維が柔らかくなり、焼いても箸で切れるほど柔らかくなる。
そしてこちらの世界にやってきた時に持っていたスキレットを加熱する。スキレットとは鋳鉄製の厚みがあるフライパンで、熱伝導や蓄熱性に優れている。そのため食材に均一に火が通り、ムラなく肉の旨みを閉じ込めて焼きあげることが可能だ。
炭で熱したスキレットに牛脂ならぬ熊脂を塗って、先程用意した肉にアウトドアスパイスで下味を付けてからスキレットに投入。強火で一気に両面を焼き上げてから、すぐにアルミホイルで肉を包み、数分間休ませる。こうすることで余熱を利用し、中までじっくりと熱を通し、肉汁を封じ込めることができる。
今回は高級肉ということなのでレアからミディアムレアくらいで焼きあげてみた。ここまでこだわったステーキがうまくないはずがあるだろうか、いやない!
「……ふうむ、テツヤの世界は食に対するこだわりがすごいな」
「そこは完全に同意するよ」
今更だが、日本人の食に対するこだわりはなかなかのものだよな。
「アウトドアスパイスも美味しいけれど、ステーキソースも作ってみたから試してみてね」
魔物の肉に効果があるのかはわからないが、肉を柔らかくするために使ったタマネギのみじん切りとタレを混ぜて少し煮詰めたオニオンソースのステーキソースだ。
「こっちも美味しいよ! フィアはこっちのほうが好きかな」
「確かにこれも美味いな。だが私はアウトドアスパイスのほうが好きかもしれん」
「味の好みはそれぞれだからね。お母さんのレーアさんにもお肉とタレをお裾分けするから持って帰ってあげてね」
「はい! テツヤお兄ちゃん、ありがとうです!」
この世界に来てから食べた肉の中でも一番美味しい肉だったな。これはライザックさんには感謝しないといけない。今度会った時に改めてお礼を伝えるとしよう。