「テツヤ、インスタントスープのコンソメとコーンクリーム、それとブルーシートがもうなくなりそうだ」
「了解! 奥から持ってくるから、会計のほうをちょっとお願い!」
「ああ、わかった」
このお店の一階にある倉庫から、減ってきた商品を補充してくる。基本的に商品の補充は俺が行うことになる。フィアちゃんはそれほどの量を持ち運べないし、リリアには店の護衛をしてもらっているから、できる限りは店の中にいてもらいたい。
「ええ〜と、コンソメとコーンクリームとブルーシートと……」
倉庫から足りなくなった商品を補充していく。基本的に商品はアウトドアショップの能力を使って前日の夜に準備をしておき、店を開いている間は補充をしない。
万が一にでも、何もない空間から商品を出すところを見られてはいけないからな。それにいつでもアウトドアショップの能力で仕入れができるといって、倉庫を空っぽにしておくわけにもいかない。
「よし、商品の補充はオッケーだ」
「テツヤお兄ちゃん、お客様にこっちの商品の詳しい説明をお願いしても大丈夫?」
「もちろん。はい、こちらの商品につきましてはですね……」
ふう……思ったよりも忙しい。オープンした初日ということもあって、なかなかお客さんの列が引いていかない。今日初めてお店に来てくれたお客さんも多く、商品についての説明を求められることも多い。
今日の話を人から聞いてやってくるお客さんもいるだろうし、しばらくは忙しいかもしれないな。
「ありがとうございました」
「少しだけどお客さんが引いてきたな。今のうちに交代で軽く昼食を食べちゃおう」
「はいです」
「了解だ」
お昼前になると、ようやくお客さんの列が途切れてきてくれた。普段の営業ではお昼時に一度店を閉め、食事を含めた休憩を1時間取るのだが、オープン初日の今日は交代で昼食を取っていき、店は開けたままにしておく。
「このあとの時間帯は依頼から戻ってくる冒険者達が増えてくる。また忙しくなるから、もうひと踏ん張り頑張ろう!」
「が、頑張ります!」
「うむ!」
屋台で店を開いていた時は、一番冒険者のお客さんが集まってくる昼過ぎの時間帯からしか店を開いていなかった。今日もこれから夕方までの時間帯でさらにお客さんはやってくるだろう。もうひと踏ん張りするとしよう。
「……ようやく落ち着いてくれたな」
「疲れました……」
「ふむ、2人ともよく頑張ったな」
夕方になり、ようやく店内にお客さんが数人ほどしかいないくらいにお店が落ち着いてきた。あと30分ほどすれば、予定通り今日の営業が終わる時間だ。フィアちゃんや俺はすでにヘトヘトだが、リリアだけは涼しい顔をしている。さすが高ランク冒険者だけあって体力が俺達とは全然違う。
幸い今日のところは大きなトラブルはなかった。朝イチで起きたお客さん同士の列の並びのトラブルが、一番大きなトラブルだったくらいだ。その際はリリアが冒険者達をうまく収めてくれた。
その他にはフィアちゃんが多少会計の間違いをしてしまったり、商品を落としてしまったくらいで大きな問題にはなっていない。それと商品を個数制限以上に売ってくれと言う客もいて断ったりもしたが、今回は素直に引いてくれた。ただ今後は面倒なお客さんも来るんだろうな……
「おう、邪魔するぜ!」
「いらっしゃいませ、ライザックさん」
もうすぐ閉店時間というところで、目つきの悪い大柄な男が店内に入ってきた。見た目だけでいうならば、完全に犯罪者として通報するレベルなんだが、この人はこの街の冒険者ギルドマスターであるライザックさんである。
「おう、テツヤ。無事に新しい店をオープンしたんだってな。前の屋台の店よりも、よっぽどいい店じゃねえか!」
「ありがとうございます。フィアちゃん、リリア、少しの間お店をお願いするね」
「はいです」
「ああ、任せてくれ」
ライザックさんは大柄なだけでなく声も大きい。店内にいたお客さんも、驚いてこちらを見ている。
「まずこれは開店祝いだ。こいつは冒険者ギルドからというよりは、俺個人からの祝いになるな」
ドスンッと大きな包みを置くライザックさん。
「こいつはダナマベアの肉だ。この辺りじゃあ結構な高級食材になる。少し前に俺が自分で仕留めてきたやつだから、みんなで遠慮なく食ってくれ!」
「おお、高級食材ですか! 本当にありがとうございます。みんなでいただきますね」
開店祝いに肉とはライザックさんらしいが、これはこれでとてもありがたい。店が終わったら、リリアやフィアちゃんと一緒に楽しませてもらうとしよう。
「なあに、テツヤから卸してもらっている方位磁石のおかげで、森で行方不明になる冒険者の数が目に見えて減っているからな! パトリスのやつも感謝を伝えておいてくれだとよ。それと本当はもうちっとお礼を渡したいところなんだが、冒険者ギルドからとなるといろいろ面倒でな」
なるほど、冒険者ギルドからになると賄賂的な贈り物として見られる可能性があるのかな。
「いえ、とんでもないです。ありがたく楽しませてもらいますね! それと冒険者達のお役に立てて何よりです」
「それにしてもまた見たことのない物を売っているらしいな。いろいろと見せてもらうぜ」
「ええ、もちろんですよ。今後ともどうぞよろしくお願いしますね!」
そのあとライザックさんはお店の商品をいくつか買って帰っていった。そして営業時間が過ぎ、なんとか無事にオープン初日の営業を終えることができた。
「了解! 奥から持ってくるから、会計のほうをちょっとお願い!」
「ああ、わかった」
このお店の一階にある倉庫から、減ってきた商品を補充してくる。基本的に商品の補充は俺が行うことになる。フィアちゃんはそれほどの量を持ち運べないし、リリアには店の護衛をしてもらっているから、できる限りは店の中にいてもらいたい。
「ええ〜と、コンソメとコーンクリームとブルーシートと……」
倉庫から足りなくなった商品を補充していく。基本的に商品はアウトドアショップの能力を使って前日の夜に準備をしておき、店を開いている間は補充をしない。
万が一にでも、何もない空間から商品を出すところを見られてはいけないからな。それにいつでもアウトドアショップの能力で仕入れができるといって、倉庫を空っぽにしておくわけにもいかない。
「よし、商品の補充はオッケーだ」
「テツヤお兄ちゃん、お客様にこっちの商品の詳しい説明をお願いしても大丈夫?」
「もちろん。はい、こちらの商品につきましてはですね……」
ふう……思ったよりも忙しい。オープンした初日ということもあって、なかなかお客さんの列が引いていかない。今日初めてお店に来てくれたお客さんも多く、商品についての説明を求められることも多い。
今日の話を人から聞いてやってくるお客さんもいるだろうし、しばらくは忙しいかもしれないな。
「ありがとうございました」
「少しだけどお客さんが引いてきたな。今のうちに交代で軽く昼食を食べちゃおう」
「はいです」
「了解だ」
お昼前になると、ようやくお客さんの列が途切れてきてくれた。普段の営業ではお昼時に一度店を閉め、食事を含めた休憩を1時間取るのだが、オープン初日の今日は交代で昼食を取っていき、店は開けたままにしておく。
「このあとの時間帯は依頼から戻ってくる冒険者達が増えてくる。また忙しくなるから、もうひと踏ん張り頑張ろう!」
「が、頑張ります!」
「うむ!」
屋台で店を開いていた時は、一番冒険者のお客さんが集まってくる昼過ぎの時間帯からしか店を開いていなかった。今日もこれから夕方までの時間帯でさらにお客さんはやってくるだろう。もうひと踏ん張りするとしよう。
「……ようやく落ち着いてくれたな」
「疲れました……」
「ふむ、2人ともよく頑張ったな」
夕方になり、ようやく店内にお客さんが数人ほどしかいないくらいにお店が落ち着いてきた。あと30分ほどすれば、予定通り今日の営業が終わる時間だ。フィアちゃんや俺はすでにヘトヘトだが、リリアだけは涼しい顔をしている。さすが高ランク冒険者だけあって体力が俺達とは全然違う。
幸い今日のところは大きなトラブルはなかった。朝イチで起きたお客さん同士の列の並びのトラブルが、一番大きなトラブルだったくらいだ。その際はリリアが冒険者達をうまく収めてくれた。
その他にはフィアちゃんが多少会計の間違いをしてしまったり、商品を落としてしまったくらいで大きな問題にはなっていない。それと商品を個数制限以上に売ってくれと言う客もいて断ったりもしたが、今回は素直に引いてくれた。ただ今後は面倒なお客さんも来るんだろうな……
「おう、邪魔するぜ!」
「いらっしゃいませ、ライザックさん」
もうすぐ閉店時間というところで、目つきの悪い大柄な男が店内に入ってきた。見た目だけでいうならば、完全に犯罪者として通報するレベルなんだが、この人はこの街の冒険者ギルドマスターであるライザックさんである。
「おう、テツヤ。無事に新しい店をオープンしたんだってな。前の屋台の店よりも、よっぽどいい店じゃねえか!」
「ありがとうございます。フィアちゃん、リリア、少しの間お店をお願いするね」
「はいです」
「ああ、任せてくれ」
ライザックさんは大柄なだけでなく声も大きい。店内にいたお客さんも、驚いてこちらを見ている。
「まずこれは開店祝いだ。こいつは冒険者ギルドからというよりは、俺個人からの祝いになるな」
ドスンッと大きな包みを置くライザックさん。
「こいつはダナマベアの肉だ。この辺りじゃあ結構な高級食材になる。少し前に俺が自分で仕留めてきたやつだから、みんなで遠慮なく食ってくれ!」
「おお、高級食材ですか! 本当にありがとうございます。みんなでいただきますね」
開店祝いに肉とはライザックさんらしいが、これはこれでとてもありがたい。店が終わったら、リリアやフィアちゃんと一緒に楽しませてもらうとしよう。
「なあに、テツヤから卸してもらっている方位磁石のおかげで、森で行方不明になる冒険者の数が目に見えて減っているからな! パトリスのやつも感謝を伝えておいてくれだとよ。それと本当はもうちっとお礼を渡したいところなんだが、冒険者ギルドからとなるといろいろ面倒でな」
なるほど、冒険者ギルドからになると賄賂的な贈り物として見られる可能性があるのかな。
「いえ、とんでもないです。ありがたく楽しませてもらいますね! それと冒険者達のお役に立てて何よりです」
「それにしてもまた見たことのない物を売っているらしいな。いろいろと見せてもらうぜ」
「ええ、もちろんですよ。今後ともどうぞよろしくお願いしますね!」
そのあとライザックさんはお店の商品をいくつか買って帰っていった。そして営業時間が過ぎ、なんとか無事にオープン初日の営業を終えることができた。