「こっちにもいい香りが漂ってくるぜ」

「本当……いい匂いね!」

 フィアちゃんとリリアに手伝ってもらい、4種類のスープを作ってもらう。お客さんの前で実際にインスタントスープとお湯を入れるだけで、これほど美味しいスープが出来上がるということを目で見てもらった。

「味は全部で4種類あります。今作った分だけですが、順番に回していきますので、ひとつを選んで少しずつ味を試してくださいね」

 この世界の人達は間接キスなどは気にしないので、大きめの鍋に入れて作った4つのスープのうちからひとつ選んで味を見てもらう。最初に来てくれたお客さんにはさっき試してもらったコンソメスープの他にもう一種類選んでもらった。

「うわ、こっちのスープはさっきのスープとは違って少し甘くて優しい味だ! こっちも美味しい!」

「このスープはたまごが入っているのか。透明なスープだけど味がしっかりついていてうめえじゃねえか!」

「こっちのスープは変な色をしているけれど美味しいわ! それに何か黒い具も入っているわね」

 どのインスタントスープも好評のようだ。意外なことに味噌汁も大丈夫なんだな。他のスープとは違って色が少しスープらしくないので、選択される確率は少ないが、まずいという人はいないようだ。

「これらのインスタントスープはお湯を注ぐだけで、こんなに簡単に本格的なスープが味わえます。依頼の合間の休憩に、体温まる美味しいスープなんていかがでしょうか?」

 この街では例の大きな森や草原で活動している冒険者達が多い。ちょっとした昼の休憩にお湯を沸かすだけで、美味しいスープが楽しめるわけだ。最近では少しずつファイヤースターターを使う冒険者も増えてきたので、火を起こすのもそれほど手間ではなくなってきている。

「このインスタントスープはこちらの木筒にコップやお椀で10回分入っておりまして、なんとたったの銀貨3枚、銀貨3枚での販売となっております!」

「おお、それは安い!」

「へえ〜ってことは一回で……銅貨3枚か!」

「それなら結構手軽に飲めるわね!」

「さらにさらに、こちらの木筒をお持ちいただければ、そちらの木筒と引き換えに銀貨2枚で10回分を販売いたします。もちろんその際は買った時と異なる味のスープでもオッケーです!」

「「「おおお〜!」」」

 インスタントスープもアウトドアスパイスと同様に、よくあるプラスチックの包装などは付いていない。購入をする際に容器を指定するとその容器の中に粉が現れる。ちなみにアウトドアショップでの価格は10回分で銀貨1枚だ。

 インスタントスープを入れている小さな木筒の容器は、この街のとあるお店で大量に購入した物だ。ひとつ銀貨1枚のところを大量に購入することで、銅貨8枚にまけてもらった。

 もちろんそのお店の人には、うちのお店で回収して何度も改めて使うことの了承は得ている。向こうからしたら無料でお店の商品を宣伝してくれることになるからな。

 使い終わって空になった木筒を持ってきてくれれば、それと引き換えに新しいスープを銀貨2枚で購入できる。回収した木筒は洗って再利用するというわけだ。



「続いての商品はこちらのブルーシートになります。こちらのシートは普通の布とは異なり、なんと水を通しません! それだけで賢い冒険者のみなさんなら、様々な使い方を思いつけますよね。

 例えばですが、森で突然の雨に降られた時、このブルーシートの四隅をロープで木に結べば、あっという間に一休みできる場所を確保できます。

 また、解体をする際に地面に敷けば、解体した肉や素材に汚い土がつくことはありません。また解体した肉や素材をブルーシートに包めば、血や汚れを他の荷物につけることなく持ち運ぶことができます。汚れたブルーシートは水で洗えば、また何度でも使うことができますよ」

「「「おおお〜!」」」

 元冒険者のリリアやフィアちゃんと相談して、ブルーシートの良い使い方をアピールしようといろいろと考えた。この世界では水を通さないブルーシートはいろいろなことに使える。

 元の世界でもブルーシートは敷物として使うだけでなく、テントのグランドシートやタープとしても使うことができる。見た目さえ気にしなければ、100均で買ったブルーシートとロープで数千円するタープの代わりにもなる。

 そして冒険者としての一番の使い道は、解体作業時に汚れないように地面に敷いたり、解体した肉や素材を街に持ち帰る際にブルーシートで包んで持ち運ぶことだ。ランジェさんのように収納魔法を使える魔法使いがいなければ、解体した肉や素材は自分達で運ばないといけないからな。

「なんとこちらのブルーシートは銀貨3枚の販売となっております。またこれと組み合わせて使える頑丈なロープも銀貨3枚で販売しますので、ぜひともご覧になってください」

 ブルーシートもロープもアウトドアショップでの価格は銀貨1枚と銅貨5枚だ。ロープは他の店でも売っているのだが、この店で売るロープは頑丈な物になるから少し高めに設定している。どちらもとても便利なので、需要はかなりあると思っている。

「大変ながらくお待たせしました。それでは順番に、ごゆっくりとご入場ください!」