「おお、リリアか」
しばらく待つと、工房の奥の方から小柄なドワーフの男が現れた。ずんぐりとした体型で、白くて立派なヒゲを生やしている。
「グレゴ殿、ご無沙汰しているな」
「ついに冒険者を引退したと聞いたぞ。まだリリアに頼みたかった素材もあったんじゃがな。……それにしても今日はどういった組み合わせなんじゃ?」
確かにこの人の言う通り、戦闘能力が皆無な俺やまだ幼いフィアちゃんが、リリアと一緒に鍛冶屋にいることはおかしなことでもある。
「ああ、つい先日に冒険者を引退したんだ。そして、ここにいるテツヤが始めた冒険者のためのお店に雇われることになったので、グレゴ殿にも挨拶をしておきたくてな」
「ほう、Bランク冒険者だったお主がのう。……もしかして、あのローテーブルを売っていた例の店か?」
「ああ、そうだぞ」
ローテーブル? 有名になった方位磁石のほうじゃなくてか?
「おお、お主が例の店の店主か! リリアから話を聞いて一度話をしたいと思っていたんじゃ!」
「初めまして、テツヤと申します。この街でアウトドアショップという駆け出し冒険者のためのお店を開きました。どうぞ、よろしくお願いします」
「グレゴじゃ。この工房の責任者をやっておる。お主の店で売っていたあのローテーブルというものを見せてもらったぞ。ありゃあ実に良い仕事をしておるし、とても面白い仕組みじゃったわい!」
「……あっ、はい。俺が作ったわけではないですが、お褒めいただいて恐縮です」
……どうやらグレゴさんは方位磁石よりもローテーブルに興味を持ってくれたらしい。そうか、冒険者にあまり人気はなかったが、職人にとってはこっちのローテーブルのほうが技術的に気になるのか。
「ああいった他の職人の仕事を見るのもいい刺激になるわい。他にも方位磁石とかいう便利な道具も売っているらしいのう。今度新しく店を開くと聞いておるし、ワシもお邪魔させてもらうとするわい」
「はい、ちょうど明日からオープンしますので、よろしくお願いします」
「この前テツヤのお店から買った折りたたみスプーンやフォークやローテーブルを見せたら、とても興味を持っていてくれていてな。ちょうどよい機会だから紹介しておこうと思ったのだ」
「なるほどね。グレゴさん、見た目は厳しそうな人だったけれど、そうでもなさそうだったね。こっちもいろいろな話を聞けて楽しかったよ」
あのあとグレゴさんはうちの店の商品の素晴らしさを、目を輝かせながら少年のように語っていた。俺もキャンプギアについてはいろいろと語れたから結構面白かったな。もっと本格的なテントとかが購入できるようになったら、グレゴさんに見せていろいろと意見を聞いてみてもいいかもしれない。
「フィアちゃんは少し退屈だったかもしれないな」
「そんなことないですよ。見てるだけでも面白かったです」
そのあとはリリアの剣の手入れをしているところを見せてもらった。リリアの剣は特殊な素材を使っているらしく、この街ではグレゴさんの工房を含めた数軒の鍛冶屋くらいしか手入れをできる場所がないらしい。
この街は駆け出し冒険者が多い街であると同時に、職人達にとっても腕を磨く街となっている。駆け出し冒険者が多く、それほど高い武器や防具は売れないため、ある程度腕を磨いた職人達は他の街へ行くことが多いらしい。
そんな中で、昔からずっとこの街で鍛冶をしているグレゴさんのような職人はとても貴重なようだ。
「そろそろお腹が空いてきたな。少し先に私の行きつけのお店があるんだ。そこで昼食をとらないか? もちろん私がご馳走するぞ」
「リリアの行きつけのお店か。それは楽しみだね、もちろんいいよ。でもご馳走は俺がするよ。明日からはいよいよお店をオープンしてしばらくは忙しくなるからね、2人にも頑張ってもらわないと」
「いや、ここは私が出すぞ。いつもテツヤにはご馳走になっているしな」
「いやいや、さすがにリリアにご馳走になるわけにはいかないよ」
確かにリリアのほうが俺よりも強いし、俺よりもお金を持っているだろうけれど、俺にもなけなしのプライドはある。あまり女性にご馳走してもらうというのは
「いやいやいや、そんなに毎回テツヤばかりにご馳走になるわけにはいかないぞ。ここは私に出させてくれ」
「はわわわ……」
……やっぱりリリアは譲らないところは譲ってくれないな。フィアちゃんも困っている。
「……わかったよ。それじゃあお昼はリリアにご馳走になろう。その代わりに夜は俺が2人にご馳走するよ」
「わかった、それでいこう」
「うん、さすがリリアの行きつけのお店だけあって美味しかったね」
「はいです、美味しかったです! リリアお姉ちゃん、ご馳走さまです!」
「………………」
リリアの行きつけのお店はいろんな食材を使っていろんな料理を出してくれた。ドールド肉やバズ肉など、まだこの世界では見たこともない食材を使っていた。その分お値段のほうも結構お高かったけどな。
「あれ、どうしたのリリア?」
「……いや、確かに美味しかったのだが、いつもと比べると少しな。やはり最近はテツヤの料理に慣れてしまって、少し舌が肥えてしまったのかもしれないな」
……確かにあのお店の塩やコショウよりもアウトドアスパイスのほうが美味しかったかもしれない。
「でも初めて食べる食材もたくさんあったし、タレの味付けはとても美味しかったし、とても勉強になったよ。リリア、ご馳走さま!」
「そうだな、2人が満足してくれたのならなによりだ。それじゃあ次は冒険者がよく使う道具屋へ行ってみよう」
しばらく待つと、工房の奥の方から小柄なドワーフの男が現れた。ずんぐりとした体型で、白くて立派なヒゲを生やしている。
「グレゴ殿、ご無沙汰しているな」
「ついに冒険者を引退したと聞いたぞ。まだリリアに頼みたかった素材もあったんじゃがな。……それにしても今日はどういった組み合わせなんじゃ?」
確かにこの人の言う通り、戦闘能力が皆無な俺やまだ幼いフィアちゃんが、リリアと一緒に鍛冶屋にいることはおかしなことでもある。
「ああ、つい先日に冒険者を引退したんだ。そして、ここにいるテツヤが始めた冒険者のためのお店に雇われることになったので、グレゴ殿にも挨拶をしておきたくてな」
「ほう、Bランク冒険者だったお主がのう。……もしかして、あのローテーブルを売っていた例の店か?」
「ああ、そうだぞ」
ローテーブル? 有名になった方位磁石のほうじゃなくてか?
「おお、お主が例の店の店主か! リリアから話を聞いて一度話をしたいと思っていたんじゃ!」
「初めまして、テツヤと申します。この街でアウトドアショップという駆け出し冒険者のためのお店を開きました。どうぞ、よろしくお願いします」
「グレゴじゃ。この工房の責任者をやっておる。お主の店で売っていたあのローテーブルというものを見せてもらったぞ。ありゃあ実に良い仕事をしておるし、とても面白い仕組みじゃったわい!」
「……あっ、はい。俺が作ったわけではないですが、お褒めいただいて恐縮です」
……どうやらグレゴさんは方位磁石よりもローテーブルに興味を持ってくれたらしい。そうか、冒険者にあまり人気はなかったが、職人にとってはこっちのローテーブルのほうが技術的に気になるのか。
「ああいった他の職人の仕事を見るのもいい刺激になるわい。他にも方位磁石とかいう便利な道具も売っているらしいのう。今度新しく店を開くと聞いておるし、ワシもお邪魔させてもらうとするわい」
「はい、ちょうど明日からオープンしますので、よろしくお願いします」
「この前テツヤのお店から買った折りたたみスプーンやフォークやローテーブルを見せたら、とても興味を持っていてくれていてな。ちょうどよい機会だから紹介しておこうと思ったのだ」
「なるほどね。グレゴさん、見た目は厳しそうな人だったけれど、そうでもなさそうだったね。こっちもいろいろな話を聞けて楽しかったよ」
あのあとグレゴさんはうちの店の商品の素晴らしさを、目を輝かせながら少年のように語っていた。俺もキャンプギアについてはいろいろと語れたから結構面白かったな。もっと本格的なテントとかが購入できるようになったら、グレゴさんに見せていろいろと意見を聞いてみてもいいかもしれない。
「フィアちゃんは少し退屈だったかもしれないな」
「そんなことないですよ。見てるだけでも面白かったです」
そのあとはリリアの剣の手入れをしているところを見せてもらった。リリアの剣は特殊な素材を使っているらしく、この街ではグレゴさんの工房を含めた数軒の鍛冶屋くらいしか手入れをできる場所がないらしい。
この街は駆け出し冒険者が多い街であると同時に、職人達にとっても腕を磨く街となっている。駆け出し冒険者が多く、それほど高い武器や防具は売れないため、ある程度腕を磨いた職人達は他の街へ行くことが多いらしい。
そんな中で、昔からずっとこの街で鍛冶をしているグレゴさんのような職人はとても貴重なようだ。
「そろそろお腹が空いてきたな。少し先に私の行きつけのお店があるんだ。そこで昼食をとらないか? もちろん私がご馳走するぞ」
「リリアの行きつけのお店か。それは楽しみだね、もちろんいいよ。でもご馳走は俺がするよ。明日からはいよいよお店をオープンしてしばらくは忙しくなるからね、2人にも頑張ってもらわないと」
「いや、ここは私が出すぞ。いつもテツヤにはご馳走になっているしな」
「いやいや、さすがにリリアにご馳走になるわけにはいかないよ」
確かにリリアのほうが俺よりも強いし、俺よりもお金を持っているだろうけれど、俺にもなけなしのプライドはある。あまり女性にご馳走してもらうというのは
「いやいやいや、そんなに毎回テツヤばかりにご馳走になるわけにはいかないぞ。ここは私に出させてくれ」
「はわわわ……」
……やっぱりリリアは譲らないところは譲ってくれないな。フィアちゃんも困っている。
「……わかったよ。それじゃあお昼はリリアにご馳走になろう。その代わりに夜は俺が2人にご馳走するよ」
「わかった、それでいこう」
「うん、さすがリリアの行きつけのお店だけあって美味しかったね」
「はいです、美味しかったです! リリアお姉ちゃん、ご馳走さまです!」
「………………」
リリアの行きつけのお店はいろんな食材を使っていろんな料理を出してくれた。ドールド肉やバズ肉など、まだこの世界では見たこともない食材を使っていた。その分お値段のほうも結構お高かったけどな。
「あれ、どうしたのリリア?」
「……いや、確かに美味しかったのだが、いつもと比べると少しな。やはり最近はテツヤの料理に慣れてしまって、少し舌が肥えてしまったのかもしれないな」
……確かにあのお店の塩やコショウよりもアウトドアスパイスのほうが美味しかったかもしれない。
「でも初めて食べる食材もたくさんあったし、タレの味付けはとても美味しかったし、とても勉強になったよ。リリア、ご馳走さま!」
「そうだな、2人が満足してくれたのならなによりだ。それじゃあ次は冒険者がよく使う道具屋へ行ってみよう」