「ひとつ目の依頼なのですが、ちょうど今日から借りていた屋台のお店を閉めて、別の場所で店舗を借りてお店を大きくしようと考えております。そのために、新しく従業員を雇おうと考えているのですが、接客だけでなく護衛もできる従業員を探したいと考えています」
「……なるほど。本来ならば護衛をつけるような商店は大きなお店が多いのですが、確かにテツヤさんのお店は他では売っていない商品を置いているので、護衛はあったほうがいいでしょうね」
「はい、冒険者ギルドではそういった人材の派遣なども行なっていると聞いております。長期で勤めることができて、ある程度腕も信用もある冒険者を紹介してほしいです」
この世界の冒険者ギルドでは、人材派遣の依頼なども受け付けている。それこそ1日限りのドブさらいに家事や掃除の代行から、1週間程度の怪我をした従業員の代行依頼など様々なものがある。
普通の従業員の募集なら商業ギルドのほうでも行っているのだが、護衛が可能な従業員を雇うなら冒険者ギルドの管轄になるらしい。
「……なるほどな。長期で務められて、護衛ができる腕があって、信用もできるやつか……そういえばテツヤはリリアと知り合いだったんだよな。例えばなんだが、その従業員がリリアみたいなやつだったらどうだ?」
「ええ。リリアみたいな人だったら最高ですね!」
「……っ!?」
「とても強い冒険者で、真面目で優しいですし、なにより美人ですからね! もうひとりの従業員と一緒に最高の看板娘になってくれますよ。そうか、もし可能なら女性の護衛のほうがありがたいかもしれませんね」
まあさすがにそれは高望みがすぎるというものだろう。ただでさえこの始まりの街には、護衛依頼を受けられるCランク以上の冒険者は少ないと聞いている。その上でリリアみたいな綺麗な女性冒険者がそう何人もいるとは考え難い。
「……だそうだが、どうするリリア?」
「……最高で美人らしいですね、リリアさん?」
……んん? なぜかライザックさんとパトリスさんがニヤニヤしながらリリアのほうを見ている。いやいや、さすがにそれはないよな。だってリリアは現役のBランク冒険者なんだし。
「……コホンッ。テツヤ、もし可能ならでいいんだが、私をテツヤの店で雇ってくれないだろうか?」
「はっ!? いやマジで!? ものすごく嬉しいんだけど、Bランク冒険者のリリアが普通のお店で働くなんて本当にいいの?」
いかんいかん、とりあえず落ち着け! いきなりの好展開に若干パニックになっている自分がいる。もしかしたら、このあと依頼料は1日金貨10枚な? とかいうとんでもない展開が待っているかもしれない! ……いや、さすがにそんなことはないと思うけれど。
「ああ。実を言うとな、ちょうど先日私は冒険者を引退したんだ。もちろんボランティアなどで冒険者ギルドを支援しようと思ってはいるが、基本的に私はもう冒険者の依頼は受けないんだ」
そういえばリリアに最初に出会った時に、左腕を魔物にやられてもうすぐ引退予定だと言っていた。
「引退か……でもせっかくBランク冒険者になったのに、なんだか勿体ないな……」
「なあに、冒険者の肩書きがなくなったところで、たいして生活は変わらないさ。Bランク以上の冒険者となると、席に限りがあるからな。後ろで頑張っている後輩達に席を譲ることも、先輩の務めなんだ。
ちょうど新しい仕事を探そうと思っていたところだ。テツヤの店みたいに、駆け出し冒険者を応援できる店で雇ってもらえるなら、とてもありがたい。片腕で迷惑をかけることが多々あるかもしれないが、どうか頼む」
相変わらずリリアは真面目だな。後ろのことなんか気にせずにそのままBランク冒険者を続けて、うまみがありそうな依頼だけを受けるなんてこともできそうなのに。
……だけどそんなリリアだからこそ信用ができる。別に片腕だってあれだけの力があれば、普通の人以上の働きができるに違いない。なによりリリアの力はこの目で見ている。護衛として頼りになることこの上ない。
「むしろこちらからお願いするよ。リリアが力を貸してくれるならとても助かるし嬉しい。……できる限り給金も出せるように頑張るから手を貸してほしい!」
「ああ、お金はそこそこ持ってはいるからな。給金などはそれほど気にしないでも大丈夫だぞ。ではテツヤ、今後ともよろしく頼む!」
「ああ、こちらこそよろしく頼むよ!」
リリアが差し出してきた右手を握り返して握手をする。これまで剣を振っていたためか、それほどリリアの手は柔らかくはなかったが、女性の手のひらだ。少しドキドキしてきた。
「……取り込み中のところを悪いが、無事に話はまとまったようだな。イチャイチャするのは、あとでふたりでやってくれねえか?」
「はあ……ギルドマスター、ここは気を利かせてしばらくは2人の世界にさせておいてあげないと……」
「べ、別にイチャイチャなどしてはいないぞ!」
顔を赤くしながら否定するリリア。……握手をしただけなんだからそこまで過剰に反応しなくてもいいのに。ライザックさんもパトリスさんも、たぶんからかっているだけなんだろうな。
「……なるほど。本来ならば護衛をつけるような商店は大きなお店が多いのですが、確かにテツヤさんのお店は他では売っていない商品を置いているので、護衛はあったほうがいいでしょうね」
「はい、冒険者ギルドではそういった人材の派遣なども行なっていると聞いております。長期で勤めることができて、ある程度腕も信用もある冒険者を紹介してほしいです」
この世界の冒険者ギルドでは、人材派遣の依頼なども受け付けている。それこそ1日限りのドブさらいに家事や掃除の代行から、1週間程度の怪我をした従業員の代行依頼など様々なものがある。
普通の従業員の募集なら商業ギルドのほうでも行っているのだが、護衛が可能な従業員を雇うなら冒険者ギルドの管轄になるらしい。
「……なるほどな。長期で務められて、護衛ができる腕があって、信用もできるやつか……そういえばテツヤはリリアと知り合いだったんだよな。例えばなんだが、その従業員がリリアみたいなやつだったらどうだ?」
「ええ。リリアみたいな人だったら最高ですね!」
「……っ!?」
「とても強い冒険者で、真面目で優しいですし、なにより美人ですからね! もうひとりの従業員と一緒に最高の看板娘になってくれますよ。そうか、もし可能なら女性の護衛のほうがありがたいかもしれませんね」
まあさすがにそれは高望みがすぎるというものだろう。ただでさえこの始まりの街には、護衛依頼を受けられるCランク以上の冒険者は少ないと聞いている。その上でリリアみたいな綺麗な女性冒険者がそう何人もいるとは考え難い。
「……だそうだが、どうするリリア?」
「……最高で美人らしいですね、リリアさん?」
……んん? なぜかライザックさんとパトリスさんがニヤニヤしながらリリアのほうを見ている。いやいや、さすがにそれはないよな。だってリリアは現役のBランク冒険者なんだし。
「……コホンッ。テツヤ、もし可能ならでいいんだが、私をテツヤの店で雇ってくれないだろうか?」
「はっ!? いやマジで!? ものすごく嬉しいんだけど、Bランク冒険者のリリアが普通のお店で働くなんて本当にいいの?」
いかんいかん、とりあえず落ち着け! いきなりの好展開に若干パニックになっている自分がいる。もしかしたら、このあと依頼料は1日金貨10枚な? とかいうとんでもない展開が待っているかもしれない! ……いや、さすがにそんなことはないと思うけれど。
「ああ。実を言うとな、ちょうど先日私は冒険者を引退したんだ。もちろんボランティアなどで冒険者ギルドを支援しようと思ってはいるが、基本的に私はもう冒険者の依頼は受けないんだ」
そういえばリリアに最初に出会った時に、左腕を魔物にやられてもうすぐ引退予定だと言っていた。
「引退か……でもせっかくBランク冒険者になったのに、なんだか勿体ないな……」
「なあに、冒険者の肩書きがなくなったところで、たいして生活は変わらないさ。Bランク以上の冒険者となると、席に限りがあるからな。後ろで頑張っている後輩達に席を譲ることも、先輩の務めなんだ。
ちょうど新しい仕事を探そうと思っていたところだ。テツヤの店みたいに、駆け出し冒険者を応援できる店で雇ってもらえるなら、とてもありがたい。片腕で迷惑をかけることが多々あるかもしれないが、どうか頼む」
相変わらずリリアは真面目だな。後ろのことなんか気にせずにそのままBランク冒険者を続けて、うまみがありそうな依頼だけを受けるなんてこともできそうなのに。
……だけどそんなリリアだからこそ信用ができる。別に片腕だってあれだけの力があれば、普通の人以上の働きができるに違いない。なによりリリアの力はこの目で見ている。護衛として頼りになることこの上ない。
「むしろこちらからお願いするよ。リリアが力を貸してくれるならとても助かるし嬉しい。……できる限り給金も出せるように頑張るから手を貸してほしい!」
「ああ、お金はそこそこ持ってはいるからな。給金などはそれほど気にしないでも大丈夫だぞ。ではテツヤ、今後ともよろしく頼む!」
「ああ、こちらこそよろしく頼むよ!」
リリアが差し出してきた右手を握り返して握手をする。これまで剣を振っていたためか、それほどリリアの手は柔らかくはなかったが、女性の手のひらだ。少しドキドキしてきた。
「……取り込み中のところを悪いが、無事に話はまとまったようだな。イチャイチャするのは、あとでふたりでやってくれねえか?」
「はあ……ギルドマスター、ここは気を利かせてしばらくは2人の世界にさせておいてあげないと……」
「べ、別にイチャイチャなどしてはいないぞ!」
顔を赤くしながら否定するリリア。……握手をしただけなんだからそこまで過剰に反応しなくてもいいのに。ライザックさんもパトリスさんも、たぶんからかっているだけなんだろうな。