「目つきが悪いは余計だろ!」
「はあ……落ち着いてください、ギルドマスター。ただでさえ怖い顔がもっと怖くなります」
「……お前なあ」
「このアレフレアの街にある冒険者ギルドで副ギルドマスターをしておりますパトリスと申します」
「……はい。テツヤと申します」
どうやらこの凶悪な顔をした大柄な男は、この街の冒険者ギルドマスターだったらしい。……いや、さっきの言動といい、この人には悪いけれど、どう見てもそうは見えないぞ!?
「テツヤさん達を驚かせてしまって、本当に申し訳ありません。実はこの度、テツヤさんの店で扱っている方位磁石を当冒険者ギルドでも販売させていただけないかご検討願えないでしょうか?」
「えっ!?」
ウチで販売するって冒険者ギルドで!? 商店とかではなく、冒険者ギルドにアウトドアショップの商品を置かせてもらえるのなら、話は全然違ってくるぞ!
「とりあえずここでは人目につきますので、一度冒険者ギルドまで場所を移させてもらえないでしょうか?」
場所を移すって冒険者ギルドにかよ! こんな凶悪そうな顔をした男に場所を移すとか言われたら、ヤーさんの事務所とかに連れて行かれるイメージしかないだろ!
「テツヤ、時間は大丈夫か? 別に明日でも構わないのだぞ」
「いえ、今日はもうそろそろ店を閉めようと思っていたので大丈夫ですよ。冒険者ギルドですね、わかりました。店の片付けをするので、少しだけ待っていてもらえますか?」
「おい、おまえさっき俺の話を断っていたじゃねえか!」
「ギルドマスターみたいな怖い顔の男に普通の人がついていくわけないに決まっているでしょう! ええ、もちろんですよ、こちらでお待ちしております」
……うん、申し訳ないけれどまさにその通りだ。さすがにこんなヤバそうな男についてこいと言われて、簡単についていけるわけがない。
「なんだよ、話をするなら早くしたほうがいいと言ったのはパトリスのほうだろ?」
「それはそうですが、もう少し自分の顔の怖さを自覚してください。せめてテツヤさんと知り合いのリリアさんと合流してからでもよかったでしょう!」
「お前にはもう少し俺への口の悪さを自覚してほしいんだが……」
……見た目に似合わずパトリスさんは毒舌だな。とはいえこのギルドマスターにも同情はできない。
残っていた商品をリュックに詰めて、この街に来てからしばらくお世話になっていた屋台の仮のお店を片付けていく。
「それじゃあフィアちゃん、お店の準備が必要になったらまた連絡するからね」
「うん! ……テツヤお兄ちゃん、さっきはとっても怖かったの。フィアをかばおうと前に出てくれて、とっても格好よかったよ!」
「……俺は足が震えて何もできなかっただけだよ」
「それでも格好よかったよ! お店の準備ができたらすぐに呼んでね!」
「うん、その時はまたよろしくね」
……まったく、フィアちゃんに気を遣われるなんて男として情けない限りだ。
店の片付けを終えて、フィアちゃんと別れてから4人で冒険者ギルドへ向かった。冒険者の始まりの街というだけあって、相変わらずとても大きな建物である。そしてその冒険者ギルドのトップに立つ男は、ここにいる凶悪な顔をした大男なんだよなあ……
「では改めて、冒険者ギルドマスターのライザックだ」
とても立派なギルドマスターの部屋へと案内された。部屋の中には見たこともない魔物の剥製や、見ただけで高価なものとわかる剣や鎧なども飾られていた。
「……テツヤです、よろしくお願いします」
ライザックさんから差し出された右手を恐る恐る握る。この人が本気で握手をしたら右手が握り潰されそうで、少し……いや、かなり怖い。
「おう、よろしくな!」
意外なことに、握手はあまり強い力ではなかった。見た目や言葉遣いはアレだが、それほど脳筋な人ではないのかな?
「さて、テツヤが販売しているこの方位磁石という道具は実に素晴らしい道具だ。実際にうちの職員が試しに森で使ってみたが、この方位磁石があればあの森で迷っても、森から脱出できるだろうという報告があった」
「はい、ありがとうございます」
「この方位磁石があれば、今後森で行方不明になる冒険者の数が大幅に減ることは間違いないだろう。我が冒険者ギルドとしても、この方位磁石はすべての冒険者達に持たせておきたい。そういうわけでこいつをウチでも販売させてほしいんだよ」
そういうことか。なんだよ、最初にそう言ってくれれば、俺も……いや、本当に申し訳ないんだが、その場合はこの人が本物の冒険者ギルドマスターかどうかを疑っていた気がする。
「職員からの報告もあったが、リリアからもこの方位磁石やあんたのことを聞いている。なんでもこの街の駆け出し冒険者に助けられたから、その恩を返すために駆け出し冒険者達の役に立つもんを安く売っているんだってな」
「そうですか……リリアが」
リリアのほうを見ると、リリアは気恥ずかしそうに目を逸らした。知らない間に冒険者ギルドマスター達に方位磁石を紹介してくれたらしい。本当にリリアにはお世話になりっぱなしだな。
「はい、森での行方不明者を減らすためにも、可能な限り駆け出し冒険者達に広めていきたいですからね。条件などにもよりますが、冒険者ギルドでも販売してくれるとありがたいです」
「はあ……落ち着いてください、ギルドマスター。ただでさえ怖い顔がもっと怖くなります」
「……お前なあ」
「このアレフレアの街にある冒険者ギルドで副ギルドマスターをしておりますパトリスと申します」
「……はい。テツヤと申します」
どうやらこの凶悪な顔をした大柄な男は、この街の冒険者ギルドマスターだったらしい。……いや、さっきの言動といい、この人には悪いけれど、どう見てもそうは見えないぞ!?
「テツヤさん達を驚かせてしまって、本当に申し訳ありません。実はこの度、テツヤさんの店で扱っている方位磁石を当冒険者ギルドでも販売させていただけないかご検討願えないでしょうか?」
「えっ!?」
ウチで販売するって冒険者ギルドで!? 商店とかではなく、冒険者ギルドにアウトドアショップの商品を置かせてもらえるのなら、話は全然違ってくるぞ!
「とりあえずここでは人目につきますので、一度冒険者ギルドまで場所を移させてもらえないでしょうか?」
場所を移すって冒険者ギルドにかよ! こんな凶悪そうな顔をした男に場所を移すとか言われたら、ヤーさんの事務所とかに連れて行かれるイメージしかないだろ!
「テツヤ、時間は大丈夫か? 別に明日でも構わないのだぞ」
「いえ、今日はもうそろそろ店を閉めようと思っていたので大丈夫ですよ。冒険者ギルドですね、わかりました。店の片付けをするので、少しだけ待っていてもらえますか?」
「おい、おまえさっき俺の話を断っていたじゃねえか!」
「ギルドマスターみたいな怖い顔の男に普通の人がついていくわけないに決まっているでしょう! ええ、もちろんですよ、こちらでお待ちしております」
……うん、申し訳ないけれどまさにその通りだ。さすがにこんなヤバそうな男についてこいと言われて、簡単についていけるわけがない。
「なんだよ、話をするなら早くしたほうがいいと言ったのはパトリスのほうだろ?」
「それはそうですが、もう少し自分の顔の怖さを自覚してください。せめてテツヤさんと知り合いのリリアさんと合流してからでもよかったでしょう!」
「お前にはもう少し俺への口の悪さを自覚してほしいんだが……」
……見た目に似合わずパトリスさんは毒舌だな。とはいえこのギルドマスターにも同情はできない。
残っていた商品をリュックに詰めて、この街に来てからしばらくお世話になっていた屋台の仮のお店を片付けていく。
「それじゃあフィアちゃん、お店の準備が必要になったらまた連絡するからね」
「うん! ……テツヤお兄ちゃん、さっきはとっても怖かったの。フィアをかばおうと前に出てくれて、とっても格好よかったよ!」
「……俺は足が震えて何もできなかっただけだよ」
「それでも格好よかったよ! お店の準備ができたらすぐに呼んでね!」
「うん、その時はまたよろしくね」
……まったく、フィアちゃんに気を遣われるなんて男として情けない限りだ。
店の片付けを終えて、フィアちゃんと別れてから4人で冒険者ギルドへ向かった。冒険者の始まりの街というだけあって、相変わらずとても大きな建物である。そしてその冒険者ギルドのトップに立つ男は、ここにいる凶悪な顔をした大男なんだよなあ……
「では改めて、冒険者ギルドマスターのライザックだ」
とても立派なギルドマスターの部屋へと案内された。部屋の中には見たこともない魔物の剥製や、見ただけで高価なものとわかる剣や鎧なども飾られていた。
「……テツヤです、よろしくお願いします」
ライザックさんから差し出された右手を恐る恐る握る。この人が本気で握手をしたら右手が握り潰されそうで、少し……いや、かなり怖い。
「おう、よろしくな!」
意外なことに、握手はあまり強い力ではなかった。見た目や言葉遣いはアレだが、それほど脳筋な人ではないのかな?
「さて、テツヤが販売しているこの方位磁石という道具は実に素晴らしい道具だ。実際にうちの職員が試しに森で使ってみたが、この方位磁石があればあの森で迷っても、森から脱出できるだろうという報告があった」
「はい、ありがとうございます」
「この方位磁石があれば、今後森で行方不明になる冒険者の数が大幅に減ることは間違いないだろう。我が冒険者ギルドとしても、この方位磁石はすべての冒険者達に持たせておきたい。そういうわけでこいつをウチでも販売させてほしいんだよ」
そういうことか。なんだよ、最初にそう言ってくれれば、俺も……いや、本当に申し訳ないんだが、その場合はこの人が本物の冒険者ギルドマスターかどうかを疑っていた気がする。
「職員からの報告もあったが、リリアからもこの方位磁石やあんたのことを聞いている。なんでもこの街の駆け出し冒険者に助けられたから、その恩を返すために駆け出し冒険者達の役に立つもんを安く売っているんだってな」
「そうですか……リリアが」
リリアのほうを見ると、リリアは気恥ずかしそうに目を逸らした。知らない間に冒険者ギルドマスター達に方位磁石を紹介してくれたらしい。本当にリリアにはお世話になりっぱなしだな。
「はい、森での行方不明者を減らすためにも、可能な限り駆け出し冒険者達に広めていきたいですからね。条件などにもよりますが、冒険者ギルドでも販売してくれるとありがたいです」