「さあ、続いての商品はこちら!」

 浄水器の販売は一旦後回しにしておいて、次の商品の説明を始める。浄水器の説明については、先ほどの説明を聞いていなかった人が来るので、説明の書いた紙を屋台に貼っておく。

 そして次の商品をフィアちゃんがお客さんに見せる。

「タオル?」

「……ただのタオルだよな?」

「実はこのタオル、みなさんが思っているようなただのタオルではありません! なんとこのクールタオル、水に濡らすだけでヒンヤリと感じる不思議なタオルでございま〜す」

「「「おお〜!」」」

「使い方は実に簡単。水に濡らして軽く絞ったり振るだけ! それだけなのにこんなに冷たく感じる魔法のタオルでございます!」

 クールタオル、またの名を冷感タオルというこのタオル、冷感機能素材を使用して作られており、水に濡らして軽く絞るだけで長時間ヒンヤリとした冷たさを感じることができる。

 詳しい仕組みはよく覚えていないけれど、確か気化熱を利用して温度を下げているんだったかな。冒険者は日中に長時間活動しているから、このクールタオルを首周りに巻けば、熱中症の予防にもなる優れものだ。

「まずは普通に触ってみてください。そのままでも手触りの良いタオルであるとわかるでしょう? そしてここからが本番ですよ。このタオルに水をかけてこんなふうに軽く絞ってみます。するとあら不思議、たったそれだけのことで手触りが冷たくなってしまいました! ぜひみなさんもお試しください」

 まずはお客さんにクールタオルの手触りを確認してもらう。そしてフィアちゃんと俺で水に濡らして、冷たく感じられるようになったクールタオルをお客さんに確認してもらっていく。

「おお、すごい! 確かに冷たく感じる!」

「へえ〜なにこれ、面白いじゃない!」

「確かにこれがあれば汗だくになって、森の中を探している時に、ちったあマシになりそうだな!」

 どうやらクールタオルの反応もなかなか好感触のようだ。

 この街の市場にもタオルは売っていた。中古のものだと銅貨5〜8枚ほどで安いことは安いのだが、品質はそれほど良いものではなかった。このクールタオルはアウトドアショップで銀貨1枚にて購入できるので、銀貨2枚で販売する。

 他のお店と差別化して、少し高級なタオルとして売っていこうと思っている。タオルにしては値段が高いかもしれないが、熱中症の予防にもなるし、肌触りはとても良いからな。色は派手なものもあったが、あまり染色が目立たない灰色を選択してある。



「さて、最後の商品はこちら!」

 浄水器と同様に販売は一旦後回しにしておいて、最後の商品の説明に移る。クールタオルについては、実際の触り心地や冷たさが気になるなら店員に声をかけてくれと、説明を書いた紙を屋台に貼っておいた。

「一見するとただの金属製の板が重ねてあるだけの物に見えてしまうかもしれません。ところがこいつは組み立てることによって、小さなテーブルとなる折りたたみテーブルでございま〜す!」

「「「おお〜!」」」

 俺が取り出したのは金属の5枚の板が重なっていてコンパクトにまとめられたもの。しかし、それを組み立て脚を出せば、あっという間に金属の板はローテーブルへと変形した。

 このローテーブルは高さが15cm、縦横が30〜40cmの小さめのテーブルだ。小さくて軽い金属でできているので、持ち運びがとても便利である。俺もキャンプをする際には2つ常備していたくらいだ。バーナーを置いてローテーブルの上で料理したり、できた料理の皿を置いたり、小物や本を置けたりして、多様なことに使えるところもポイントが高い。

「お兄さん、ちょっと触ってみてもいいですか?」

「ええ、もちろん。あまり無理に力を入れ過ぎてしまうと壊れてしまうので気を付けてくださいね」

「はい、気を付けます。……なるほど、裏からこんな感じで板を固定しているんですね。なかなか面白い作りをしています。それに思ったよりも重くないから持ち運びには便利そうだ」

 ローテーブルが初見の割にテキパキと変形していく青年。見た目は中学生か高校生くらいか。防具を身につけているからたぶん冒険者だろう。

 しかしこの人の手先はだいぶ器用だな。俺が最初にローテーブルの組み立てをした時は、地味に時間がかかってしまったからな。組み立ては簡単なのだが、パーツが小さめなので手の大きい人には使い難いかもしれない。

「へえ、なかなか便利そうだな」

「それに小さいけれど金属製のテーブルなんてオシャレね!」

 このローテーブルはアウトドアショップで銀貨3枚で購入できるので、銀貨5枚での販売になる。少し高いかもしれないが、そもそもこの街の市場では金属製の製品自体が高めなので、少しお金に余裕のある冒険者なら買ってくれるかなと予想している。

「以上が新商品の説明でした。もちろん今まで販売していた方位磁石やカラビナなども置いております。当アウトドアショップしか売っていない、駆け出し冒険者へ役立つ商品をぜひご利用くださいませ!」

「よ、よろしくお願いします!」

「よし、この浄水器とクールタオルをひとつずつくれ」

「私はこっちの浄水器をもらおうかしら」

「浄水器とクールタオルと折りたたみテーブルをひとつずつください」

 よしよし、掴みは上々といったところだろう。