「……ふう、ちょっとお客さんが落ち着いてきたね。少し休憩しようか」
「はいです!」
この店をオープンしてから3日目となった。基本的にはそれほど商品の種類がないので、毎日同じお客さんが来てくれるというわけではなく、このお店で商品を買ってくれたお客さんからの紹介である新規のお客さんが多い。
お客さんの列がなくなったら、初日のように声を出して実際にどう使うかを見せながら実演販売をしていく。今はちょうどいいところで休憩を取っている。
「ふう、フィアちゃんも商品の値段も覚えたし、説明もできるようになったし、もう大丈夫そうだね」
「テツヤお兄ちゃんの売っている商品は、見たことない物ばっかりだからすぐに覚えられるよ!」
フィアちゃんは商品数が少ないとはいえ、もう全部の商品の値段や使い方について覚えてくれていた。俺がお客さんに商品の説明をしていても、ひとりで対応することができるようになっていた。お釣りの計算も間違えていないし、とても賢い子みたいだ。
「そういえばこの街で受けた勉強会って、どんなことを教えてもらえるの?」
「えっと、足し算と引き算、それに掛け算と割り算も教えてくれるの。あと今は文字を教えてもらっているところだよ」
へえ〜俺が思っていたよりも本格的な教育をしてくれているみたいだ。しかもそれが無料だなんてすごいな。確かに冒険者でも、計算や文字の読み書きができないと、買い物や依頼の受注なんかもまともにできない可能性がある。
「お母さんが働いている時に勉強会に出ていろいろと教えてもらったの。他にも冒険者さんにも無料で参加できる勉強会もあるんだよ。武器の使い方とか、薬草とかの見分け方を教えてくれるって聞いたよ」
さすが冒険者始まりの街だ。駆け出し冒険者への配慮が半端ない。そりゃ、近くの村や街に住む冒険者志望の人達はこの街に集まるわけだ。
「いらっしゃいませ……ってリリア!」
「やあテツヤ、店の調子はどんな感じだい?」
休憩中にお客さんが来たと思ったらリリアだった。何かの依頼が終わったあとなのか、この前森に一緒に入った時と同じで、防具を身に付けた冒険者スタイルだ。
「おかげさまで結構なお客さんが来てくれているよ。これもリリアがいろんな冒険者に宣伝してくれたおかげだ」
「ふふ、私もテツヤの役に立てたならよかったよ」
実際のところ、リリアが紹介してくれたお客さんは結構いる。それにリリアの紹介で店まできてくれたお客さんが、さらに新しいお客さんを連れてきてくれるから、さらにお客さんは増えている。
「それとこの前のことだけど、別に俺も利益を全部捨てて駆け出し冒険者に尽くしているわけじゃ……」
「ああ、そのことか。もちろん分かっているぞ! そう言いながらテツヤはもっと高くても商品が売れることがわかっているのに、値上げはしていない。つまりはそういうことなのだろう」
「………………」
全然分かっていなかった。商売の世界では値段を下げることによって、店全体の売り上げが上がることもあるんだぞ。しかし、これ以上説明しても無駄な気がしてきた……
「そういえばその子は一昨日いなかったな。新しく雇った従業員か?」
「ああ、冒険者ギルドで人を雇おうとしたんだけれど、たまたまその前に知り合ってうちの店で働いてもらうことになったフィアちゃんだ。こちらは以前にとってもお世話になったBランク冒険者のリリアだよ」
「フィ、フィアです! よよ、よろしくお願いします!」
「フィアか。リリアだ、よろしくな」
「は、はい!」
リリアがしゃがみこんで、フィアちゃんと握手をする。
「ふむ、とっても可愛らしい子だね」
「ふえっ!? あ、ありがとうございます! リリアお姉ちゃんはとっても綺麗で格好いいです!」
「ふふ、そう言ってくれると私も嬉しいよ。とりあえずテツヤのお店が順調そうでなによりだよ」
「みんなのおかげかな。まだ3日目だけれど、今のところは順調そのものだよ」
「それはよかった。しかしテツヤなら大丈夫だとは思うが、何事も順調な時ほど、想定外のことが起こらないか注意が必要だぞ」
「ああ、リリアの言う通りだ。改めて気を引き締めるよ」
そうだな。リリアの言う通り、順調といってもまだたった3日目だ。今のところトラブルはないが、何かひとつの出来事で今までの苦労が水の泡になることだってある。今一度気を引き締めるとしよう。
「さすがだな。何かあれば力になるから遠慮なく声をかけてくれ。それじゃあ長居しても邪魔になるからそろそろ行くとしよう」
「ああ、その時はよろしく頼むよ」
リリアは手を振りながら店を後にした。去り際も爽やかでとても格好良かったな。やっぱりこの前の私服の時とは印象が全然違う。
「ふわあ……とっても格好いいお姉さんでした!」
「うん、駆け出し冒険者にも、とっても優しくて本当に良い人だよ。たまに顔を出してくれると思うから、フィアちゃんも仲良くしてほしいな」
「はい! それにBランク冒険者さんはとっても強い人だってお母さんから聞いています。憧れちゃいます!」
やっぱり同性から見てもリリアは格好よく見えるらしい。たまに顔を見せてくれると言っていたし、仲良くしてくれるといいな。
「よし、今日のお店の営業はここまでにしよう。フィアちゃん、今日もお疲れさま」
「はいです!」
3日目の営業も無事に終了した。今日も昨日と同じくらいのお客さんが来てくれたようだ。
「はい、今日の分の給料だよ。明日もよろしくね」
昨日と同様に金貨1枚をフィアちゃんに渡す。
「……今日もこんなに。テツヤお兄ちゃん、本当にありがとう! 明日もよろしくお願いです!」
「むしろ俺のほうが助かっているから、お礼はいらないよ。俺のほうこそありがとうね、フィアちゃん」
今日の売り上げも上々だ。多分明日にはアウトドアショップのレベルを3に上げることができそうだな。
「はいです!」
この店をオープンしてから3日目となった。基本的にはそれほど商品の種類がないので、毎日同じお客さんが来てくれるというわけではなく、このお店で商品を買ってくれたお客さんからの紹介である新規のお客さんが多い。
お客さんの列がなくなったら、初日のように声を出して実際にどう使うかを見せながら実演販売をしていく。今はちょうどいいところで休憩を取っている。
「ふう、フィアちゃんも商品の値段も覚えたし、説明もできるようになったし、もう大丈夫そうだね」
「テツヤお兄ちゃんの売っている商品は、見たことない物ばっかりだからすぐに覚えられるよ!」
フィアちゃんは商品数が少ないとはいえ、もう全部の商品の値段や使い方について覚えてくれていた。俺がお客さんに商品の説明をしていても、ひとりで対応することができるようになっていた。お釣りの計算も間違えていないし、とても賢い子みたいだ。
「そういえばこの街で受けた勉強会って、どんなことを教えてもらえるの?」
「えっと、足し算と引き算、それに掛け算と割り算も教えてくれるの。あと今は文字を教えてもらっているところだよ」
へえ〜俺が思っていたよりも本格的な教育をしてくれているみたいだ。しかもそれが無料だなんてすごいな。確かに冒険者でも、計算や文字の読み書きができないと、買い物や依頼の受注なんかもまともにできない可能性がある。
「お母さんが働いている時に勉強会に出ていろいろと教えてもらったの。他にも冒険者さんにも無料で参加できる勉強会もあるんだよ。武器の使い方とか、薬草とかの見分け方を教えてくれるって聞いたよ」
さすが冒険者始まりの街だ。駆け出し冒険者への配慮が半端ない。そりゃ、近くの村や街に住む冒険者志望の人達はこの街に集まるわけだ。
「いらっしゃいませ……ってリリア!」
「やあテツヤ、店の調子はどんな感じだい?」
休憩中にお客さんが来たと思ったらリリアだった。何かの依頼が終わったあとなのか、この前森に一緒に入った時と同じで、防具を身に付けた冒険者スタイルだ。
「おかげさまで結構なお客さんが来てくれているよ。これもリリアがいろんな冒険者に宣伝してくれたおかげだ」
「ふふ、私もテツヤの役に立てたならよかったよ」
実際のところ、リリアが紹介してくれたお客さんは結構いる。それにリリアの紹介で店まできてくれたお客さんが、さらに新しいお客さんを連れてきてくれるから、さらにお客さんは増えている。
「それとこの前のことだけど、別に俺も利益を全部捨てて駆け出し冒険者に尽くしているわけじゃ……」
「ああ、そのことか。もちろん分かっているぞ! そう言いながらテツヤはもっと高くても商品が売れることがわかっているのに、値上げはしていない。つまりはそういうことなのだろう」
「………………」
全然分かっていなかった。商売の世界では値段を下げることによって、店全体の売り上げが上がることもあるんだぞ。しかし、これ以上説明しても無駄な気がしてきた……
「そういえばその子は一昨日いなかったな。新しく雇った従業員か?」
「ああ、冒険者ギルドで人を雇おうとしたんだけれど、たまたまその前に知り合ってうちの店で働いてもらうことになったフィアちゃんだ。こちらは以前にとってもお世話になったBランク冒険者のリリアだよ」
「フィ、フィアです! よよ、よろしくお願いします!」
「フィアか。リリアだ、よろしくな」
「は、はい!」
リリアがしゃがみこんで、フィアちゃんと握手をする。
「ふむ、とっても可愛らしい子だね」
「ふえっ!? あ、ありがとうございます! リリアお姉ちゃんはとっても綺麗で格好いいです!」
「ふふ、そう言ってくれると私も嬉しいよ。とりあえずテツヤのお店が順調そうでなによりだよ」
「みんなのおかげかな。まだ3日目だけれど、今のところは順調そのものだよ」
「それはよかった。しかしテツヤなら大丈夫だとは思うが、何事も順調な時ほど、想定外のことが起こらないか注意が必要だぞ」
「ああ、リリアの言う通りだ。改めて気を引き締めるよ」
そうだな。リリアの言う通り、順調といってもまだたった3日目だ。今のところトラブルはないが、何かひとつの出来事で今までの苦労が水の泡になることだってある。今一度気を引き締めるとしよう。
「さすがだな。何かあれば力になるから遠慮なく声をかけてくれ。それじゃあ長居しても邪魔になるからそろそろ行くとしよう」
「ああ、その時はよろしく頼むよ」
リリアは手を振りながら店を後にした。去り際も爽やかでとても格好良かったな。やっぱりこの前の私服の時とは印象が全然違う。
「ふわあ……とっても格好いいお姉さんでした!」
「うん、駆け出し冒険者にも、とっても優しくて本当に良い人だよ。たまに顔を出してくれると思うから、フィアちゃんも仲良くしてほしいな」
「はい! それにBランク冒険者さんはとっても強い人だってお母さんから聞いています。憧れちゃいます!」
やっぱり同性から見てもリリアは格好よく見えるらしい。たまに顔を見せてくれると言っていたし、仲良くしてくれるといいな。
「よし、今日のお店の営業はここまでにしよう。フィアちゃん、今日もお疲れさま」
「はいです!」
3日目の営業も無事に終了した。今日も昨日と同じくらいのお客さんが来てくれたようだ。
「はい、今日の分の給料だよ。明日もよろしくね」
昨日と同様に金貨1枚をフィアちゃんに渡す。
「……今日もこんなに。テツヤお兄ちゃん、本当にありがとう! 明日もよろしくお願いです!」
「むしろ俺のほうが助かっているから、お礼はいらないよ。俺のほうこそありがとうね、フィアちゃん」
今日の売り上げも上々だ。多分明日にはアウトドアショップのレベルを3に上げることができそうだな。