「それでテツヤ、店はどんな調子なんだ?」
「オープンして2日目にしてはいい感じだよ。昨日よりもお客さんは来てくれているしな」
他の屋台を見ても、うちのアウトドアショップのお店よりお客さんが集まっているお店はそれほどないように思える。うちの店にしか売っていない物ばかりで、ライバル店がいないというのもその要因のひとつだろう。
「そりゃすごいな。普通のお店だったら最初のお客さんを集めるのに結構苦労するはずなのに」
「そこはまあ、悲しいことに前の仕事で培ったことが役に立ったんだよ……」
「うん?」
悲しいことに元の世界のブラック企業で鍛えられたセールストークが役に立ってしまった。……いや、いいことなんだけど、あのブラック企業に感謝する日が来るのは、なんだか悔しいことでもあるんだよな。
「あとはリリアの紹介で来てくれた冒険者さん達も結構多かったな」
今日は昨日以上にリリアの知り合いの冒険者達がお店に来てくれていた。もしかしたら昨日の午前中だけじゃなくて、俺と別れたあともこの店を宣伝をしてくれていたのかもしれない。
「さすがBランク冒険者のリリアさんだ。……でも悪いな、俺達も宣伝はしたんだけれど、まだこの街に知り合いがそれほどいないからなあ」
「いやいや、こうして気にかけてお店まで来てくれただけで嬉しいって! 忙しい中来てくれてありがとうな」
ロイヤ達だってまだこの街に来てからそれほど日が経っていないはずだ。冒険者の依頼の合間にこうして顔を出してくれて、商品を買ってくれるだけでもすごくありがたい。
「冒険者と商人という違いはあるが、同じ駆け出し同士だからな。お互いこの街で頑張っていこう」
「ああ、そうだな!」
同じ駆け出し仲間だし、ロイヤ達とはこのまま良い関係を続けていけるといいな。
「そういえば、冒険者ギルドで知ったんだけど、リリアさんは結構有名な冒険者らしいぞ。俺達が知らなかっただけで、まだあんなに若くて女性なのにBランクまで上り詰めた冒険者として、冒険者ギルドの受付の人や先輩はみんな知っていたんだ」
「へえ〜そうなんだ」
森へ入った時のあの大きなイノシシ型の魔物を片腕で受け止め、一撃で倒していた姿を思い出す。この世界の冒険者の基準が分からないけれど、確かにリリアは強かったもんな。
「王都の方で冒険者として活動していたらしいけれど、事故にあってからこの街に戻ってきたらしいんだ。それから駆け出し冒険者達の面倒をよく見てくれたり、依頼料が安くて割りに合わない依頼を進んで受けてくれるって受付嬢さんが言っていた。俺も将来はあの人みたいな立派な冒険者を目指すことに決めたんだ!」
「ああ、リリアさんが立派な冒険者であることはよくわかったよ。そんなリリアさんと依頼を共にできて、俺達はとても運が良かったようだ。俺もあの人に負けないような立派な冒険者になる!」
ロイヤもファルもリリアにだいぶ感銘を受けているようだ。そんな人に出会えたのはファルの言う通り、俺達はだいぶ運が良かったのだろう。
「俺もいろいろとお世話になったし、なんらかの形で恩を返せるといいな。そういえば王都ってこの街から遠いの?」
よく考えたら、俺はこの街のこと以外よく知らない。他の街についても少しくらいは知っておいたほうがいいかもしれない。
「王都はこの街から馬車で1週間以上はかかるぞ。それに物価がこことは比べ物にならないくらい高い。基本的に俺達冒険者はこの街で経験を積んでお金を稼いで、隣の街へ拠点を移す。そして同じようにその街で経験を積んでお金を稼いでを繰り返して王都を目指していくんだ」
なるほど、この国の冒険者達は、少しずつ強くなってお金を貯めてから、次の街を目指していくらしい。
「まあ俺達にはまだ先の話だけどな」
「そうだな、俺達はまだしばらくはこの街にいる。当分の間はよろしく頼むな」
「……ああ、こちらこそ!」
そう、俺はしばらく、もしかしたらずっとこの始まりの街でアウトドアショップを続けるつもりだ。しかし、ロイヤ達はこの街で一人前の冒険者になったら、拠点を別の街に移してしまう。まだまだ先であると分かっているが、少しだけ寂しい自分がいる。
「だいぶ、長居をしてしまったな。ロイヤ、あまり話していてはテツヤ達の邪魔になる。それに早くあいつをなんとかしよう……」
「ハァハァ……フィアちゃん、そのフサフサした尻尾をお姉ちゃんに触らせてくれないかな……」
「はうう……テツヤお兄ちゃん……」
「……そうだな、ニコレが憲兵に捕まる前に連れて行ってくれ」
ロイヤとファルと真面目な話をしている間に、ニコレは何をしようとしているんだよ……
「すまん……よっぽどフィアちゃんを気に入ったみたいだな。普段はここまで酷くないんだよ」
……おかしいな、普段はちょっと抜けているロイヤを冷静なニコレとファルが嗜めるみたいな関係だと思っていたのに。ニコレは若い割に落ち着いていて、面倒見の良い女の子だと思っていたんだが、考えを改めないといけないかもしれん。
「じゃあな、テツヤ。また顔を出すよ」
「新しい店頑張ってな。邪魔をした」
「ああ、今日は来てくれてありがとうな」
「フィアちゃん〜お姉ちゃんは絶対にまた会いに来るからね〜!」
「「………………」」
ニコレはロイヤとファルに両腕を引きずられて強制的に連行されていった。
「オープンして2日目にしてはいい感じだよ。昨日よりもお客さんは来てくれているしな」
他の屋台を見ても、うちのアウトドアショップのお店よりお客さんが集まっているお店はそれほどないように思える。うちの店にしか売っていない物ばかりで、ライバル店がいないというのもその要因のひとつだろう。
「そりゃすごいな。普通のお店だったら最初のお客さんを集めるのに結構苦労するはずなのに」
「そこはまあ、悲しいことに前の仕事で培ったことが役に立ったんだよ……」
「うん?」
悲しいことに元の世界のブラック企業で鍛えられたセールストークが役に立ってしまった。……いや、いいことなんだけど、あのブラック企業に感謝する日が来るのは、なんだか悔しいことでもあるんだよな。
「あとはリリアの紹介で来てくれた冒険者さん達も結構多かったな」
今日は昨日以上にリリアの知り合いの冒険者達がお店に来てくれていた。もしかしたら昨日の午前中だけじゃなくて、俺と別れたあともこの店を宣伝をしてくれていたのかもしれない。
「さすがBランク冒険者のリリアさんだ。……でも悪いな、俺達も宣伝はしたんだけれど、まだこの街に知り合いがそれほどいないからなあ」
「いやいや、こうして気にかけてお店まで来てくれただけで嬉しいって! 忙しい中来てくれてありがとうな」
ロイヤ達だってまだこの街に来てからそれほど日が経っていないはずだ。冒険者の依頼の合間にこうして顔を出してくれて、商品を買ってくれるだけでもすごくありがたい。
「冒険者と商人という違いはあるが、同じ駆け出し同士だからな。お互いこの街で頑張っていこう」
「ああ、そうだな!」
同じ駆け出し仲間だし、ロイヤ達とはこのまま良い関係を続けていけるといいな。
「そういえば、冒険者ギルドで知ったんだけど、リリアさんは結構有名な冒険者らしいぞ。俺達が知らなかっただけで、まだあんなに若くて女性なのにBランクまで上り詰めた冒険者として、冒険者ギルドの受付の人や先輩はみんな知っていたんだ」
「へえ〜そうなんだ」
森へ入った時のあの大きなイノシシ型の魔物を片腕で受け止め、一撃で倒していた姿を思い出す。この世界の冒険者の基準が分からないけれど、確かにリリアは強かったもんな。
「王都の方で冒険者として活動していたらしいけれど、事故にあってからこの街に戻ってきたらしいんだ。それから駆け出し冒険者達の面倒をよく見てくれたり、依頼料が安くて割りに合わない依頼を進んで受けてくれるって受付嬢さんが言っていた。俺も将来はあの人みたいな立派な冒険者を目指すことに決めたんだ!」
「ああ、リリアさんが立派な冒険者であることはよくわかったよ。そんなリリアさんと依頼を共にできて、俺達はとても運が良かったようだ。俺もあの人に負けないような立派な冒険者になる!」
ロイヤもファルもリリアにだいぶ感銘を受けているようだ。そんな人に出会えたのはファルの言う通り、俺達はだいぶ運が良かったのだろう。
「俺もいろいろとお世話になったし、なんらかの形で恩を返せるといいな。そういえば王都ってこの街から遠いの?」
よく考えたら、俺はこの街のこと以外よく知らない。他の街についても少しくらいは知っておいたほうがいいかもしれない。
「王都はこの街から馬車で1週間以上はかかるぞ。それに物価がこことは比べ物にならないくらい高い。基本的に俺達冒険者はこの街で経験を積んでお金を稼いで、隣の街へ拠点を移す。そして同じようにその街で経験を積んでお金を稼いでを繰り返して王都を目指していくんだ」
なるほど、この国の冒険者達は、少しずつ強くなってお金を貯めてから、次の街を目指していくらしい。
「まあ俺達にはまだ先の話だけどな」
「そうだな、俺達はまだしばらくはこの街にいる。当分の間はよろしく頼むな」
「……ああ、こちらこそ!」
そう、俺はしばらく、もしかしたらずっとこの始まりの街でアウトドアショップを続けるつもりだ。しかし、ロイヤ達はこの街で一人前の冒険者になったら、拠点を別の街に移してしまう。まだまだ先であると分かっているが、少しだけ寂しい自分がいる。
「だいぶ、長居をしてしまったな。ロイヤ、あまり話していてはテツヤ達の邪魔になる。それに早くあいつをなんとかしよう……」
「ハァハァ……フィアちゃん、そのフサフサした尻尾をお姉ちゃんに触らせてくれないかな……」
「はうう……テツヤお兄ちゃん……」
「……そうだな、ニコレが憲兵に捕まる前に連れて行ってくれ」
ロイヤとファルと真面目な話をしている間に、ニコレは何をしようとしているんだよ……
「すまん……よっぽどフィアちゃんを気に入ったみたいだな。普段はここまで酷くないんだよ」
……おかしいな、普段はちょっと抜けているロイヤを冷静なニコレとファルが嗜めるみたいな関係だと思っていたのに。ニコレは若い割に落ち着いていて、面倒見の良い女の子だと思っていたんだが、考えを改めないといけないかもしれん。
「じゃあな、テツヤ。また顔を出すよ」
「新しい店頑張ってな。邪魔をした」
「ああ、今日は来てくれてありがとうな」
「フィアちゃん〜お姉ちゃんは絶対にまた会いに来るからね〜!」
「「………………」」
ニコレはロイヤとファルに両腕を引きずられて強制的に連行されていった。