「さすがにお腹いっぱいですわ……」

「もう食べられない……」

「ああ、私も朝からお腹いっぱい食べてしまったな」

「………………」

 食卓の上には空っぽになった器とお皿が重なっていた。

 せっかくなので、アウトドアショップの能力がレベルアップして購入できるようになったレトルトシリーズを用意して、牛丼や親子丼、中華丼、麻婆丼の全種類を食べてもらった。

 ……のはずなんだが、リリアも含めて3人でかなりの量を食べた上に、デザートの餅や冷やしたゼリー飲料まで、それはもう堪能してくれたみたいだ。

 リリアやベルナさんはまだ分かるのだが、小柄なフェリーさんがあれだけの量を食べるんだからすごいよな……

「満足してくれたみたいでよかったですよ。今回新しく出た商品はどうですか?」

「ええ、どれもとても美味しかったです! 私は特にこの赤くて少し辛い料理が好きでした。これだけだと辛いのですが、こちらの白くて柔らかいものと白いご飯にあわせると初めて食べる味で、本当に美味しかったです」

「なるほど。こっちの白いのは俺の故郷の豆を使ってできた豆腐といいます」

 どうやらベルナさんは麻婆丼が一番気に入ったみたいだな。確かランジェさんもレトルトの中では麻婆丼が一番好きだと言っていたな。やはりこちらの世界ではこういった豆板醤のような辛い調味料や香辛料がないから珍しい味なのだろう。

「私はこっちのが一番好きだった。お肉がとても柔らかくて、特にこのタレが甘辛くておいしい!」

「確かに牛丼はこのタレがおいしいですよね」

 フェリーさんは牛丼が一番気に入ってくれたみたいだ。確かにレトルトの牛丼の肉はそれほどいい肉ではないが、あの牛丼のタレがうまいよなあ。以前に王都へ行った時に醤油や味噌なんかの新しい調味料を手に入れたことだし、今度はこのタレも自作してみようかな。

「新しいお餅とゼリー飲料はどうですか?」

「ええ、どれも本当においしかったですわ! こっちのは冷たくて甘くてプルプルとしていて初めての経験でした!」

「こっちのお餅というのもモチモチとしておいしかった。どっちも食感が違っていておいしい!」

 ふむふむ。お餅とゼリー飲料もおいしく食べられそうか。まあゼリー飲料は冷やして飲まないとそれほどおいしくないからな。

 今回お餅のほうはバータイプのものと水を加えて柔らかくなるタイプの両方を出したが、どちらも気に入ってもらえたようだ。どちらも餅だが、確かに食感が違って味を楽しめるもんな。

「でもやっぱりようかんとチョコレートバーの方が好き……」

「そうですわね。どちらかというと私もそちらの方が好きかもしれません……」

「……なるほど、参考になりました。少しだけですが食べますか?」

「もちろん!」

「はい、ありがとうございます!」

 あれだけ食べたのにまだ食べられるのか……

 一応ようかんとチョコレートバーは毎回ベルナさんとフェリーさんに渡しているのだが、あれは特に太ってしまう食べ物なので、個数を制限して渡しているからな。

 この様子だと、渡した分のようかんとチョコレートバーはかなり早めに食べきってしまったのだろう。



「ふ~満足……」

「ええ、私もお腹がいっぱいですわ……」

「2人ともよく食べたな」

 ……それを言うならリリアもベルナさんとフェリーさんと同じくらいの量を食べているんだけどね。

「気に入ってくれたようで良かったです。これらのレトルト食品は例の保存パックに入れてまた渡しておきますね」

「テツヤ、ありがとう!」

「テツヤさん、ありがとうございます! そうでした、私たちからもお土産があるので、またぜひ皆さんで食べてくださいね」

「ありがとうございます」

 どうやらベルナさんとフェリーさんからもお土産があるそうだ。

 ……前回はベヒーモスの肉とかいうとんでもない肉をお土産でもらったからな。今回はどんな肉なのかちょっと知るのが怖い気もする。

「今回はアースドラゴンの肉となります。それと王都の冒険者ギルドマスターから以前にお渡ししたレッドバジリスクの肉も預かってきておりますわ」

「ありがとうございます。うわ、今回は量が凄いですね」

 フェリーさんが収納魔法から出してくれた肉は皿には収まりきらず、テーブル一杯に広がるくらいの肉の塊だった。

 それとは別に王都の冒険者ギルドマスターであるルハイルさんから、以前王都へ行った時にお土産でもらったレッドバジリスクの肉もある。

「ア、アースドラゴンの肉か……倒すのが大変だったのではないか?」

「そこそこ強かった」

「ええ、さすがに多少苦労はしましたわ」

「………………」

 Aランク冒険者たるベルナさんとフェリーさんが苦労した時点できっととんでもない魔物なんだろうなあ……

 というかドラゴンというだけで、この世界の魔物に詳しくない俺でもとんでもない魔物であることは分かる。

 ……うん、今更ながらその辺りはもう気にしないことにした。せっかくのお土産だし、おいしくいただくとしよう。