「ベルナ、フェリー。王都までの護衛の任務ご苦労だったな」
「いえ、普通の護衛依頼よりも楽しい依頼でしたわ」
「おいしい護衛だった」
「………………」
ご飯の意味かな? まあそう思ってくれたのなら何よりだ。
「リリアも元気そうで何よりだぞ。まさか冒険者を引退したリリアが噂の店で働いているとはな」
「ギルドマスターも相変わらず元気そうですね」
リリアはルハイルさんとも旧知の仲らしい。
「まずは先日のダンジョン攻略に協力してくれてありがとう。テツヤくんの提供してくれたこの魔道具のおかげで、王都近くにできた高難易度ダンジョンを迅速に攻略することができた。本当に感謝している」
机の上に置いてある方位磁石を指でいじりながら感謝の言葉を口にするルハイルさん。
机の上に目線を落とすと、見なくてもいいルハイルさんの巨大な胸まで目に入ってしまい、慌てて目線を上に戻した。
「ダンジョンのボスを倒して実際にダンジョンを攻略したのはベルナさんとフェリーさんだと聞いていますから、私の手柄ではありませんよ。とはいえ、少しでも当店の商品が攻略の役に立って良かったです」
「確かにダンジョンを実際に攻略したのはベルナとフェリーを含む冒険者たちだが、それでもテツヤくんが提供してくれた道具によって攻略が予想よりもずっと早く進んでくれ、時間や被害、攻略にかかる費用が大幅に削減されたのも事実だ。それにこの2人がなぜかいつも以上にやる気を出していたとも聞いているよ」
……そういえばベルナさんとフェリーさんに渡した食料やお菓子のおかげで、2人がものすごくやる気になったと言っていたな。
「こちらこそ商品の料金以外にも報酬をいただいて感謝しております。それに私だけではなく従業員を含めて、ここまでの旅費を出してくれてありがとうございます」
「なあに、テツヤくんが今回貢献してくれたことに比べれば大したことないさ。なにせ今回現れたダンジョンは王都から近すぎてね……その割にダンジョンで発生する魔物の素材には大きな旨みがなく、そのくせそれぞれの階層が広くて魔物を間引くだけで一苦労だった。早々に片付けたい案件だったから本当に助かったよ」
なるほど、どうやらこの王都の近くに現れたダンジョンは本当に面倒なダンジョンだったらしいな。
「それにテツヤくんの店の噂は今回協力を要請する前からこの王都にも届いていたよ。始まりの街であるアラフレアの街で、他では見たことがない便利な道具を非常に安く販売してくれる冒険者のための店とね」
「それはとても光栄ですね。私はあの街の冒険者に命を助けられたので、少しでもその恩を返せればと思い、あの店を始めましたから」
「そうなると我々もテツヤくんを助けたというその冒険者には感謝しなければならないな。そしてそんな商品を王都にまで卸してくれるというのだから、こちらもそれ相応の歓迎はさせてもらうさ。それにしてもこの方位磁石というものは本当に不思議な魔道具だ。どういう仕組みであのダンジョン内の一定の方向を指し示すのか不思議でしょうがないよ」
そう言いながら方位磁石を振るったり、宙に掲げたりしながら不思議そうにそれを眺めるルハイルさん。
……その動作の度にルハイルさんの大きな胸が揺れるので、それを意識しないように努めるのが地味に辛い。男の視線というものは、女性の大きな胸の引力の前には自然と吸い込まれてしまうものなのである。
「そうですね。よろしければ方位磁石の作成方法をお教えしましょうか?」
「……っんな!? テツヤくん、それは本気なのか!」
「はい。もちろん無償でとはいきませんし、うちの店では特殊な作り方をしているので、他で作れるかの保証はできませんけれどね」
元の世界のうろ覚えの知識だが、確か昔の羅針盤などに使われていた磁石は何らかの鉱物に落雷が落ちたり地磁気を浴び続けることによって、自然と磁力を持ったものを使用していたはずだ。さすがに何の鉱物なのかまでは覚えていない。もう少し科学の授業を真面目に受けておけばと少し後悔している。
ちなみに方位磁石の作り方を教えるということは事前にみんなとも相談してある。……決してルハイルさんの大きな胸に屈したというわけではないから、勘違いしないように!
「今回のダンジョン攻略で方位磁石がダンジョン内でも使用できるとわかりましたので、今後の需要はさらに増えるでしょう。となるとひとつの商店が方位磁石を扱うといろいろと問題が出てくると思います。その前に冒険者ギルドへ作り方を教えたほうがいいと思いましてね」
ダンジョン内でも使えるとなると、今まで以上にちょっかいを出してくるやつらが現れて、アレフレアの街の冒険者ギルドでは対応できなくなってしまうかもしれない。それならその前にもっと大きくて権力を持っていそうな王都の冒険者ギルドにその製法を譲渡しようと考えたわけだ。
アウトドアショップも初めて店を開いた時よりもだいぶ大きくなって、今では王都や他の街に商品を卸すほどになっている。
店を開いた時方位磁石は店の人気商品としてお客さんを大勢集めてくれたが、アウトドアショップの能力のレベルも上がって、今では他にも魅力的な商品がたくさんある。もう、うちの店で独占して販売する必要もないだろう。
もっとも磁力を持たせられる鉱石がこの世界にあるのかは分からないが、この世界には魔法があることだし、雷魔法によって人工的に磁石を作ることができる可能性も十分にある。
それと合わせて、この方位磁石に対し王都の冒険者ギルドマスターのルハイルさんがどう対応するのかを見て、もっとヤバそうな地図と図鑑についてを話すかどうかを決める予定だ。
「いえ、普通の護衛依頼よりも楽しい依頼でしたわ」
「おいしい護衛だった」
「………………」
ご飯の意味かな? まあそう思ってくれたのなら何よりだ。
「リリアも元気そうで何よりだぞ。まさか冒険者を引退したリリアが噂の店で働いているとはな」
「ギルドマスターも相変わらず元気そうですね」
リリアはルハイルさんとも旧知の仲らしい。
「まずは先日のダンジョン攻略に協力してくれてありがとう。テツヤくんの提供してくれたこの魔道具のおかげで、王都近くにできた高難易度ダンジョンを迅速に攻略することができた。本当に感謝している」
机の上に置いてある方位磁石を指でいじりながら感謝の言葉を口にするルハイルさん。
机の上に目線を落とすと、見なくてもいいルハイルさんの巨大な胸まで目に入ってしまい、慌てて目線を上に戻した。
「ダンジョンのボスを倒して実際にダンジョンを攻略したのはベルナさんとフェリーさんだと聞いていますから、私の手柄ではありませんよ。とはいえ、少しでも当店の商品が攻略の役に立って良かったです」
「確かにダンジョンを実際に攻略したのはベルナとフェリーを含む冒険者たちだが、それでもテツヤくんが提供してくれた道具によって攻略が予想よりもずっと早く進んでくれ、時間や被害、攻略にかかる費用が大幅に削減されたのも事実だ。それにこの2人がなぜかいつも以上にやる気を出していたとも聞いているよ」
……そういえばベルナさんとフェリーさんに渡した食料やお菓子のおかげで、2人がものすごくやる気になったと言っていたな。
「こちらこそ商品の料金以外にも報酬をいただいて感謝しております。それに私だけではなく従業員を含めて、ここまでの旅費を出してくれてありがとうございます」
「なあに、テツヤくんが今回貢献してくれたことに比べれば大したことないさ。なにせ今回現れたダンジョンは王都から近すぎてね……その割にダンジョンで発生する魔物の素材には大きな旨みがなく、そのくせそれぞれの階層が広くて魔物を間引くだけで一苦労だった。早々に片付けたい案件だったから本当に助かったよ」
なるほど、どうやらこの王都の近くに現れたダンジョンは本当に面倒なダンジョンだったらしいな。
「それにテツヤくんの店の噂は今回協力を要請する前からこの王都にも届いていたよ。始まりの街であるアラフレアの街で、他では見たことがない便利な道具を非常に安く販売してくれる冒険者のための店とね」
「それはとても光栄ですね。私はあの街の冒険者に命を助けられたので、少しでもその恩を返せればと思い、あの店を始めましたから」
「そうなると我々もテツヤくんを助けたというその冒険者には感謝しなければならないな。そしてそんな商品を王都にまで卸してくれるというのだから、こちらもそれ相応の歓迎はさせてもらうさ。それにしてもこの方位磁石というものは本当に不思議な魔道具だ。どういう仕組みであのダンジョン内の一定の方向を指し示すのか不思議でしょうがないよ」
そう言いながら方位磁石を振るったり、宙に掲げたりしながら不思議そうにそれを眺めるルハイルさん。
……その動作の度にルハイルさんの大きな胸が揺れるので、それを意識しないように努めるのが地味に辛い。男の視線というものは、女性の大きな胸の引力の前には自然と吸い込まれてしまうものなのである。
「そうですね。よろしければ方位磁石の作成方法をお教えしましょうか?」
「……っんな!? テツヤくん、それは本気なのか!」
「はい。もちろん無償でとはいきませんし、うちの店では特殊な作り方をしているので、他で作れるかの保証はできませんけれどね」
元の世界のうろ覚えの知識だが、確か昔の羅針盤などに使われていた磁石は何らかの鉱物に落雷が落ちたり地磁気を浴び続けることによって、自然と磁力を持ったものを使用していたはずだ。さすがに何の鉱物なのかまでは覚えていない。もう少し科学の授業を真面目に受けておけばと少し後悔している。
ちなみに方位磁石の作り方を教えるということは事前にみんなとも相談してある。……決してルハイルさんの大きな胸に屈したというわけではないから、勘違いしないように!
「今回のダンジョン攻略で方位磁石がダンジョン内でも使用できるとわかりましたので、今後の需要はさらに増えるでしょう。となるとひとつの商店が方位磁石を扱うといろいろと問題が出てくると思います。その前に冒険者ギルドへ作り方を教えたほうがいいと思いましてね」
ダンジョン内でも使えるとなると、今まで以上にちょっかいを出してくるやつらが現れて、アレフレアの街の冒険者ギルドでは対応できなくなってしまうかもしれない。それならその前にもっと大きくて権力を持っていそうな王都の冒険者ギルドにその製法を譲渡しようと考えたわけだ。
アウトドアショップも初めて店を開いた時よりもだいぶ大きくなって、今では王都や他の街に商品を卸すほどになっている。
店を開いた時方位磁石は店の人気商品としてお客さんを大勢集めてくれたが、アウトドアショップの能力のレベルも上がって、今では他にも魅力的な商品がたくさんある。もう、うちの店で独占して販売する必要もないだろう。
もっとも磁力を持たせられる鉱石がこの世界にあるのかは分からないが、この世界には魔法があることだし、雷魔法によって人工的に磁石を作ることができる可能性も十分にある。
それと合わせて、この方位磁石に対し王都の冒険者ギルドマスターのルハイルさんがどう対応するのかを見て、もっとヤバそうな地図と図鑑についてを話すかどうかを決める予定だ。